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スモーキー教授の作った薬は見事成功した。一旦死亡した教授は間違いなく一週間後に生き返ったのだ。
そのまま大人しく助手が墓を掘り出すのを待っていれば、世界の成り立ちを根底から覆す偉大な発明者となっていただろう。教授の誤算は棺の中に大量の煙草とライター、携帯灰皿があったことだ。おそらく目覚めた直後に教授は手に持っていたライターで棺の中を確認したのだろう。そして自分の体が愛用の煙草に覆われていることを知ったとき、重度のニコチン中毒者だったスモーキー教授は一週間に渡る禁煙に耐えられず、後先考える余裕もなく煙草を吸いまくったのだ。その証拠に携帯灰皿の中身は吸殻が隙間なく押し込まれて破裂寸前だった。灰皿が使えなくなってからも煙草を吸い続けたらしく、棺の内側でもみ消した煙草が底に何本も散らばっていた。そうやって助手が墓を掘り出すのを待っていたが、その時間はやはり長すぎたのだ。
助手は警察の取り調べを受けたが、スモーキー教授からの手紙が証拠になり何らの罪にも問われることはなかった。大学側は教授の研究室をくまなく探したものの、不死の薬やそれに関連する成果物は発見されなかった。遺された研究ノートにはそれを思わせる記述が見られたものの、肝心な部分は教授の頭のなかだけにあったらしく、同じ薬を再び作り出すことは不可能だった。夫人の協力を得て自宅も調べたが、仕事を家庭に持ち込まない主義だったようで、出てきたのは消費税が上がる前に買いだめした数百箱の煙草カートンだけだった。
助手は激しく後悔した。自分が勇気を出して、きっちり一週間後の真夜中に墓を掘り出していたら。いや、教授がもっと明るい時間に研究室で死んでくれていたら。いやいや、棺に煙草を入れるのをやめていたら。いやいやいや、携帯灰皿を多めに入れていたら。いやいやいやいや……。
衝撃的な最後を遂げたスモーキー教授は一躍時の人となり、マスコミが連日大がかりな報道をする中、警察側は同じ死体を二度も検視する羽目になった。前代未聞の事態に直面した警察は、その威信をかけて二度目の検視は慎重に行った。結果として、一度目の死因と同じく棺の中で生き返った理由は不明とのことだった。しかし、二度目の死因は明白になった。スモーキー教授の最後の死亡原因は火災による重度の全身火傷であり、火災を引き起こした要因は寝煙草の不始末であると。




