ギルドマスターに、ハメられる!?
ここ王都グリンテルは、人口約12万の大都市だ。
この都市に根付いて、はや10年。もはやオレの庭といっても過言ではないくらいに慣れ親しんできた。
大通りの両端では、朝早くから市場が活気づき、人の往来も多く、
あちこちで喧噪が繰り広げられていたのだった。
そんな街中で、
ジリジリと太陽が照らし、朝ながら汗ばむ陽気の中、
スズネに連れられて歩いていくのであった。
「・・・もう!もっと楽しそうに歩いてよ~!こんな美少女と街中を歩けるなんて・・・って感じにさ~。」
(無理。暑くてだるくて帰りたいよ。)
隣を歩いているスズネが、ニシシといった表情を浮かべ、
強引にオレの手を取り歩みを進めていく。
それでも未だ照りつける太陽の暑さと、ベットの恋しさを心に浮かべ、
無駄に内心で抵抗してみたのだが・・・。
「あはっ!まぁヴァンが内心どう思っていようが、僕はヴァンと一緒に出掛けられて嬉しいけどね♪
それに、久々の二人でのクエストだもん。せっかくなんだし楽しもうよぅ!」
そんな言葉を投げかけられ、オレは、
「まぁ、そうだな。せっかく早起き?したんだし、楽しんでみるかな。」
「うん!その意気、その意気!」
と、何気ない会話を繰り広げながらいると、ギルドに到着したのであった。
冒険者ギルドの正面には、大きな扉があり、
その横には冒険者の象徴の、剣と盾の紋章が張り付けられていた。
慣れ親しんだ扉を開け、喧噪の中を潜り抜けて、クエストボードをスズネと二人見ることにした。
「ん~。なにがいいかな?やっぱり採取よりは討伐系かな?でもでも、違う街に行ける配達系も捨てがたいかな~。」
「いや出来るなら、手短になるべく簡単に終わるクエストを選んでもらえるといいんだが・・・。」
なるべく穏便に終われるように、スズネに進言してみるのであったが、
「なに言ってのさー!せっかくなんだから、充実できるようなものを選ぼうよー!」
と、速却下されるのであった。
そんな感じで、二人であーだこーだ言い合っていると、
ギルドの二階から、澄み切った声が掛けられた。
「あら?こんな早朝から珍しいわね?どういう風の吹き回しかしら?」
「これは明日は土砂降りの雨になりそうかしらね~。」
(とんでもなく失礼な物言いだな・・・)
そんな事を思いつつ、階段へと目線を持っていくと、
そこには、ピンッと長く伸びたウサ耳と、豊満な胸をお持ちのギルドマスターが立っていたであった。
輝く金色の髪を手で触りながら、訝しげに、しかし爛々と輝く赤い瞳をこちらに向け、
「でも、ちょうど良かったわ。ヴァンにぴったりなクエストがあるのよ。悪いけど、二階の部屋まで上がってきてくれないかしら?」
「スズネも一緒に来てね?」
「はーい!わかりました!・・・ほら、ヴァンも行くよ!」
と、スズネ共々ギルドマスターの部屋へと呼ばれてしまい、
こちらが逃げる事を、先回りして塞がれてしまった。
(絶対、面倒事だ。う~ん。どうやって断ればいいんだろうか?)
こちらの足取りは重く、隣のスズネは軽やかに、尚且つ逃げ出さないように手を握られて、
確実に部屋に近づいていくのであった。