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……そうだ、投資を始めよう!  作者: 大本営
長期投資あれこそ
49/68

地域分散をもう一度考えてみる(上)

 こんにちは、大本営です。


 今回の御題は「地域分散をもう一度考えてみる」です。


 地域の分散については、以前「地域の分散をしよう」で触れてなかったけ?


 気付いた方は、僕のエッセイをよく読まれている方ですね。

 ありがとうございます。


 以前に地域分散ついて語ったのは、いくつもの投資信託の中から一つ選ぶケースなのです。

 例えるならば、「全世界株式 or S&P500 のどちらを選べば地域分散になるか? 」という話し。

 この二択ならば全世界株式の方が地域分散をしているでしょう。

 みんな大好きeMAXIS Slim様以外にも全世界株式は存在しますが、どの会社も程度の差こそあれ投資対象の過半数以上はアメリカです。



 どうして、どこの会社もアメリカが過半数になるの?



 理由は簡単。

 全世界株式はインデックス投資によって運用されているからです。

 インデックス投資とは特定の指数に連動をめざす商品で、アクティブ投資のように人の意思が介在しません。そして現在、世界で最も株式市場が大きく、信頼と実績のある指数が存在し、利益を期待できる市場――該当する国はアメリカだけなのです。

 全世界株式におけるアメリカの比率がどのくらいかというと、時機にもよりますが50~70%くらい。



 他にも保有しているならそちらで地域ができるかもしれないけど、全世界株式だけで運用しているなら……

 S&P500なら言わずもがな。

 誤解してほしくないのは、僕は全世界株式が危険だと指摘したいのではない。

 全世界株式やS&P500を保有した上で、債権投資などで資産分散をすると地域分散はどうなるか? ということを語りたいのです。



 ◇



 前書きが長くなってすみません。

 全世界株式 or S&P500論議があまりに多いので、この論点を避けることができないのです。

 ここからはネジを巻いていきますね。



 分散投資には地域分散、資産分散、時間分散があります。

 簡単さで並べると、時間分散→資産分散→地域分散の順になると思う。


 時間分散はもっとも容易。

 積立投資なら必ず実行可能ですし、そうでなくとも一度に全て購入しなければ達成か可能です。時間分散に必要な資質は、一度に全ての資金を投入したいという欲求を抑える自制心だけでしょう。


 資産分散は運用目標によって決まります。

 株と債券――あるいはREITやコモディティや金の組み合わせ。

 株と債券の割合は60:40だとか、50:50だとか、安全策なら30:70、あるいは100:0で良いだろうと色々考え方がありますが、運用目標が決まっていれば選択肢は自ずと導かれます。



 地域分散は資産分散や時間分散と比べて、正直かなり難しい――というか面倒。

 地域分散や資産分散がされているバランス型ファンドならば別でしょうけど、複数ファンドを保有した状態で貴方が理想とする地域分散を成立させるのは面倒なのです。



 全世界株式をバランス型ファンドみたいなくそファンドと一緒にするな?

 ご指摘は理解しますが、話すと長くなるので一旦保留とさせてください。



 地域分散をわかりやすく説明するために、みんな大好きeMAXIS Slimを組み合わせた例で説明しますね。



 株と債券比率:50:50

 eMAXIS Slim米国株式 S&P500:100万

 eMAXIS Slim先進国債券インデックス:200万

 米国高配当株式:100万

 総投資金額:400万


 eMAXIS Slim米国株式とeMAXIS Slim先進国債券インデックスを積立投資することで、時間分散します。

 eMAXIS Slim先進国債券を投資金額の50%保有することで、資産分散をします。

 株式は地域分散されていませんが、eMAXIS Slim先進国債券は保有しているので、債権については地域分散しています。

 米国高配当株式を保有することで、配当金も得られます。



 アメリカ比率を元に金額を計算すると



 eMAXIS Slim米国株式 S&P500:100万×100%=100万

 eMAXIS Slim先進国債券インデックス:200万×50%=100万

 米国高配当株式:100万×100%=100万

 総アメリカ投資金額:300万

 アメリカ投資比率:300万÷400万=75%



 上記の例でアメリカが占める割合は、75%となります。

 これでは地域分散ができたとは言えないでしょう。




 eMAXIS Slim米国株式 S&P500と米国高配当株式を組み合わせるとか極端じゃね?

 俺なら全世界株式を選択することで地域分散をするぜ!



 なるほど。

 では株と債券比率:50:50を維持したまま、S&P500を全世界株式と入れ替えてみますね。

 eMAXIS Slim全世界株式におけるアメリカ比率は50~70%と変動があるようですが、ここでは平均をとって60%します。



 株と債券比率:50:50

 eMAXIS Slim全世界株式:100万

 eMAXIS Slim先進国債券インデックス:200万

 米国高配当株式:100万

 総投資金額:400万



 この前提を元に計算すると



 eMAXIS Slim全世界株式:100万×60%=60万

 eMAXIS Slim先進国債券インデックス:200万×50%=100万

 米国高配当株式:100万×100%=100万

 総アメリカ投資金額:260万

 アメリカ投資比率:260万÷400万=65%




 eMAXIS Slim米国株式 S&P500よりはマシですが、アメリカが占める割合は65%とかなり大きくなります。



 何故このようなことになるか?

 第一の理由は、外国債券をインデックス投資をした場合、債券投資の米国比率が5割になるからです。

 第二の理由は、先進国株式で高配当の分配金を得ようとすると、米国高配当株式が有利になるからです。




 いやいや、債権比率が50%とか大きすぎ。

 そもそも債権いらなくね?

 俺なら株式100%にして上で、米国高配当株式は全世界株式の1/3にすることで、地域分散を調整したポートフォリオを組むぜ!



 なるほど、では計算してみましょう。



 株と債券比率:100:0

 eMAXIS Slim全世界株式:300万

 米国高配当株式:100万

 総投資金額:400万



 この前提を元に計算すると



 eMAXIS Slim全世界株式:300万×60%=180万

 米国高配当株式:100万×100%=100万

 総アメリカ投資金額:280万

 アメリカ投資比率:280万÷400万=70%



 アメリカ投資比率が65%→70%と悪化します。

 これでは地域分散を狙って調整したとは言えないでしょう。




 考えるのも面倒だ!

 投資信託で人気の二つ。

 eMAXIS Slim米国株式(S&P500)とeMAXIS Slim全世界株式なんだよ!!

 だったら、その二つを購入するのがベターな選択じゃない?




 なるほど、一見するとまともな意見です。

 では、計算してみましょう。




 株と債券比率:100:0

 eMAXIS Slim米国株式(S&P500):200万

 eMAXIS Slim全世界株式:200万

 総投資金額:400万



 この前提を元に計算すると



 eMAXIS Slim米国株式(S&P500):200万×100%=200万

 eMAXIS Slim全世界株式:200万×60%=120万

 総アメリカ投資金額:320万

 アメリカ投資比率:320万÷400万=80%



 アメリカ投資比率が80%と、かなり大きな数字になります。

 YouTubeでこの組み合わせを勧める方が見かけないのも納得。

 いっそ振り切れてeMAXIS Slim米国株式(S&P500)だけにした方が良いのではないでしょう?




 おい、例が酷すぎやしないか?



 御尤もです。

 極端な方が例として適切ですが、少し意地悪が過ぎたかもしれません。

 ではもう少し現実的な調整をしてみます。

 株と債券比率:70:30に資産分散を調整することで、一定程度のリミッターを利かせます。

 eMAXIS Slim全世界株式と米国高配当株式を組み合わせることで、リターンと配当金が狙える組み合わせにしてみますね。




 株と債券比率:70:30

 投資比率

 eMAXIS Slim全世界株式:50%

 eMAXIS Slim先進国債券インデックス:30%

 米国高配当株式:20%

 総投資金額:400万


 eMAXIS Slim全世界株式:400万×50%=200万

 eMAXIS Slim先進国債券インデックス:400万×30%=120万

 米国高配当株式:400万×20%=80万



 この前提を元に計算すると



 eMAXIS Slim全世界株式:200万×60%=120万

 eMAXIS Slim先進国債券インデックス:120万×50%=60万

 米国高配当株式:80万×100%=80万

 総アメリカ投資金額:260万

 アメリカ投資比率:260万÷400万=65%




 eMAXIS Slim全世界株式のアメリカ比率は60%ですので、この組み合わせでは5%増加することになります。




 以上、簡単なポートフォリオで例を提示してみました。

 資産分散と地域分散を両立させるのが、結構難しいことがご理解できたと思います。



 少し長くなってきたので、今回のところこの辺で。

 次回、「地域分散をもう一度考えてみる(下)」でお会いしましょう。

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