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Phantom:異世界の英雄に  作者: Alter
第一章
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第一 章1 『すべての始まり』

初めての投稿です。文章に変な所があると思いますけどご了承ください。

  「嘘だろ…何処だよここ…」

 


  辺りを見渡す、先程までいた薄暗くパソコンやスマホの光だけの自室とは、異なる光景が広がっていた。


  陽の光を浴びて輝く、中世風な石造りの街並み。

 遠くまで続いているとても長い大通り。その大通りの両サイドに並ぶたくさんの店。


  大通りに面している店には、見た事のない果物や肉、魚が置いてある。が、それだけではなく、店先に大剣や防具を並べた、鍛冶屋の様な建物。


 店の中の棚に、様々な色の水が入っている小瓶が置いてあり、店の奥には大きな鍋がある、恐らく魔法関連の建物。


 当然元の世界ではそんなもの、ありえない。

  その剣などはどれも本物の様で、それを買いに来る人もみんな本物の様だ。



  「何が起きたんだ…?」


 

  大通りを行き交うのは、沢山の荷物を載せた馬車や、いろんな姿をした大勢の人々。ハロウィンの時に渋谷にいそうな、鎧姿の兵士の様な人や、杖を持ちローブを深く被った魔法使いの様な人、耳が他の人よりも長いエルフの様な人など様々な人がいる。



  いや、『様な人』じゃなくて本当にそうなんだろうな。と思いながら少年は呟いた。



  「これが…異世界召喚?」



 


 ********************************



  少年の名前は、高橋 葵 日本生まれの17歳 男子。髪は黒髪で、身長170の至って普通な高校三年生、だったが三年生になってから、学校に行かなくなったいわゆる『引きこもり』という奴だ。

 

  一日中部屋でネットをしたりアニメを見たり、ラノベを読むなどと言った、怠惰な生活が始まった。


  家を出るのも新しくゲームやラノベが出る時だけだ。それに友達と思われているかわからないが、一応友達と鉢合わせしないように、夜中に出かけるなどといった、完全なる親泣かせのクズだった。



  「にしても異世界召喚ってほんとにあったんだな……」



  召喚された大通りから移動し、中央に噴水がある広場に来ていた。広場にも何人か人はいるが、大通り並ではないのでまだマシだ。

  さすがに人なのか人じゃないのか、よく分からない者達の間にずっといるのは避けたい。


  自分の服装や髪の毛の色のせいかわからないが、なぜか回りにいた人達はみんな、ずっとアオイのことを見ていた、後は単純に落ち着かないからだ。



  「やっぱり、文化の違いとかで変な風に見られるか…まぁしょうがないわな、見る限り黒髪も全然いないし、当たり前だけどジャージ着てるやつなんかいないもんな」



  異世界召喚された場所での出来事を思い出し、苦笑いをする。そしてひとまず落ち着くために、ベンチに座って休憩することにした。


  噴水の回りには、ベンチが囲むように置いてあり、その中から来た方向が見れる、つまり大通りの方を見れる場所に座った。

 


  「まだ見られてる気がする…俺ってそんなに浮くかな?」



  大人数に見られている訳では無いと思う。回りにいる人達の中にも、アオイの事をずっと見ているような人はいない。

  だが明らかに視線を感じる。それは異世界召喚された大通りからずっとだ。



  「ずっと見られてると、まるでストーカーされてる気分だ…いや男子高校生をストーカーってどんな趣味だよ…怖いわ」



  ストーカーされてる女性の気持ちが分かった所で、いったいどこから誰に見られているかは分からない、つまり打つ手が無い状態だ。

  それに、打つ手が無い状態の問題に、そんなに長く構う時間も無い。

  その為アオイは、ストーカーの事は取り敢えず、無視することにした。



  「えーと?まず最初に持ち物チェックと状況確認だよな……服はこないだ買ったジャージに、持ち物はスマホと財布……財布あってもどうせ『円』じゃないんだろうけど…」



  『こないだ買ったジャージ』といってももちろんアオイが買いに行ったのでは無く、親が買ってきたのを適当に着てるだけだった。

 

  黒色に青色で少しラインがあったりするような、地味なジャージだった。だがポケットに荷物が多く入るし、伸びるから動きやすいためアオイは好んで着ていた。



  ポケットを裏返して中のものを出していると、不意に何かが落ちた音がした。ベンチの下を見ると、そこには黒や紫を混ぜたような色をした宝石の様なものが落ちていた。



  「こんなの持ってたかな?…いや…持ってた訳ないよな、普通に考えて…ってことは異世界召喚された時に持たされたのか?」



  恐る恐るその宝石を手に取る、すると一瞬強く光を放った。その光はまるでカメラのフラッシュのようで、かなり眩しく一瞬のことだった。それに急に石が光りアオイは状況がまだ理解できてなく、その場に固まることしか出来なかった。そして、



  「石の色が…変わってる…」



  やっと状況を把握し、今起きた事の原因である石を見るとさっきまでの黒や紫などの暗い色からうって変わり、青や緑を混ぜた綺麗な明るい色に変わっていた。



  「な、なんだったんだ…?体になにか変化が?」



  アオイは、その宝石をポケットにしまう。そしてジャージの袖や裾を引っ張って、自分の腕や足などをくまなく見る、がこれといった変化は無く、普通な中肉中背の高校生の体のままだった。



  「いや…もしかしたら見た目はそのままでも、めっちゃ力が強くなってたりしてるんじゃ!?」



  ベンチから勢いよく立ち上がり、 一度深呼吸をする。そしてジャンプをしてみたり小枝を拾って剣のように振ってみたり拳を前に出してみたりするが、



  「ダメだ…はぁ…体がめちゃくちゃ重い…引きこもってる間に筋トレでもしとけば良かったな…」

 


  自分の運動不足を実感して、ため息をこぼしながらポケットにスマホと財布をしまい、ベンチに座り直す。

  腕を頭の後ろで組み、石造りの街、異世界召喚された街を見渡す。どの建物も石や木でできていて、機械などはない様子だ。



  「んで?えーと…まとめると、中世風の街で兵士や魔法使い、エルフが住んでいる。機械系ではなく、魔法が発達してる。そこに召喚された俺、持ち物は財布と…あれっ?スマホってこっちでも使えるのか?」



  石が入っていたのと逆側のポケットの中から、元の世界で何回か落としたりして、少し傷付いた黒色のスマホを取り出して電源ボタンを押す。


 すると画面に、見慣れた光景が映し出された。

  好きなアニメの壁紙、『94%』『18:34』という数字、そして右上に出る『圏外』という文字だった。



  「やっぱりスマホは使えないか……いままでやってきたソシャゲともお別れか、ずっとやってきたのに……」

 

 

  リリース当時からやっていたソシャゲが出来ないことが分かり、もう何度目か分からないため息をこぼしながら、スマホをポケットにしまう。



  「さて…と?状況確認と持ち物チェックは終わったから…あとは実際に街を歩いてみるか…それ以外にやること無いしな」



  ベンチから立ち上がり街を見渡す。

  召喚された時よりもすこし日が傾き始めていた。現代の日本ではまず見られない、夕日に染まった石造りの街、それはとても幻想的な光景だった。



  「綺麗な街だな……ってもう日が暮れてきんのか、ということは時間軸は元の世界と一緒……まぁいいや、街を回るのは明日にして、今日はもう寝て……俺何処で寝るの!?」



  普段から暇な時間を持て余し、グダグダしているような引きこもりにとっては別に、好きな時に寝て、好きな時に起きればいいが、勿論、異世界召喚された為そんな快適な空間などは無い。自分で寝床を探すしか無かった。



  「マジかよぉ、異世界召喚された一日目が野宿とか、この先心配になってくるよ…」



  ベンチで本当に何度目か分からないため息をついた。

  街では家の明かりや街灯がつき始め、大通りにあった店が閉まりはじめ、逆に酒屋などが開店し始めた。さっきまで周りにいた人達も皆、家に帰り始めていた。



  「それにしても、ほんとにいろんな人がいるな。アキバにいる気分だわ。……いや、さすがにアキバにもエルフとかはいないけどね…」



  元の世界で、二番目に馴染み深い場所を思い出し苦笑いをする。一番はもちろん自分の部屋だ。

  普段行く本屋には売っていない、特典付きのラノベを買うために初めて秋葉原まで行った。

 その時見た外人の多さに驚いたのは、今でもいい思い出だ。



  「そっか…もうアキバにも行けないのか……ソシャゲも出来ないし……ラノベの主人公、メンタル強くね?俺はもう心折れそうだわ……」


 

  異世界召喚物のラノベの主人公のメンタルの強さを思い知り、これから先の不安に駆られ呆然と上を向く、すると元の世界とは違う星座が、暗くなってきた空に薄らと輝き始めていた。



  「とりあえず今日寝るところを探さないとな…っていっても流石に路地裏とかでってのは嫌だしな…」



  路地裏で寝てる間に、ネズミに襲われたり、突然チンピラに絡まれるのは避けたい。それに街は石造りの為寝るには固そうだ。その為とりあえず街から一度出ることにした。

 


  「えーと…街の外にはどっから行けるんだ?」



  また辺りを見回すが、今回は街の遠くの方を見渡す。すると遠くに、離れていても分かるぐらい大きな壁があることに気がついた。どうやら街の外へはあの壁をくぐって行かないといけないらしい。

  壁は、塔と塔の間を繋ぐように出来ている様だ。



  「でっかい壁だな…壁があるって事はなにかから身を守るって事か…」



  アオイの瞳には不安の色が濃かった。当然、日本にはモンスターなどはいないし、アオイ自身も妖怪や幽霊、怪物などの類いの存在は信じていない方だ。だが、異世界召喚されたという事実があるうえに、街の回りを囲む壁。



  「これは…モンスターがいるっていう確定演出だろ…壁の外で野宿は辞めて、ちょっと外を覗くぐらいにするか」



  アオイの瞳にはまだ不安があるが、どことなく楽しそうだった。アオイは、元の世界には無いものを見てみたいという、子供の様な単純な好奇心で壁に向かって歩き始めた。

 

 

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