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……そうだ、投資を始めよう!  作者: 大本営
長期投資あれこそ
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複利効果イメージグラフの罠

 前回までは長期投資を何故続けられないのかについて、僕なりに理由を書いてみました。

 まあ、あれだけじゃないんでしょうけど。

 さて今回の御題は「複利効果イメージグラフの罠」としました。

 物議を醸しそうな御題ですので、そのようにも考えられるなと受け取ってもらえると助かります。




 単利と複利については以前触れたので、複利効果の重要性については理解をいただけているでしょう。

 単利は利益を元本に組み入れずに利息計算しているのに対して、複利は利益を元本に組み入れて利息計算します。ギャンブル用語でいうところのオールイン(有り金を全て賭ける)に近い手法といえば、ざっくりとしたイメージがつきやすいかもしれません。


 毎回全ての賭け続けるため大きな効果を得られるという点で、複利とオールインは共通するものがありますが、いくつか異なる点もあります。オールインはその大きすぎる効果故に途中でゲームを下りることができないという制限がありますが、複利は利益を得るための手法の一つに過ぎないので、いつでも投資を止めることができます。なにより異なるのは、投資はギャンブルではない点でしょう。

 ギャンブル(賭博)は全てを得るか、全てを失うかの二択しかありません、一方投資はそれなりの損失を負うこともありますが、全てを失うことはありません。あっ、レバレッジをするために証拠金が必要になるケースは別ですよ。



 投資はギャンブル(賭博)ではありませんから、当然ですよね。

 


 逆説的ですが、複利はオールインの手法を投資に取り入れたことで、その大きすぎるデメリットを軽減した手法とも言えるでしょう。このように複利は優れた運用手法であるため、アナリストとか投資会社は投資の有用さ伝えるために、複利効果のイメージグラフを盛んに用いています。



 僕は思うに、これが投資家に大きな誤解を与えているのだと思うのです。



 複利効果のイメージグラフは常に右肩上がりですが、相場には上がり下がりが必ずあるので、実際は利益の50%が吹き飛ぶとか普通に発生します。このような衝撃をマイルドにするために、ポートフォリオ理論を用いて投資対象を分散したり、債権投資を組み合わせたりします。



 あれっ? と気付いた方は鋭い。



 債権投資は一定期間相手にお金を貸す代わりに、貸したお金に対して最初に取り決めた金利からクーポン(利息)得ます。

 貸したお金に対してクーポン(利息)を得るのですから、債権で得るお金は単利。

 債券投資では複利効果を得ることはできないのです。




 例えば貴方の手元に投資資金が100万円あるとして、10年での5%複利を得たとします。

 10年後の金額は162.89万円です。


 この結果を得るには全額株式投資をしなければいけません。

 だって、債券投資では複利効果を得られないのですから。



 ポートフォリオ理論が提唱する分散投資からは、微妙にズレが生じていませんか?



 ポートフォリオ理論は期待する利益に対する資産の分散を計算しているだけなので、債券を必ずしも組み合わせることを前提にしていません。ですが100万円分の複利効果を得るためには、全て株式投資に回さなければいけないことに変わりはないのです。

 財務健全性や収益安定性に注目したクオリティ投資を選択することで、相場の上がり下がりをある程度軽減することは可能ですが、あくまで()()()()



 複利効果のイメージグラフの重要性や有効性は認めますが、アナリストとか投資会社はこのグラフを盛んに紹介することで、投資家を無意識のうちに全額株式投資してはいないだろうか? 

 僕は投資家を必要以上に、危険に晒しているような気がするのです。





 複利効果を説明で、もう一点気にしていることがあります。

 先ほどの例えが丁度良いですから再利用しますね。



「例えば貴方の()()()()()()()が100万円あるとして、10年での5%複利を得たとします。」



 あれっ? と気付いた方は鋭い。



 先ほどの前提は、手元資金を最初から全額投資しないと成立しません。

 投資の基本は分散投資です。

 分散投資とは、資産の分散と購入時期の分散から成り立ちます。

 最初に全額投資することを前提にして、複利効果を計算することは、分散投資からはずれていませんか?

 アナリストとか投資会社は、分散投資の重要性を理解している方々です。

 それにしてはどこか不自然さを感じませんか?



 これは極端な例での説明です。

 複利効果の計算を紹介するサイトによっては、積立を考慮して複利効果を計算しているものもあります。複利効果をわかりやすく説明するために、手元資金をすべて投資して計算しているに過ぎないのでしょう。

 でも紛らわしくて誤解を与えかねないですよね。







 複利効果のイメージグラフは、投資のメリットが分かりやすい題材です。



 それは認めます。

 ですが、あまりに分かりやすぎて、単純化されすぎてはいないでしょうか。


 複利効果のイメージグラフが唱える論理を鵜呑みにすることは、投資効率を重視したジェットコースターに乗るようなものです。経験ある投資家ならば、この高低差や急加速急減速を受け止められますが、複利効果のイメージグラフの説明を受けるのは投資初心者でしょう。

 そりゃ動揺するし、耐えきれなくなって利益確定して、途中退場するよね。



 複利効果のイメージグラフは有効すぎるので、投資家に甘い夢を見せてくれます。

 その結果、ポートフォリオ理論や分散投資などが頭から吹き飛んだりしていませんか?



 投資で貴方が賭けるのは資金だけではありません。

 貴方が金と一緒に試されているのは、胆力や度胸のような精神力と、最初に決めた運用目標にそって事を進める持続性など多様な要素です。ポートフォリオ理論や分散投資は相場の衝撃を和らげてくれますが、最後は個々人の器が試されることは忘れてはいけません。



 今回のところは、この辺で。

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