友達になって!
明日から夏休み。今日登校して、いろんなめんどくさい物もらって(通知表とか)、めんどくさい話(主に校長先生の)聞いたら終わりだ。
空が青い。セミもうるさい。いやー夏ってのはすばらしい。
にこにこしながらひとりで歩いていると、声をかけられた。
「ミカちゃん、おはよっ」
「あ、おはよ。…いや、誰ですか、あなた」
「はじめまして、隣のクラスのアイですっ」
アイさん?
聞いたことないし、話したこともないし。別に舐めたわけでもない。
「何か用すか?」
「あたし、ミカちゃんと友達になりたいと思って!」
ビー フレンド?
ホワーィ?
「や、別にいいけど。何で?」
「いやあたし、あなたに惚れちゃって!」
パードゥン?
「アー…。今のとこ、そういう趣味は無いっていうかー、」
「いーやいや、レズとかじゃないです」
あ、やっぱ? いやーよかった。冷や汗かいちったよ。
「あたしは、あなたの性格に惚れたんです!」
「性格? …思い当たるふしが無いんですがー」
「あなたに無くてもあたしにあります!」
そらそーだ。
「あたしは、一週間前までいじめられていました」
「そ…そうなんですか…」
「それを、あなたが助けてくれたんです!」
全然覚えが無い。
「あなたは、あたしをいじめていた子を全員ノックアウトしてくれました!」
ホワッツ!? してないヨ――――!
「体育の、バレーボールの時間…。あなたの強いサーブを、誰も取れなくて」
あ、そんなことはあったな。
よかった、話がちょっとみえてきて。
「あたし以外の5人は、全員床に沈んでいました」
「ああ…すいませんでした」
「でも、あたしは奇跡的に、あなたのサーブをレシーブできていたのです!」
「うん」
「あなたは、そんなあたしに、なんていったか覚えてますか?」
なんて言ったっけ…。
「普通に、上手いね、って言ったんだと思うけど」
「そうです! その通りです! そして、あたし以外の5人が、あたしをいじめていた子だったんです!」
「…で、何であなたがいじめられなくなったの?」
「その5人は、打倒ミカ! に燃えて、あたしをいじめるどころではなくなったんです」
げっ。
「そんなわけで、あたしはあなたに惚れました!」
「性格関係ないじゃん!」
「あります!」
今の話のどこに性格が関わった?
「それから一週間、あたしはあなたを遠くから見つめていました」
「えぇっ…」
「登下校中はもちろん、授業中も、あなたを見つめていました」
それ、授業離脱だから!
「お弁当の時間も、あなたが宿題をやっているときも、入浴中も!」
「えぇぇえええぇっ! ちょ、それストーカー!」
「その通りです!」
です! じゃね――――よっ!
「その中で、あなたがときおり見せる、あたたかい性格に、あたしは惚れました!」
「あたしなんかした?」
「野良猫ににぼしをやっていました!」
「それは、あたしのおやつが余ったからなんだけど」
「おやつににぼしですか!? 変わってますね!」
いやお前に言われたくないよ。
「まあそんなわけで、惚れましたので、友達になってくれますか」
「……いーけど……」
「よろしくお願いしますっ」
「………よろしくぅ」