地域の分散をしよう (下)
2023年6月末時点において日本株の上昇は一息つきましたが、売れているファンドという意味では、日本株にレバレッジを組み合わせている商品が跳び抜けているようです。この流れがどこまで続くは置いておくとして、貴方がリターンを稼ごうとすると一定の傾向に直面します。
リターンを得るには米国株式の比率を上げるしかない、という事実です。
5年程度のリターンとか5~10年程度の基準価額や純資産の推移だけを判断材料にして、ファンドを選考してみてください。資産構成国比率における米国の割合が高いことが確認できるでしょう。
信じられない?
調べるのも面倒だ?
なるほど、では参考までに3つのファンドを挙げますね。
おお、助かる。
今回は明確な基準を示したいので、特定のファンドを挙げますね。僕は特定のファンド名を挙げるには嫌いのですが、統一した基準を示したほうが分かりやすいのですから致し方ありません。
基準とするのは、eMAXIS Slim全世界株式。
積立投資で売れに売れまくっている超有名ファンド様です。
日本を含む先進国および新興国の株式を組み合わせている、超有名ファンドの資産構成国比率は参考値として適切でしょう。
eMAXIS Slim全世界株式様と比較するファンドは、僕が保有するファンドですが、こちらの名前は伏せさせてください。
例1:eMAXIS Slim全世界株式
運用年数:5年
資産構成国比率:米国56%、日本9%、英国4%
例2:クオリティ投資系Aファンド
運用年数:11年
資産構成国比率:米国63%、英国12%、仏7%
例3:ハイインカムのBファンド
運用年数:19年
資産構成国比率:米国35.8%、英国18.3%、仏7%
結果は一目瞭然ですよね。
米国比率に差はありますが、米国が跳び抜けて1位ということが確認できると思います。例3では他に比べて米国比率が低いですが、それでも2位である英国に対してほぼダブルスコアです。信託報酬を最優先にして、運用実績のよさそうなファンドを適当に選んでも、大体似たような結果になります。
これが現状。
ファンドにおいてリスクとリターンは、顧客にアピールする大きな要素。
これらをバランスを調整した上でインデックスを組みと、大体似たような構成になるようです。
中国などの新興国を過小評価していないか?
ご指摘は理解しますし僕も同じ疑問を抱くのですが、eMAXIS Slim全世界株式様ですらこのような値なのです。参考までにeMAXIS Slim全世界株式様の交付目論見書2023.05.11の詳細を提示しますと、以下の値になります。
中国3.5%
インド1.7%
台湾1.5%
その他4.4%
新興国の合計11.1%
現状の相場を元に高いリターンを得ようとすると、程度の差こそあれ米国比率は断トツ一位になります。
前回に書籍などで見かけやすいタイトルを挙げましたよね。「今年一番急騰したファンドはこれだ!」「この一年で一番売れたファンドはこれだ!」「ベストファンド10を厳選」を見ないほうが良いとしたのは、これが理由なのです。
似たような資産構成国比率になるのに、これらを確認する意味があるのか正直疑問なのです。
肯定的に評価すれば似たような設定で、高いパフォーマンスを得ているともいえるでしょう。ただしそれは数年間での成績に過ぎないので、扱いに注意が必要でしょう。
一方で残るタイトルである「信託報酬が安いファンドを選ぼう!」「今、日本株ファンドが熱い!」「全世界株式 or S&P500のどっちが正しい?」「私はX年で資産をXXX%増やしました!」は、ある程度参考になります。ただ残念ながら、似たような資産構成国比率になるという点では、あまり大差がないのです。
運用実績とか信託報酬を重視してファンドを選んでいると、いつの間にか米国比率が極端に高くなっている?!
これは投資信託を利用する人が、往々にして陥りがちな罠とも言えます。
◇
ファド選びを慎重にしないと、意図以上の米国重視ポートフォリオが完成することは理解していただけたと思います。誤解してほしくないのは、米国重視が悪いと指摘したいのではありません。僕が指摘したいのは、ファンドを複数持つことで資産分散を図ったつもりが、購入したファンドの資産構成国比率が実は似ていたという事態への警鐘なのです。
先ほど例に挙げたのはお前が保有するファンドなんだろう?
お前にそんなことを指摘する資格があるのか?
御尤もな指摘。
僕が契約している金融機関の一つでハイインカムのBファンドを購入していたのですが、残念なことにその金融機関では販売を停止したのです。致し方ないからクオリティ投資系Aファンドを新たに購入しました。組入企業を確認する限り重複もほとんどなさそうなので、資産分散として問題ないと判断しました。
これが真相になります。
少し脱線しましたね、軌道修正しましょう。
同じような資産構成国比率のファンドを複数保有することは、分散投資とはいえません。
今回は資産構成国比率だけを話題にしましたが、保有する複数のファンドが同じ会社を組み入れていたら、尚更分散投資の効果は薄れます。
じゃあ、どうするのが良いのかと問われれば、これが難しい。
困ったときは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を参考例にしてみます
2020年時点でのGPIFのアセットアロケーションは、国内債券25%、外国債券25%、外国株式25%、国内株式25%となっているようです。この例を参考にするならば、国内株式の比率を上げるのが手となります。2023年6月末時点において国内株式は急上昇しましたが、今後も現在のレベルを維持できるかは不透明です。
地域の分散をするためには、新興国や日本などに特化したファンドを新たに保有するのも手ですが、現時点では米国重視よりもパフォーマンスは落ちます。米国一強の時代は終わったとか言われてますが、投資の世界においては圧倒的強さを誇ります。ちょっと信じられないかもしれませんが、eMAXIS Slim全世界株式様の米国比率が極端に高いことからも、この事実を垣間見れるでしょう。
吹っ切れてS&P500に切り替えるのアリですし、現状維持をしたまま規模を拡大するのもアリでしょう。
ただし、注意が必要です。
仮に現時点で地域の分散をうまくしたとしても、積み立て投信でS&P500を選択していると色々厄介なことが発生します。なぜなら米国比率が急上昇するので、気が付いたときは地域の分散を調整することが困難になっていた、なんてことが十分あり得ます。
米国重視の資産構成国比率のファンドをどの程度保有するかは、投資家一人一人に選択権があり、他者がどうこう言うものではありません。なぜなら運用目標やアセットクラス、そして地域分散をどのように考慮するかは、投資家個人個人によって異なるからです。
一番悪いのは書籍や動画の情報を鵜呑みにして、意図しない資産構成国比率のポートフォリオやアセットいクラスを組んでしまい、許容を超えるリスクを抱え込むことです。
貴方は自分が保有する資産の、資産構成国比率を把握していますか?
まだ把握していない方がいるとしたら、一度確認することをお勧めします。
資産構成国比率は交付目論見書を調べれば把握できますから、後は比率に応じた投資額を計算するだけです。
eMAXIS Slim全世界株式様の一点買いも十分アリですが、そのケースでも資産構成国比率は把握しておきましょう。なぜなら自分が何に投資していないのかを把握するのは、基礎中の基礎だからです。
資産構成国比率の重要性は結構忘れられがちなので、「今年一番急騰したファンドはこれだ!」「この一年で一番売れたファンドはこれだ!」「ベストファンド10を厳選」とかのタイトルに踊らされるような気がします。
今回のところは、この辺で。




