繋がる世界
【マグネット天地団】全世界の国家までを手中に治める企業の名称。医療、エネルギー、教育と、様々な部門を手掛けている。表向きには、社会的貢献をアピールするその一方で、極秘に、ある研究を連日連夜、積み重ねていた。
ーーー銀の蜃気楼計画ーーー
時の輪廻を繋ぎ合わせる。其れに加え、別世界の時の流れを引き込む。それは《次空論》を唱えた〈ある学者〉からも、危険と警告されてたものだった。
〈その学者〉の名はシムズと呼ばれていた。だが、それは、愛称。真の名は、明らかにされていない。
空想のような現実。
世界と世界がまさに、くっつく物語が、刻まれていく………。
★○★○★○★○★○★○
“光”のレールに乗り、紅い列車はグリンリバに向けて〈陽の咲く大地〉を駆けていた。車内には《国》での任務を終了させた11名の〈陽光隊〉と【団体】主催の〈育成プロジェクト〉で集われた16名の子供、加えて2名が乗っていた。
「失礼します」と、通信室に、湯気が立ち上る2つのカップをトレイに乗せて持ち込む軍服姿のベージュ色の直毛と瞳の少年が、入室する。
「サンキュー」
その一つを手に取り、一口啜るとテーブルに置き、電子機器のディスプレイの文字を目で追う、少年と同じ色の瞳と頭髪の右側を逆立てる青年がいた。
「バースさん、シムズさんから託されたデータをまた、読まれているのですか?」
「気になる内容があったからな。タクト、この部分、おまえならどう、解釈する?」
バースはディスプレイのある文章を拡大させ、タクトに開示する。
「『大地に眠る月を起こすべからず』そうですね……」
タクトは椅子に腰掛け、腕を組むと怪訝な形相を滲ませていく。
「あのおっさんが、何かを元に記述してる。この大地は《国》以外で彼是と、行われていたのは間違いない」
「【団体】が事業に目をつけたのが《国》だった〈陽〉と同じく〈月〉と関係する《それ》にも踏み込んでいたのでしょうか?」
「胡散臭いけど、此れまでの経緯を辿れば、可能性はある」
バースはそう言うと、電子機器の画面を切り替えする為に、ディスプレイのパネルに指で操作を始めるが、その顔は忽ち、険相を含ませていった。
「どうされたのですか?」と、バースの様子に気付いたタクトは、そう、訊く。
「バグッた。ヤバいな、タイマン呼ぶようだ」
「隊長、俺でも無理だ。余計にこいつが出てきてる」
頬骨が浮き出て、黒髪をひとつ縛りしている隊員、タイマンがお手上げの仕草をさせながら、溜息をする。
「『銀の狼と会え』と『時の輪を裁ち切れ』?此処までくれば、ただのバグじゃない気がします」
タクトのその言葉に、バースは眉を吊り上げる。
「タクト、今、なんて言った?」
「この文字を読んで、率直に述べただけですよ」
「タイマン。おまえは、この画面の文字らしいのは読めるか?」
「解析は出来ないと、ハッキリと言うさ」
因みにバースとタイマンに映る画面は、こう、表示されていた。
●∬∪→∞≠◎△
「あの、僕……」と、タクトは声を詰まらせる。
「何を湿気た顔を剥ける?むしろ、助かったと、礼を言わせて貰う」
バースはそう言うと、タイマンと目を合わせて、タクトの右肩に掌を押し込めながら笑みを湛える。
「また、厄介な事柄に巻き込まれそうだが、誰かが俺達に頼んでいる。さくっと、片付けてやるぞ!」
「バースさん?」
明朗闊達なバースと対照的に、タクトは不安げな感情を滲ませていた。
「タイマン、このメッセージの発信源を特定出来るか?」
「任せな。それなら、得意だ!」
タイマンは、バースの後ろに設置されている探知機を、操作する為に腰を上げ掛けていた。
突如、室内の灯が瞬き、辺り一面が漆黒に染まっていく。
「誰だ!列車のエネルギーを無駄遣いした奴はっ!!?」
「バースさん、僕の耳元で叫ばないで下さい」
「落ち着くんだ、お二人さん。月の磁力が影響しているだけだ!」
そんな事知ったこっちゃねぇっ!!タイマン、緊急時のエネルギーをさっさと解放───。
ざっと、砂が混じる風圧。じわりと、止むと、其までの色は銀に移り行く。
じん、と耳を裂く静寂を含む音。
受け止めたのは、タクトとバース。
「髪、バサボサだぞ」
「僕の髪よりあの人を心配して下さい」
「間一髪だった。危うく、取り残されるところだった」
涙声でバースを硬く両腕で掴む、深紅の軍服を身に纏い、ピンクトルマリン色の緩やかな髪を左耳元でひと縛りにして、凛と、尚且つ、風、薫る声。
「アルマ……。おまえも何かを感知していたのか?」
「恐怖を覚える程にだ」
「僕達を誘い込んだ。その、本人は其処にいる──」
──人聞き悪い言い方だな?時の輪を繋げたのは【団体】勿論、世界も繋がってしまった。
青銀の髪とエメラルドグリーンの瞳。その姿は、タクトと変わらない程の少年。
「ロト、久しぶりだな……」
「積もる話は後回しだ!バース」
「おまえ達は知り合いなのか?」
「……アルマ、それにタクト。今だけは、目の前の現象に集中してくれ」
バースはそう言うと“橙の光”を全身に輝かせていく。
嫌な現実ですね?
ふて腐れるな。
来るぞ!何としてでも、あいつらがこの世界に侵入するのを、食い止めるぞっ!
ざわり、ざわり。
のし、のし、どす、どす。
銀色の空間を引きちぎり、其処より現れる物体。数を増幅させ、その牙を剥出しにさせる。
夢のようなコラボレーション。エピソードを膨らませているうちに、連載にしちゃえ!と、構想致しました。
物語がどのような展開になるのか?其れもハラハラ、ドキドキしてます。
ご意見、ご感想宜しくお願いします。