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……そうだ、投資を始めよう!  作者: 大本営
投資を開始する前に、これだけは知っておこう
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投資と投機の誤解例

 前回は、投資と投機の違いについて軽く触れました。

 投資は中長期で投機は短期だよな、そんなこと何度も繰り返さなくてもいいよ! 

 と、思うかもしれません。


 では聞きますが、短期と中長期はどのくらいの期間と理解していますか?


 思考が停止された方は、失礼ながら前回の内容を流して読まれていましたね。あえて答えを書かなかったので、意地悪な質問に感じたかもしれません。


 ごめんなさい、でも必要な引っかけだったのです。


 経済において「短期」「中期」「長期」とはよく使われる単語になります。「――今回の事件は短期的な経済の影響はなく」と新聞やニュースでよく語られるので、聞いたことは在るのではないでしょうか。経済において常識的なので説明していないのですが、この単語が示す期間を正しく理解していないと、投資で大失敗することがあります。


 明確な基準はないらしいのですが、短期は一年以内、中期は一年を超えて3~5年、長期は5年以上ですが10、20年単位。大体このくらいを期間で、「短期」「中期」「長期」を区別しています。


 投資は中長期の運用を想定していますので、最低でも3年、長ければ20~30年は資金を引き出さない覚悟が必要です。

 3年程度使用しない資金で投資を始めましょう、みたいな説明文を、投資について語るコラムや紹介文でみかけます。あれは嘘をついてないけど、必ずしも真実を語っている訳ではありません。

 ()()3~5年程度使用しない資金と、最低を強調すべきでしょうね。


 ◇


「短期」と「中期長期」を理解しないまま投資を始めると、売買の時期を間違えてしまいます。人は誰しも損をしたくないですから、1万円で購入した商品が9500円になれば不安になるでしょう。


 500円くらいの損失なんて大したことない?

 そうではないです。

 1万円においての500円とは、5%の損失を意味します。


 10万なら5000円の損失。

 20万なら1万円の損失。

 300万ならば15万円の損失。


 損失額は投資額に応じて増加します。


 少し怖くなってきたでしょう?


 投資に慣れてくれば、この程度の上下は誤差の範囲と理解しています。数か月~1年後には1万円で購入した商品が、10500円に変化していることはざらなのです。


 東証一部株価が300円上昇したとこか、700円の大幅下落とかニュースや新聞でみたことあるしょう?

 あれです。


 1万円で購入した商品が10500円になれば、先ほどとは異なり利益が発生します。

 

 10万なら5000円の利益。

 20万なら1万円の利益。

 300万ならば15万円の利益。

 

 もっとも売却していないので、純粋な意味での利益ではないのですけどね。





 投資の初心者や「中期長期」の運用の意味を理解していないと、この変化に一喜一憂しがちです。

 開始数か月の変化だけで判断し、損失が出ている状態で売却して投資をやめてしまう。あるいは、少しの利益を出したところで売却する。


「私には投資なんて向いてない。ああ、騙された!」


 これは投資ではありません。

 投機です。

 前回も触れましたが、投機は賭博的要素が強いため、投資よりもリスクが高いでしょう。素人が挑戦して利益を出すのは難しい手法ですから、損失が発生したのはある意味必然です。この話題を口にしたとき、僕は1986年ごろにTVで放映されたホームドラマの一シーンを思い出します。


 ドラマでは財テクにはまっていえる主婦が、TV番組に出演している投資専門家に、運用について質問したシーンがありました。


「次に狙うべき商品はなんでしょうか?」

「……金だね」


 主婦は早速金を購入しましたが、数週間後も相場の下落が続したので、騙されたと騒ぎ出します。


 彼女は、本当に騙されたのでしょうか?


 そもそも勘違いしているのは、主婦が質問したのは投資の専門家であり、投機の専門家ではない点。

 3~30年先のスパンであれば、利益を得る可能性はありましたので、投資専門家はこのように答えたのでしょう。投資の専門家である以上、3~30年先のスパンで質問に答えるのは、ある意味当然でしょう。

 

 当時の金価格は、85年9月のプラザ合意により下落の一途をたどっていました。ですが、金はその貴重さと永続性故に、古代から蓄財や投資の対象となってきました。ラピスラズリや乳香のような過去形ではなく、現在においても投資対象となっているこの商品が、無価値になることは恐らくありえません。

 80年代において金相場は下落していましたが、いつか底を打ち、上昇に転じるのは誰にも分っていたのです。

 

 問題は、それがいつかは誰も読めない点。


 田中貴金属工業のHPに掲載される田中貴金属 税抜参考小売価格(円/グラム)によると、金価格の平均は下記のように変化しています。


 1986年:平均2044円

 1996年:平均1405円 10年経過

 1999年:平均1069円(底を打ちます)

 2006年:平均2287円 20年経過

 2016年:平均4396円 30年経過


 30年で価値が2.15倍に変化しているのが確認できますよね?


 1986年に投資したのは些か早過ぎましたが、TVドラマで茶化された投資の専門家は確かに成果を出したのです。


 気長に待てた奴なんているか!


 それが、いたのです。

 身近にいたので断言しますが、母の親類には80年代後半から90代にかけて、貯金代わりに相当額の金を購入した方が何人もいました。彼女たちは、投資額の三倍に利益を得たそうです。

 ……非常に残念ながら、我が家の話しではないですが。


 バブルと共に踊った80年代。

 上昇し続ける株や土地に投資した方は数多いましたが、一方で下落し続けた金の方が、株や土地よりも魅了ある投資対象と見抜いた方もいました。 

 

 ホームドラマに登場した投資家は、詐欺師の如く描かれましたが、彼は未来を正しく予測した見識ある人物だったのです。当時の世相を反映するためのストーリー構成だったのでしょうが、投資専門家の名誉のために、正直今からでも撤回してほしいですね。

 もっとも脚本家が存命でないため、無理ですけど。


 今回提示した例は少し極端ですが、投資と投機の違いを理解するには丁度よかったのではないでしょうか。

 

 今回のところは、この辺で。

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