13 ヒーローは脳筋
「ちょ、ちょっと待って……」
多田羽鷹の口から、今にも消えそうな悲願の声が発せられた。
場所は公園のランニングコース。石黒真琴に誘われ、一旦帰宅してから集った場所がここだった。
動きやすい服装でと注文をつけられだが、スポーツウェアなど多田は持っていない。
そのため普段着で来たのだが、量販店で適当に買っているそのダサイ服は、見事に汗で変色してしまっていた。
もつれそうになる足を止め、なんとか息を整えようとするも、浅い呼吸が落ち着く気配を見せない。
そこへ先行していた石黒が戻ってきた。駆け足のように足踏みしながら、教官のように発破をかける。
「ほらほら、まだ一キロもいってないよ! もうちょっとだけ頑張ろう!」
「い、いちきろ……?」
しかし多田は怪しい返事をするだけ。既に一キロという言葉が理解できない程、疲労困憊しきっていた。
「うーん、この状態はもう駄目かな。
そこにベンチがあるから、そこで休もっか」
対して、石黒はケロッとしていた。服装も、ただのジャージであるにもかかわらず、どこかスーツのようにビシッと決まっている。
一度止まってしまうと歩けないもので、肩を貸してもらいながらなんとかベンチまでたどり着く。
「ハァ……ハァ……石黒さんは……走ってても、ハァ……いいのよ?」
「あはは、それは無理だよぉ。こっちから誘っておいて、後は放っておくのはよくないでしょ?」
「そ、それも、ハァ……そうね」
フラフラと頭を怪しくふらつかせながら言うと、すぐに否定された。
その後、もう一度走ってからストレッチをして、次に誘われても断るぞと心に決めてから別れた。
家に帰ると勉強をしたかったが、体の疲れからそれはとても億劫に思え、後ろ髪を引かれながらすぐに眠ってしまうのだった。




