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013 リベンジマッチは焼き鳥の後で

本日投稿2話目です。(2/3)


◆ファート 中央広場


水分補給やトイレなどを済ませ、1時間ほどの休憩を挟んで本日2回目のログイン。

初めに目に入ったのはログアウトした時の中央広場の光景であった。


日が差し、明るい広場は最初に見たときと同じ活気に満ちていた。

アルマは自分のステータスを開き「デスペナルティ」が外れていることを確認した。


(よし、リベンジマッチだ!)


―………ぐぅ


猿との再戦に気持ちを高ぶらせるも体は空腹を訴えた。

視界の端に表示された満腹度が減少しており、危険域を知らせていた。


(その前に何か食べるか。)


そう思うと広場に並んだ屋台に目をやった。

色とりどりの屋台からはお腹を空かせるいい匂いが漂ってきており、それが余計に空腹を意識させる。


(一応、初期アイテムの「携帯食料」が残ってるけど、せっかくだし屋台の料理を食べたいな。)


そんなこんなでぐるりと屋台を見回していると1つの屋台に目が留まった。

それはこちらの世界で昨日、話をしたおじさんが営んでいる焼き鳥屋の屋台で会った。

これも何かの縁と思い、アルマはその屋台に近づいた。


「おじさん。」


「ん?あぁ、昨日の坊主じゃないか。どうした?」


アルマが声をかけるとおじさんは愛想のいい笑いを浮かべながらそう聞き返してきた。

手元では串に刺した焼き鳥を炭火で焼いていた。

炭火であぶられる肉、そしてその肉につけられたタレの香りが空腹のアルマに襲いかかった。


「焼き鳥を買いに来ました。ほら、次来たときは買ってくれって言っていたじゃないですか。」


「おぉ、それはうれしいね。覚えていてくれたのか。いくつ食べる?」


「そうですね………。じゃあ、3つください。」


「おう、ちょっと待ってな。焼きたてを食べさせてやる。」


そう言うとおじさんは手元の作業に集中した。

ぱちぱちと油がはじける音だけが2人の間を包んだ


「ほれ、完成だ。300ギルな。」


そう言いながらおじさんは紙袋に包まれた焼き鳥3本をアルマに差し出した。

アルマはお金を支払い、その袋を受け取る。


「ありがとうございます。」


「まいど。」


そう言葉を交わすとアルマは焼き鳥を片手にその場を離れた。

広場に備え付けられたベンチに腰を落としながら早速1本目に齧り付く。


口の中が火傷しそうな熱々の焼き鳥を躊躇いなく頬張る。

炭火で焼かれた鶏肉のこうばしい香りが口の中に広がる。

噛み応えのある鶏肉は咀嚼するたびに中から肉汁をあふれ出し、甘辛いタレと相まって幸せな気持ちがあふれ出してくる。

時々くるビリリとした辛さはタレに香辛料を使っているからか、その辛みがまたアクセントとなって食べ進める手が止まらなくなる。


焼き鳥3本すべてを食べきったアルマはその満足感に顔が綻ぶのを抑えられなかった。

視界の端に表示された満腹度も満タンを示していた。


(はぁ、お腹いっぱい。)


アルマはしばらくその場で幸福感に浸っていた。

10分ほどが経ち、ひとしきり余韻を楽しんだアルマは意を決して猿へのリベンジのために北の森へ向かった。


--


―ガサ、ガサ


森の中を何かが動く音が聞こえた。


(す、すごい。)


その音を聞きながらアルマは今感動に胸を震わせていた。


アルマにとって2回目となるファート北の森。

うっそうと生い茂る木々はその森が昨日と何ら変わりなくあることを示しているかのようであった。

変わらない森の中にあってアルマにとっては1回目と大きく違うことがあった。

アルマは周囲の状況をよく聞き取ることができ、足元に生い茂る草木の多くは素材として目に映った。


(そっか、『探索』スキルがレベルアップしたから周囲の情報をより多く取得できるようになったのか。)


スキルのレベルアップとそのレベルアップによる違いに感動しながらアルマは足元にぽつりぽつりと生えていた薬草を採取していた。

ガサガサと何かが動く音も今は遠くにあり警戒するほどではなかった。

その様を見て緊張感がないと称することもできるだろうが、アルマにとってはどうでもいいことであった。

ただ、今は目に映る数々の素材を取ることに夢中になっていた。


(これは見たことないな。なんか実がなっているけど食材かな?)

(こっちはチアニ草に似ているな。)


薬草を手にとってはインベントリにしまってを繰り返し、次第にアルマの足は森の奥へと向かっていく。

そんな時だった………。


―ガサ


ひときわ大きな音がすぐ近くから聞こえた。


(!!)


アルマはすぐさまナイフを抜き臨戦態勢をとる。

努めて音をたてないようにそろりそろりと木々の影から音の主を伺い見る。


(猿だ!!)


そこには2匹の猿が何やら木のみを拾っては口に入れてを繰り返していた。

どうやら食事中でアルマのことは気が付いていないようであった。


アルマは息を整え、インベントリの中から毒薬を2つ取り出した。

1つの蓋を開けると中身をナイフの刀身にかけた。

ぼたぼたと滴る水滴は見たうえでただ濡れているだけに見える。


空き瓶をインベントリに入れると、もう一方の毒薬を大きく振りかぶり猿めがけて投げた。


(よし!当たった!!)


1匹の猿の顔面にそれは命中した。

アルマは兎の時にそうしたようにすかさず間合いを詰めて攻撃する………ようなことはしなかった。


(相手は格上なんだ!)


そう自分に思い聞かせ、どしりとその場で構えていつでも猿の動きに対応できるようにする。

瓶をぶつけられた猿はその液体が嫌なのであろうしきりに自分の顔を拭うようなしぐさをしている。

もう1方の猿がキーキーとアルマに威嚇する。


威嚇していた猿が地を蹴ると同時ににらみ合いは終わりを迎えた。

猿がその全身を使ってアルマに飛びかかってきた。

アルマはその攻撃を後ろに半歩下がることで避けた。

猿が地面に着地したタイミングを見計らってナイフを振るう。

それは猿の顔を浅く切り裂いた。

すかさず半歩前進し返す刀で喉元を狙った。

顔を切り裂かれたことに驚いた猿はこれを避けることができず、喉元の柔らかい肉はナイフによって寸断された。


(現実なら致命傷………だが、ゲームならどうだ!!)


そんな杞憂もよそに猿は光となって消えた。

アルマはこの時知りもしなかったが現実的なMSOにおいては頸部切断は現実同様にほぼ即死となるダメージを生み出す。


(よし!次!!)


1匹目の猿が消滅したのを確認したアルマは振り返り先ほど毒薬の詰まった瓶を投げつけた猿の方に向き直った。


(あ!!)


その猿はふらふらと足元もおぼつかず、焦点の定まていない目でアルマを見据えていた。


(チャンス!!毒が効いているんだ!!)


そう思うとアルマは地面を強く蹴った。

ナイフを大きく振りかぶり、猿の脳天めがけて振り下ろした。


(っつ!………固い!!)


ガチという音とともに刃が頭蓋骨に阻まれる感触がした。

やはりレプラコーンの筋力では無理かと思い、すぐさま手首を柔らかくナイフを滑らせるように持ち直した。

猿の頭蓋骨を滑ったナイフはその顔を上から下に切り裂くように動いた。


(まだ!まだだ!!)


足をその場に固定し、何度も何度も猿の皮膚を切るようにナイフをふるい続けた。

もう一度とナイフを振りかぶったその瞬間、猿の瞳に強い光が宿った。

後ずさりそうになる体に活を入れナイフを振り下ろした。


「キ、キーーーー!!」


猿は甲高い断末魔とともに光となって虚空に散った。


「はぁ、はぁ。」


高ぶった気持ちと荒い息を整える。

震える手とその手に握られたナイフを見つめる。


(勝った?………勝った!!)


猿を倒したという実感は遅れてやってきた。

叫びだしたくなる気持ちを抑えながら、両腕を天高く上げる。


(やった、勝ったぞ!!よし!よし!!よし!!!!)


ひとしきり勝利の余韻に浸るとまた薬草を探そうとその場を離れようとした。

アルマが振り返ったその時。


―ガサ


また、近くで音がした。

先ほどの戦闘の疲れも取れていない、そんな状況にあってもアルマはすぐさまナイフを抜き腰を落とした。


―ガサ、ガサ


音の主は移動しているのが分かった。

緊張から背中に嫌な汗が流れているのを感じる。


―ガサ、ガサ


3度、音が聞こえた。

もうすぐ近くまで迫っている。


―ガサ


すぐ上で音が聞こえた。

アルマが音の方に向き直りナイフを構えると、アルマのすぐ近くの木から3匹の猿が今にも飛びかからんとしているのが見えた。


アルマは急いで距離を取った。

それとほぼ同時に3匹の猿はアルマめがけて飛びかかった。


(危なかった!あと数舜気づくのに遅れていたら………。)


そう思う気持ちが、緊張となって体を震わせるような気がした。

そんな思いもよそにアルマはインベントリから毒薬を取り出し、3匹の猿めがけて投げつけた。


正面から投げたものが当たるとは思ってもいなかったが運よく、アルマを見失ってた1匹が逃げ遅れその頭部に薬瓶は当り砕けた。

中に詰められた毒薬が猿に降りかかる。


残り2匹の猿は大きく避けた為、それに触れることは無かったがアルマからは距離が離れた。

距離が空いたことをいいことにアルマはもう1瓶の毒薬をインベントリから取り出し、左手でいつでも投げられるように準備した。


2匹の猿は互いに示し合わせたかのように同時にアルマに向かって走り出した。

むやみにナイフを振っても当たらないのは以前に猿に蹂躙されたときに学習している。

アルマはナイフを逆手に持ち直し、腰を落としてじっくりと猿の動きを観察した。


あと数歩で牙が届くという距離に着て2匹猿のうちアルマに近いほうの猿が腕を振り上げてアルマに飛びかかった。

アルマはそれを片足を軸にして横に回って回避する。

回る瞬間、猿と交差するタイミングでナイフを滑らせた。

振り下ろした猿の腕に薄く切れた跡が残る。


続いてもう1方の猿が牙をむき出しにしてアルマに飛びかかった。

アルマはそれを身を屈めるようにして避けた。


振り向きざまに先ほど傷をつけた猿が再びアルマに飛びかからんとしていることが目に入った。

アルマはそれを確認すると折った膝を大きく伸ばし、地面を強く蹴った。

ナイフの刃を突き出し傷つきの猿目掛けて突撃した。

アルマのそんな行動は予想外だったのか猿は避けることができずにその胴に大きくナイフが刺さる。


しかし、悲しきかなレプラコーンの筋力ではナイフの刃を内蔵に届けさせることはできなかった。

刺されたことに驚き、痛みからか「キー!」と大きく鳴いた猿はその元凶であるアルマめがけて大きく手を振り下ろした。

突撃したため姿勢が崩れていたアルマはそれを避けることができず、右肩に猿の爪が突き刺さった痛みが走る。

視界端のHPゲージも減少し、確かにアルマの体がダメージを負ったことを示した。


傷つきの猿は追撃を行おうともう一度腕を振り上げた。

このままタコ殴りにされてはたまらないとアルマは地面を転がってそれを回避した。


ぐるぐると転がり2匹の猿から距離を取る。

十分に距離が開いたところで地に足をつけて猿と対峙した。


傷つきの猿はダメージを追ってはいるもののまだまだ元気と様子でアルマに向かって威嚇し、もう1方の猿も牙をむき出しにしながらアルマを見据える。

さらに最初に毒薬を浴びせた猿もおぼつかない足取りでアルマに近づいてくるのが視界の端に留まった。


「ふぅーーーー。」


アルマは大きく息を吐き気合いを入れなおす。

左手に持った薬瓶の蓋を開け、再びナイフの刃にこぼす。

インベントリに空き瓶をしまい、ナイフを体の前、猿に向けて構えなおした。


「こいよ!猿公!!」


アルマの言いたいことが通じたのか、そう大きく声を上げると同時に3匹の猿はアルマめがけて駆け出してきた。


(まずは………毒で死にかけのやつ!!)


そう心の中で目標を定めると、先行する元気のよい2匹をいなしながら遅れてきた1匹と対峙する。

焦点のあっていない目は今にも死んでしまいそうな雰囲気を漂わせていた。

しかし、格上である以上油断はできないと猿の動きに注意しながらアルマはナイフを振り上げた。


案の定、毒に侵された猿はアルマとの距離を見誤ったのか見当違いのところに腕を振り下ろした。

そのすきを逃さず、猿の左肩めがけてナイフを振り下ろし、続けてその喉を切り裂いた。

その一撃をもって猿のHPは0となり、光となって消えた。


(あと2匹!!)


1匹を倒した達成感に浸る暇もなく、すぐさま残り2匹の方に向き直る。

片足を軸にして体を回転させたその瞬間、目の前に予想もしていなかった光景が飛び込んできた。


―ガン


驚き目を瞑った後に鈍い痛みが額を襲う。

目を開くと離れた場所で1匹の猿が腕を振り下ろした姿勢をしているのが見えた。

もう1方の猿は石を持ち上げ、振り下ろした。


事ここに至って何があったのか理解した。

あの猿どもは石を投擲してきたのだ。

猿の投げた石は大した勢いもないからか見えていさえすれば苦労せずに避けることができた。


(猿が物を投げてくるなら数の問題で距離を取るのは不利か?)


そう頭の中で結論付けると猿に詰め寄ろうと足に力を籠める。

その時である………。


―ガサガサ………ドン!!


そんな音とともに木々の合間からひときわ大きな猿が1匹飛び出してきた。

その猿は黒い毛並みに、丸太のような手足を持っているいわゆるゴリラのような見た目をしていた。


「ガーーー!!」


大猿が大きく吠えた。

まわりの2匹の猿はそれにビビッてしまったのかそそくさとその場から逃げてしまった。

大猿がこちらに向けてその双眸を向ける。

頬を流れる汗が雫となって落ちていくのを感じた。


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