貯金は本当にリスクがない資産運用なのか?
2000万問題なんて、自分には十分な貯金があるから関係ないよ!
多数派ではないでしょうが、このような意見を持った方もいるかもしれません。この意見は間違いではありませんが、残念ながら正しくはないのです。
貯金は本当にリスクがない資産運用なのでしょうか?
預保険機構のHPによれば、1金融機関ごとに合算して、 預金者1人当たり元本1,000万円までと破綻日までの利息等が保護されますと記述されています。
仮に貴方が2000~3000程度貯蓄があったとしても……資産構成がメインバンクへの貯金一択という極振りだとしたら。メインバンクが破綻した瞬間に、2000万問題が目の前に現れます。
金融機関の破綻なんて、そう起きるはずがない?
非常に残念ながら、金融機関は破綻するのです。
平成金融危機と呼ばれる1997年の金融危機において、三洋証券、山一証券といった名だたる金融機関だけでなく、北海道拓殖銀行なども破綻しています。あれから20年以上経過しているため若い方は知らないかもしれませんが、金融機関の破綻は現実の脅威ということを忘れてはいけません。
◇
金融機関の破綻云々を語り出すと脱線するのでこのくらいにして、貯金のもう一つの弱点「インフレリスク」を語らせてください。
そういえば、最近利息が下がったと思いませんか?
5年くらい前は利息が0.5~0.3%程度の定期預金があったのに、今では桁が一つ下がって0.05%がざら。価格.comで調べたところ、もっとも高い利息を提示していたのはオリックス銀行の0.3%(2020/02/12時点)でした。それも3年100万以上限定という条件を満たした場合に限り。
一方で消費税は、2019年10月に2%増税されています。
単純な比較例ですが、1.7%程度差が発生しているのがお判りいただけるでしょう。
消費税だけをやり玉に挙げると、左派の同調者と見なされかねません。これはいけない。公平を期すためインフレ率で説明しましょう。
インフレ率とは物価の変動率です。
分かりやすく説明するため、単純な例をあげます。
インフレ率が+7%の国に住むAさんは、10000円の商品が販売することで生計を立てていたとします。Aさんは10000円の商品を販売するごとに、200円の利益を上げていました。
「今年は200円儲かったし、それ以上の利益を求めない。そうだ、俺は顧客優先のビジネススタイル貫くのだ」
そう決意したAさんは、翌年も10000円で商品を販売しました。
Aさんの販売スタイルが好感を持たれたのか、Aさんの店は連日大盛況です。
顧客はみんなAさんに好意的に接してくれました。
「やった。やはり俺は間違っていなかった」
そんなある日、Aさんは予想外の大赤字が生まれていることに気付きます。
Aさんは10000円の商品を販売するごとに、500円の損失が発生していたのです。インフレ率が+7%で去年と同じ利益を上げるには、Aさんは10700円で販売するべきだとようやく気付いたのでした。
これが7%のインフレが発生している世界です。
決してフィクションでなく、ベトナムとかでは現実に起きています。
逆に物価が下がることもあります。
インフレ率が-7%の国に住むBさんも、10000円の商品が販売することで生計を立てていたとします。Bさんは10000円の商品を販売するごとに、200円の利益を上げていました。
「インフレ率なんかよく分からないし、考えるのも面倒だから来年も同じ値段で売ろう。同じ値段で売るのだから、俺は顧客優先のビジネススタイル貫いているよな」
そう決意したBさんは、翌年も10000円で商品を販売しました。
Bさんの店は商いが今ひとつです。
それでもBさんの商品は他の店では販売していないため、顧客はBさんの店にはやってきますが、Bさんを非難するような目で見つめていきます。
「おかしいな、俺は顧客を大事にしているのに」
そんなある日、Bさんは予想外の黒字が生まれていることに気付きます。
Bさんは10000円の商品を販売するごとに、900円の利益を上げていたのです。インフレ率が-7%で去年と同じ利益で抑えるには、Aさんは9300円で販売するべきだとようやく気付いたのでした。
これが-7%のインフレが発生している世界です。
インフレ率がマイナスなことをデフレといい、一時期の日本がこれに該当します。
もっともここまで極端ではありませんでしたが。
◇
IMFによると、日本のインフレ率は下記の値になります。
2015年0.79%。
2016年-0.11%。
2017年0.47%。
2018年0.98%。
2019年0.99%。
仮に一番利息が高いオリックス銀行へ、2017~2019年に100万を預けたとしても、インフレ率以下の利息であるため、2020年の時点でその100万は価値を目減りさせます。この価値の目減りをインフレリスクといいます。そして貯金は、インフレリスクに弱い商品なのです。
非常に残念な事実ですが、これが現実。
一番利息が高いオリックス銀行(2020/02/12時点)ですらこれですから、他の金融機関の場合ではより厳しい結果になるでしょう。国会で大騒動になった2000万問題を仮に貯金だけで乗り切ろうとしたら、2000万を遥かに越える資金が必要になります。
絶望するしかありませんな、もう笑いしかありません。
否、断じて否!
インフレリスクに対抗する手段はあるのです。
そう、それは投資。
でも投資は難しいし、リスクもあるのでしょう?
その通りです。
投資にリスクは付き物ですが、貯金にも隠れたリスクがあることを指摘したかったのです。
今回のところは、この辺で。