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09 ダウナーとヒーロー


「うっ、うぅ……?」

「あ、多田さん大丈夫?」


 目が覚めた多田羽鷹ただ はねたかは、ぼんやりする頭で上体を起こすと、声をかけられた。

 しかし多田は声で誰だか判別できず、かといって眼鏡がないと何も見えないので、まずは眼鏡を探さなければならない。


「えぇっと、ちょっと待ってね……」

「はい眼鏡」

「あ、ありがと……」


 渡された眼鏡を戸惑いながらかけると、相手は多田でも知っている人物だった。


「石黒さん……でしたよね。どうして貴女が?」


 目の前の彼女は、石黒真琴いしぐろ まことという生徒だ。多田でも知っていた理由は、テストで学年十位前後の成績を取っているためである。

 周りを見ると、どうやらここは保健室のベッドのようだ。


「そうだよ。石黒真琴、よろしくね!

 多田さん覚えてるかな? バレーの時間にボールが当たって倒れちゃったの」


 そう言われると、なんだか額が痛いような気もするが、いつも頭痛がしているのでよく分からなかった。


「そう……なのかしら。あまり覚えていないのだけれど……」

「それで、倒れた多田さんを運んできたの。

 ごめんね! ウチのクラスの娘が当てちゃって。後で謝ったときに許してあげてね」

「いや、別にそれは構わないのだけれど……」


 どうして貴女が謝る必要が? とは聞けなかった。普段他人と喋る機会が少ない弊害である。



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