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銀の蜃気楼  作者: トト美咲
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永遠の母〈2〉

辿り着いたら其処でした。ずんずんと、物語を加速させます。

それでは、スタートッ!

 タクト=ハインはふと思う。空間の色がある感情を沸き上がらせる。それはじわりじわりと全身に染み着いて、さらさらと絹の反物が巻き付くような感触を覚える。


【国】で母との再会。会えたと心が踊ったのだろうか? あんなに待ち焦がれていた筈なのに、実際は自身でもぞっとするほど冷静だった。


 掌を拳に変えて、溜息する。故郷に帰れば母は其処に居る。幼い頃と同じ感覚で母と過ごす……。とは、往かない。


 余りにも大切なことが増えた。恐らく、其処を優先にしてしまうだろう。今もそうだった。出会った仲間達と此処で思い出に変えたくない。かといって、其々を自分の身勝手さで踏みとどまらせる事は出来ない。


 アルマとバース……。やっと将来を約束した二人にはこれ以上試練を与えたくない。折角掴んだ幸せを離さないで欲しい。これから先は自分が、いや、あと一人と今迫り来る難関を突破させる。


 ーーロトくんっ! 消えるな。僕がいるから、連れていかれるなーーーー。


「ロトは私の息子……。漸く、母と子の安息の日を手に入れる事が出来たのです。貴方に其れを打ち消す権利はありません」

「……。それは貴女の自己満足ではないのですか? ロトくんは今までどんなに辛い事があっても其れを全て乗り越えていきました。僕だってそうだったから!」

「どうしても私と対峙したいと、言うのですか?」

「【団体】のまやかし……。今までの経緯は、其処にある。空間に引き込んで其れまで培った経験を掻き消す。そして、利用する! しかも、その人物にとってかけがえのない思い出を手段にさせて、心情を操ると!」

「その象が私とでも?」

「一番最低最悪な、ロトくんにとっては残酷だ。ロトくんを翻弄させてまで、何故悪党と手を組んでしまったのか知りたい!」

 タクトは眉を吊り上げ、尚且つ掌に“力”で象らせる剣を握り締めて言う。


「宜しいでしょう。ただし、貴方がこの私に勝つ。負ければ、貴方は私に従う! 覚悟をしなさい」

 青銀の髪とエメラルドグリーンの瞳の女性はタクトにそう言うと、腕に抱く眠るロトを足元に寝かせてゆらりと立ち上がると、腰に装着する武器が納まる鞘から剣を抜き、その刃先をゆっくりと平行に伸ばしていった。


「試合開始の合図はどうしますか?」

「すれば油断を与えます。と、忠告致しましょう」

「なら、僕が先攻をさせて貰います!」

 タクトは身体を蒼く輝かせ、駿足すると手にする“力の剣”を一度前方で垂直に構えて其より“光”を発動させる。


 女性も剣の柄を握り締めて迫るタクトの攻撃を打ち消して空間に“力の光”が飛び散り、それは花火のように咲いていく。


「はあっ!」と、タクトは一度息を吐くと踵に重圧を掛け、空中に飛翔すると左脚を垂直にして後方に旋回する。そして着地すると同時に“力の剣”を縦に振り閃光を轟かせていった。


 ーー防御壁シールド


 女性は迫り来る“光”を“力の壁”で掻き消す。すると、辺り一面に“光の粒”が漂い、その中心よりタクトが加速を増して現れる。


 双方左腕を激突させ、その反動によって弾き飛ばされる。其々の位置で睨み合うと、先にタクトが口を開いていく。


「お名前をまだ訊いてませんでした」

「なら、先に名乗るが礼儀でしょう?」

「タクト=ハイン……。ロトくんとは、最近友達になりました」


 女性の眼差しが柔らかくなる。握り締める剣をじっと見ると、そのまま鞘に納めていった。


「どうされたのですか?」

「私が間違っていました。タクト、貴方を試すような事をしてしまって失礼しました。その言葉に偽りは感じない……。そう、悟ったのです」

 女性はタクトを手招きして、静かに寝息を吹かせるロトの傍に寄せていく。


「ロト、お友達が迎えに来てくれましたよ」

 優しく、甘く。その声に反応するように、ロトの目蓋が開いていく。


「……。タクト、何故だ?」

 ロトは目を丸くして、タクトを見つめる。

「キミのお母さんがたった今言ったこと、聞いてなかったの?」

「母上……。また、離れてしまうのが辛い」

「永遠の別れではありません。また会うと願うだけで十分です」

「何時になるか解りませんよ?」

「貴方が信じる道を歩みなさい。そしてタクト、どうかこの子を宜しくお願いします」

「お名前を……」

 タクトに促されると、女性は笑みを湛える。

「忘れてはいませんよ? 私はグロディア・ミラ・サザン。既にご存じのように、此処にいるロトの母です」

「ロトくんの容姿はお母さん譲りですね? どんなに離れても、其れが道標になるかな? と、ちょっと羨ましいです」

「タクト、何処からそんな言葉が出たのだよ」

「それは流石に内緒だよ、ロトくん」


「こいつめ」と、ロトはタクトの右腕に肘を押し当て笑みを湛える。


「ロト、それにタクト。此れだけはお伝えします。どうか、心静かにしてお聞きなさい」

 グロディアの凛として尚且つ澄みきる声に、ロトとタクトは耳を澄ませる。


「【団体】は今もなお、恐ろしい計画を企て実行に移そうとしております。此のままだと時を刻むだけでなく、宇宙の存在も無くなる。其れだけは、絶対に阻止致しましょう」

「母上も、闘うと言うのですか?」

「ロト、人には魂があります。其処に記憶を含ませて、何度も時を刻む……。かつて経験した記憶を抱いたまま、その時を生きる。辛いこと、喜び満ち溢れた想いを解放したい。と、思考を膨らませることもあるでしょう」

「ロトくん。お母さんが言ってること、キミに当てはまるのでは?」

「黙って聞けっ!タクト」

「私達のこの肉体はその器。なければ自身を象らせることは出来ません【団体】は魂のみの世界を創る……。タクト、貴方が訪れた【国】はテスト段階でしたが、成功させた。次の段階として、ご覧の通りの計画を決行させたのです」


 タクトは記憶を辿らせる。自身が同志と見た【国】での光景とグロディアの述べる事と嫌でも繋げていく。


「そうか、だから【国】のかつての《民》は苦しむ想いをしてしまった。記憶だけで身体が無いなんて、余りにも酷い……」

「俺が【団体】を嗅ぎ付けたが、既に遅かった。それでも、止めなければならないと……。そして、タクト。おまえ達がその真っ只中に現れた」

「繋がった時と世界でキミと会えた。僕にとっては嬉しい出会いだよ」

「何を呑気な事を言うのだ?」

「友達……。心からそう呼べるのはキミだった」


 ロトは目蓋を綴じて、息を静かに吐く。

「仕方ない、本当は直ぐにでもバース達の元に突っ返したいところだが、おまえとこの状況を打ち消していく。いいな?」

「バースさん達は絶対に巻き込ませたくない。だから、わざと振り切ってきた」

「この先引き返せなくなってもだな?」

「ああ、今すぐ行こうよ。ロトくん」


 ーー母上……。


 ーー全てを終わらせる。成し遂げれば、必ず別れが訪れます。タクトとの束の間の〈友情〉を大切にしなさい。


 母と子は“思念波”で会話をしていた。泉の水の如く、こんこんと沸き上がらせる其々の想いを同調させて、確かめ合う。


「タクト、待たせたな。今度こそ、終わらせて始まらせよう!」

「了解っ!」


 ロトとタクト。笑みを湛えながら拳を重ねると、腕を絡ませる。

 その光景に微笑むグロディアは空間に表れる裂け目を見上げると、掌を其処に向けて“青銀の光”を解き放し、道を標していった。

運命は銀色に照らされて、導かれていきます。

果たして、その道は何処に繋がるのでしょうか?

ロトくんとタクト。その行く末を是非見守ってください。

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