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21 ハロウィン
「トリック! オア! トリート!」
八栖坂雅美が教室内で、伊野丸春に揚々と言う。
八栖坂は別にお化けの仮装もしていないし、伊野丸の家に訪問している訳でもない。
それなのにこんなことを言っているのは、ハロウィンを口実にイタズラしたかったからである。
いつもセクハラ紛いのことを勝手にしているとはいえ、それはそれ、これはこれ。また違う楽しみがあるのだ。
「…………」
伊野丸は若干引き気味であったが、鞄を漁ると八栖坂に手渡す。
それは飴であった。
伊野丸はそういう祭り事には疎く、絶対に持っていないと思っていただけに、八栖坂の衝撃は大きかった。
「むぅ、春ちゃんのいじわる~!」
貰った飴を口に含むと、がばっと伊野丸に抱きつく。
「おい! ちゃんと飴をやっただろ!」
「こんな飴玉一個で引き下がれるかー!」
腕の中から抗議の声が上がるが、無茶苦茶なことを言ってうやむやにしたのだった。




