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020 山に入る?ならば準備は念入りに

本日ラストの投稿です。(3/3)

この3話投稿のペースも明日までとなりそうです。


◆ファート


ゲーム内時間で2日と少し、現実時間で4時間を費やしてアルマはファートと王都間を往復した。

その疲労は「いったんログアウトしようかな」と考える程の徒労感を孕んでいたが、アルマは頭を振ってその考えを追い出す。


ファートの東門から町の中に入り中央広場に向かって歩いていく。

歩きながらアルマはこれからのことを考えていた。

ガルドとてるるから依頼された錫鉱石と銅鉱石、そして大猿の大毛皮を手に入れるために必要なのは何なのか。

その障害となるのは何なのか。

未だに低いレベルとレプラコーンという戦闘に向かない種族であることを考えて、十分に準備しないと依頼を達成するのは困難であると結論付けるとまず初めに取り掛かるべきこともおのずと答えが出てきた。


(ランフランク山に行く前にいくつか薬を補充していこう。)


そう考えるとまずは生産に必要な道具をそろえるために中央広場の雑貨屋に向かった。


「いらっしゃいませ。」


雑貨屋では依然と同じ店員さんが温和な表情を浮かべて出迎えてくれた。

アルマもつられてにこやかな笑顔を浮かべながら口を開いた。


「こんにちは。実は………。」


アルマが必要なものを伝えると店員はきれいに整頓された店内からそれらを集めて持ってきてくれた。

アルマはそれらを確認すると代金を支払い店を後にした。


次に向かったのはガルド達が話していた生産者組合である。

そこは雑貨屋や冒険者組合と同じようにファートの中央広場に面して入口が設けられていた。

冒険者組合と同じように木製の建物の入り口には「ファート生産者組合」と書かれた看板が取り付けられており、そこが目的の組合であることを示していた。


入口をくぐると中は冒険者組合と比較してこじんまりとしたロビーとなっていた。

ロビーにはカウンターが備え付けられており、カウンターの向こうでは年若い女性が1人働いていた。

ロビーにはアルマ以外には人がおらず、そんなアルマの来訪を奥で作業している女性は気が付いていないようであった。

アルマは特に迷いなくそのカウンター越しに女性に声をかけた。


「すみません。」


「は、はい。」


女性は少し驚いたような雰囲気を出しながらも作業を中断するとカウンターに近寄った。

カウンター越しに対面する形で腰を落とすと、女性はアルマに向けて笑顔で口を開いた。


「はい、どうしましたか?」


「生産室を使用したいんですが………。」


アルマは歯切れ悪く用件を口にした。


「はい、生産室ですね。ご利用は初めてですか?」


アルマの歯切れの悪さから何かを察したのか女性はアルマが言いたかったことを代弁するようにそう口にした。


「はい。初めてです。」


「では、まずは登録をお願いします。」


そう言うと女性は冒険者組合でも見た水晶のついた箱を奥から取り出してきた。


「こちらに手をかざしてください。」


「あ、あの?冒険者組合で登録しているんですが2重に登録してもいいんですか?」


アルマは冒険者組合と全く同じ登録の仕方に思うところがあったのかそう疑問を口にしていた。


「あ、冒険者登録をしているんですね。でしたら識別章を出していただけますが?」


「は、はい。」


アルマの言葉を聞いて女性は水晶をしまうとそう口にした。

言われるままアルマはインベントリから識別章を取り出し女性に渡す。


「はい、アルマ様ですね。大丈夫です。識別章お返ししますね。」


女性は手元で何か作業をすると識別章をアルマに返した。

アルマは受け取った識別章をインベントリにしまい、女性の次の言葉を待つ。


「生産室のご利用ですが、2時間あたり500ギルかかります。また『鍛冶』をする際の薪などの消耗品は別料金となります。よろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫です。」


「では利用目的と利用時間、それと必要な消耗品についてお聞かせください。」


「利用目的は『調薬』で利用時間は6時間でお願いします。消耗品は手持ちがあるので今回は利用しません。」


アルマがそう言うと女性は手元の資料を確認した。


「えっと、6時間ですね………。はい、大丈夫です。料金は1500ギルとなります。」


「はい。」


女性の言葉に返答するとアルマはインベントリから1500ギルを取り出して、カウンターの上に置いた。

女性はそのお金を受け取ると中身を確認し、改めてアルマに向き直って口を開いた。


「はい、確認しました。では、2階201号室を使用してください。階段はこちらの通路を行った先にあります。部屋の番号は扉に取り付けられたプレートで確認してください。」


そう口にすると手で通路の方向を指してそちらに行くように誘導した。

アルマは「ありがとうございます。」と1礼するとそちらに向けて歩き出した。


--


―ガチャリ


扉の「201」というプレートを確認しながら扉を開けるとそこにはこじんまりとした部屋があった。

部屋の中央には大きな机と机の上には明かり用のランタンが、部屋の端には水薬を煮詰める用に大きな鍋が備え付けられていた。

入口正面の窓から差し込む日差しは強く、部屋の狭さに比べて明るい印象を受けた。


部屋に入り扉を閉めたアルマがまず初めにとりかかったのはインベントリに放り込まれた薬草の類を整理することだった。

『鑑定』で薬草の名前は確認していたが、どの薬草がどういった薬効を持っているかまでは確認していなかった。

だからこそ、1つ1つの詳細説明を注意深く確認し、時には「初級調薬レシピ」と照らし合わせながらそれらの薬草を確認していった。


やはりというべきか薬草の中で多かったのはラコフ草そしてチアニ草であった。

グルナラが基礎として教えたHPローポーションと第1種キュアポーションの材料ともあって、その薬草は多く手に入るようだ。

次いで多かったのは毒薬の材料となるザルゾ草と強い刺激を与えると炸裂するベラスベリーである。

これらの薬草は所謂、運営の罠であるようだ。

『鑑定』を使用せずに似た薬草や食材と間違えて使用すると大変な目にあう。

そんな効能を持っていた。


(せっかく色々な薬草が数多くあるのだから色々実験してみようかな………。)


薬草を整理していたアルマはそう思い至った。

グルナラに教わった薬以外にも「初級調薬レシピ」に載っている薬の材料や逆にレシピに載っていない薬草もあった。

だからこそ、試しに色々混ぜ合わせてみようという考えに至った。


(えっと………、調薬の工程は、薬草を乾燥、粉末化、そしてそれを煮詰める。他に俺ができるのは『錬金』で直接薬効を抽出すること。基本は薬草が持つ薬効を取り出して水薬にすること?水薬である必要はあるのか?)


そんなことを考えながら、アルマは慣れた手つきで数々の薬草から溶液を作り出していった。

基本に忠実に時には溶液を一度ろ過したり、時には『錬金』を使って薬効を引き出したり、時には溶液同士を混ぜたりしていくつかの溶液………水薬を作成していった。

その内容を雑貨屋で購入したレシピブックに記載していった。


以前にも作ったHPローポーションや第1種キュアポーション、ザルゾ草を使った毒薬以外にもMPローポーションなども作り上げた。

中には全く役に立たないたたない薬や効果が低減してしまったものもあったがアルマはその成果に達成感を感じていた。

その達成感を感じながら成果をレシピブックに書き込んでいくとすぐに生産室使用の6時間がたってしまった。

アルマは急ぎ机の上に広げていた『調薬』道具をしまうと、充実感とともに生産者組合を後にした。


--



生産者組合を出たアルマが次に向かったのは冒険者組合である。

特別用事は無かったがランフランク山、そしてその麓の森に行くから何か依頼でもないかと考えてアルマは冒険者組合に立ち寄った。


「ふざけるな!!」


冒険者組合の扉を開けると中から大声が聞こえてきた。

アルマは怪訝に思いながら中の様子を伺うと、どうやら1人の冒険者がすごい剣幕で組合の受付嬢に詰め寄っていた。

その様子は今にも掴みかからんとしているように見えた。


怒りをあらわにしている冒険者は短い赤髪の剣士風のヒューマンの男性であった。

そのすぐ近くには彼と同じパーティなのであろう黒いローブを着て杖を持った魔術師風の金髪のエルフの女性と大きな盾を背負い腰には剣を佩いた所謂タンクのヒューマンの黒髪の男性、そして首から聖印を下げて白いローブを着た青髪のヒューマンの女性がいた。


「こっちはレベル7だぞ!!攻略組でもトップのプレイヤーだぞ!!それが何でそんなことを言われなければいけない!?」


赤髪の彼の言葉は入り口近くのアルマの耳にも届いた。

どうやらその言葉から彼らはプレイヤー、………異邦人であるようだ。

彼のパーティメンバーたちも赤髪の彼の言い分が正しいと思っているのか顔は堂々としており、彼の横暴を止めようとはしなかった。


そのあまりにもな光景に見ていられなくなりアルマはその言い争いに分け入り、両者の間に立った。


「ちょっと落ち着け。」


赤髪の顔を見据えながらアルマはそう言った。

しかし、悲しいかなレプラコーンの身長では赤髪の彼の視界に映らなかった。


「ん?なんだおまえは?」


それでも声をかけたことで効果があったのだろう。

赤髪の彼の目は受付嬢ではなくアルマを見た。


「少し白熱しすぎだ。議論をするのはいいが落ち着いてやれ。」


堂々とそう口にするアルマの姿を確認して赤髪の彼はさらにヒートアップした。


「初心者が出しゃばってんじゃねえ!すっこんでろ!!」


「馬鹿に諭すのに初心者かどうかは関係ないだろう。そこのおまえたち。こいつのパーティだろう。パーティメンバーなら仲間が馬鹿やっているときは率先して止めてやれ。」


前半は赤髪の彼に後半は彼のパーティメンバーに対して言い放った。


「な!?馬鹿だと!?この俺様に向かって馬鹿だと!?」


赤髪の彼がそう言いながらアルマに凄むもアルマは無言をもってそれを肯定した。

そんなことをしていると彼のパーティメンバーの魔術師の女性が呆れたように口を開いた。


「そいつが馬鹿なのは同感だけど。でも、そいつの言い分は間違っていないわ。少なくとも私たちはそう思っているから止めていないの。」


そんな魔術師の女性の言い分に頭を痛くしながらアルマは答えた。


「言い分の正しいか正しくないかは問題じゃない。その伝え方が問題なんだ。強がって恐喝まがいな伝え方をしているのが馬鹿だと言っているんだ。」


そう言いながら魔術師の女性に向き直るアルマの表情は暗に「おまえも馬鹿か?」と問いかけているようであった。

その様子に気を悪くしたのか魔術師の女性は眉をひそめながらも反論できないのか目を反らした。


「伝え方なんてなんだって同じだろ!いいから俺らはこの依頼を受けるぞ!!ディエゴ様が率いるパーティがこの程度の依頼をこなせないわけないだろ!!」


赤髪の彼はアルマのそんな言葉を無視して再び受付嬢に詰め寄った。

そんな彼の言葉に受付嬢はやれやれといった表情をしながら落ち着いた声で応答していた。


「ですから何度も申し上げている通り皆さまはランクGの冒険者となります。ぷれいやーというのが何を指しているのかは存じ上げませんが、我々冒険者組合では新人として扱わせていただきます。そのうえであくまで注意させていただいております。」


「注意、注意、注意ってオウムみたいに繰り返しやがって!!つまりそれは俺様達を侮っているっということだろう!?俺様が弱いと馬鹿にしているんだろう!?」


「そうは言っていません。冒険者組合の規則として苦言を申し上げているにすぎません。そこに他意はありません。」


この赤髪の彼と受付嬢の言い分を聞いてアルマは何が問題となっているかおおよその想像がついた。

なんてことはないこの剣士………ディエゴは今まで冒険者の依頼を怠っていたため冒険者のランクが低いのだろう。

そこで高いランクの依頼を受けようとして注意を受けたのだろう。


(でも、それなら………。)


アルマは事を収める方法に心当たりがあり、もう1度話に割り込もうと口を開いた。


「受付さん。確か冒険者組合の依頼ランクはあくまで目安だったはず。それなら注意のみで受けることはできますよね?」


アルマのその言葉に受付嬢は驚きながらもすぐに答えてくれた。


「はい。今回の場合もあくまで注意しているだけです。それをこちらの方が騒ぎ立てて、ことを大きくしているにすぎません。」


「な!?俺様のせいだというのか!?受けられるんなら黙って受けさせればいいんだよ!!」


呆れるように赤髪の男に向き直りそう口にした受付嬢に赤髪の男も事態を把握したのだろう。

しきりに「俺は悪くない。」と喚き散らした。


「だから、おまえの態度が悪いと言っているんだ。最初から落ち着いて話していればことはすんなり言ったのに態々声を荒げて喚き散らすからこんなことになるんだ。」


アルマはそう言うと赤髪の男に向き直り、改めて男の悪い部分を指摘する。


「黙って受けさせろと言うがな、冒険者組合としては適正ランク外の依頼には注意をするという取り決めがある。だからこそ今回おまえたちは注意を受けたのだ。組合という組織を利用する以上はその組織のルールに従え。」


アルマがそう言うと赤髪の男はぐうの音も出ないといった態度を示した。

彼のパーティメンバーたちも自分たちが悪いのが分かったのだろう。

皆一応に気まずそうに目を反らした。


「う、うっさいな!雑魚がでしゃばってんじゃねえ!!」


それでも何かを言い返さないことには腹の虫が収まらなかったのだろう、赤髪の男はアルマに向かってそう叫んできた。

アルマはそんな赤髪の男の言葉を無視し、受付嬢が淡々と依頼受注の手続きをしているのを確認すると、自分も依頼を物色するためにそこを離れて掲示板へと近づいた。


「おい!!なにか言ったらどうだ!?」


赤髪の男がまだ叫んでいるがアルマは冷静にそれらすべてに無視を決め込んだ。


アルマが仲裁に入ったあたりから厳しくなってきた周りの目に彼のパーティメンバーは旗色が悪いと感じたのであろう。

赤髪の彼はパーティメンバーたちに引きずられるようにして冒険者組合から出ていった。


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[一言] アルマ主体性無さすぎ。流され過ぎやろ
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