表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不老不死は死を望む  作者: 福田秋生
1/2

プロローグ

「かはっ、かははっ、かははははははっ!」



 その男は、笑っていた。



「ああ、ようやく死ねる、遂に死ねる、やっと死ねる。幾千幾万の月日、どれほどこの時を待ちわびたことかっ!ああっ!ああっ!!最高だ、ああ最高だっ!如何なる道筋を経たとて、これほどの感動は得られなかっただろうさっ!!」



 ぶふぉっ。その男は、大量の血を吐いて。



 懐かしいなと、夢想する。



 幼き日から、今日この日まで。



 死を願い死を夢見て死に続けた。



 それがようやく成就する。



 例えばナイフで腹を裂き、



 例えば縄で首を吊り、



 例えば車道にその身を投げ出して。



 それでもまだ、死ねなくて。



 故にありとあらゆる死をその身で試した。



 そして、遂に。



 不死にさえ思える肉体が、終わりを告げる。



「ああ、神様、ようやく()を殺してくださるのですね—――」



 否。



 永き歳月を掛けた男の自殺は、この時、終わった。





 その光景を見つめていた二対の瞳があった。



「ああ、なんと悲しき魂だろうか」



「ええ。あんなに傷ついた(こころ)は、わたくしも初めて見ました」



「じゃあ、救わなきゃあならんのう」



「ええ。そうですね」






========================






「ふっざけるなぁあああああああああああああああああ!!!」



 ある場所の、ある深い森で。男は、怒りのままに吠えた。



「なぜ、なぜ、なぜっ!ようやく終わったというのに、また生きなければならないのかぁっ!うぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」



 その咆哮は物悲しく、暗き森に乗り込まれていく。



「ゲギャッ、ゲギャギャッ!」



「グギャグギャ!」



 二体の(ゴブリン)が、男の前へ現れた。彼らを見つめる男の目に、光はなく、男は既に、完成していた。



「ああ、いいさ。()はもう、何にも期待しない。だから、俺が死ぬまで、死合おうか」



 —――但し、最悪の形で。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ