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葉隠慎之輔 ショートストーリー  作者: 葉隠慎之輔
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1.独言恋語

男は唐突になにかを思うた

何を思うたかは自分でもわからぬ

しかしとても心が痛むのである

病んでもいない、病をこじらせてもいないのだが

精神も肉体も苦悩で疲れ果て

今にも心が枯れ沈みそうである。まるで蟻地獄。

蟻が外界に助けを求めても誰も助けてはくれず

やがて蜻蛉の幼子に食べられ無になる感覚が続く

【…チッ…タク…チッ…タク…チッ…タク】

時計の秒針の音と共に男の頭をこれがよぎった

「自分とは…正義とはなんだ…愛とはなんなのだ」

男はそれから過去を大いに振り返りながら

それに思い当たる節を探してみた。

すると、どうやら原因が少しずつ、少しずつ

陽が上がる様に思い出してきたらしい。

どうやら…男は今までに正義や愛に

精進しようと努力をしながら苦を見返ることなく

大切なものまでも犠牲にして頑張ってきたのだが

それらが全て泡と化す人生を強いられた。

その時の男の心はいかほどにもつらかったろう…

だから男は、自分に言い聞かせ心の奥深くに

封印していたのだろうがそれが不覚にも

心や精神を盾に痛めつけていたのだ。

病むというより…いや、病むよりたちの悪い

心のリストカットとでもいうべきかな…

実に悪い癖であることはわかりきっているが

どうしても頭から離れないのだ。

そして、泡と化したのは恋愛や友人関係である。

仕事は充分に大成しているのだが俗に言う

一匹狼で自分の種と属さない相手を避けてきた。

訳は簡単で、人間関係は今までに何度も何度も

どんなに頑張っても泡となり消えたからである。

だが…一度そういった男にも昔、寵愛した

たった一人だけの女がいた。

容姿は普通だったが雰囲気が撫子清楚であり

趣味は侍の歴史や新撰組、刀が好きらしい。

しかも処女であり幾分真面目な子だった。

それが化けの皮とも知らずに男は好きになり

今までに見てきた女にはない特別なものを感じた。

すぐに自分の物にしたいと思うようになり

とても可愛がり口下手な世辞で女を捕らえた。

運良くあちらから告白してきたから驚きだった。

男は嬉しさのあまり涙したことは言うまでもない

しかし、幸せは儚いものだったのだ

付き合って二日目にして女はこんなことを言った。

「私、処女捨てちゃった…セフレで試した」と

私は耳を疑ってならなかったと同時に悲しみで

溢れたのだった…確か告白されたときは

「私が愛すのは貴方だけだわ」と告げられたはず

なのにどうして!?…男は女を問い詰めた

「何故?…他の男とsexなんてしたんだ!?」と…

すると女は続いてこんなことを言った。

「sexなんかに愛は無いわ…」

「貴方とは心で繋がってるの」

そのあとすかさず男は怒りぎみに反論した。

何故怒り気味なのかは自分が迫ったときには

拒否されたからである。「まだ早いわよ」と

男は口調を荒くした「俺はセフレ以下かよ!!」

「すぐさまその男を連れてこい殺してやる」

女は慌てはじめこんなことを言った

「あ…あの…ほんとは違うの!!」

「その男は一日1回きりだったから分かんない」

男はますます心に深い傷をおった。

矛盾ほど辛いものはないとその時改めて感じた。

一日1回きりでなにをしたんだ!?と心で

何度も何度も心のリストカットをして

そのセフレとはどういった、どのようにして

知り合った関係なのかも知らない男は、ただただ

悔しくて…疑問で潰されて…辛くて

膝を折って悲しんだ。

もう悲しみで怒りさえ沸かない灰の心だ。

女はただ単に嘘をついていたのはわかりきっている

男は女とその後も我慢しながら寄り添っていたが

日に日に酷くなり最終的には家に他の男を連れ込み

まぐわいをしていた。男はたまたま仕事が

早くに終わり、一目散に女に会いたくて

家に帰った時、部屋をあけた瞬間

その光景が目に写った。男は浮気もせずに

一途に可愛がり続けたというのに

女はその時なにもなかったの様な素振りを見せた。

と、同時に男は失望し、家を飛び出した。

その後、家に戻ることはなくアパートを借りて

生活するようになった。

しかし、女のことが頭から離れないのだ。

今も他の男とsexしているに違いないだろう。

男は女にlineしようとするも見事に

ブロックされていた。我慢ならず手紙を描くも

「貴方とは心だけで充分」

「貴方を汚したくないのわかって…」

「嘘をついた私に愛す資格はもうないかな?」

「貴方と知り合う前に処女終わってたの嘘ついた」

「許して…許して(ノ´∀`*)」

「sexは私にとって水分補給なの」

このように心を冷たく刺す返事しかなかった。

男は悩んだあげく会社の同僚に相談した。

すると同僚はこういった。

「その女はメンヘラじゃないか!!」と

続けて同僚は言う

「その女とは別れて正解だ人生狂うから」

男は幾分すっきりした。いままで同僚に

頼ったこともなければ避けてきたのに物にした

自分が少し得意気な気もしてきた。

だが、簡単に思い出を捨てられる訳でもない

男にとってあの一瞬だけの幸せでも大切な宝なのだ

人生【孤独】でしかなかったこの男にとっては…

「愛とはなんだ…正義とはなんだ…」

糞真面目な男の哀愁がつもりにつもり

男は突然吹っ切れた。灰から火が吹き上がるように

そして…走馬灯のようにこれが駆け巡ったのだった

「もう、正義だの愛だのどうだっていい」

「これからはどうやって楽しく過ごそうか」

「過去は振り返らないと誓おう」

「そうだ人に気を使うのもこれを機にやめようか」

そして最後にこう思った。

自我を剥き出しにして生きる方が余程価値がある

神や仏もそう言うに違いないと…

しかし、同時に思うことは無情に変わる世を作った

神や仏も慈悲ない野郎だなと男は思った。

もう男には仕事しか残ってはいなかったが

神や仏は男にあえてそんな運命をたどらせたに

違いないだろう…理由は個人の価値観の相違に

気付かない愚かな男であることを知らない男には

仕事で人生を謳歌させた方が余程幸せだと

神や仏が感じたのだろう

あの女は女なりに男を愛していたのだが

価値観の相違により合わなかったのだ

男は純情であり尚且つ頑固でもあった。

女とは違い大きな夢もあった。

男はどっちみち夢を選ぶに違いない

女も女でそこに惹かれていたのかもわからない。

男はただただまた心の奥底にこのことを沈みこませ

もらった手紙を読みながら二日で変わってしまった

その女を思いながら世[夜]を更かすのであった。



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