10/21
09 ダウナーとヒーロー
「うっ、うぅ……?」
「あ、多田さん大丈夫?」
目が覚めた多田羽鷹は、ぼんやりする頭で上体を起こすと、声をかけられた。
しかし多田は声で誰だか判別できず、かといって眼鏡がないと何も見えないので、まずは眼鏡を探さなければならない。
「えぇっと、ちょっと待ってね……」
「はい眼鏡」
「あ、ありがと……」
渡された眼鏡を戸惑いながらかけると、相手は多田でも知っている人物だった。
「石黒さん……でしたよね。どうして貴女が?」
目の前の彼女は、石黒真琴という生徒だ。多田でも知っていた理由は、テストで学年十位前後の成績を取っているためである。
周りを見ると、どうやらここは保健室のベッドのようだ。
「そうだよ。石黒真琴、よろしくね!
多田さん覚えてるかな? バレーの時間にボールが当たって倒れちゃったの」
そう言われると、なんだか額が痛いような気もするが、いつも頭痛がしているのでよく分からなかった。
「そう……なのかしら。あまり覚えていないのだけれど……」
「それで、倒れた多田さんを運んできたの。
ごめんね! ウチのクラスの娘が当てちゃって。後で謝ったときに許してあげてね」
「いや、別にそれは構わないのだけれど……」
どうして貴女が謝る必要が? とは聞けなかった。普段他人と喋る機会が少ない弊害である。




