第四十三話 嵐来たる
第四十三話 嵐来たる
続いて台風情報です。大型で非常に強い勢力の台風二十三号は、北北東に進路を変え進行中です。今夜夜半には…。
ラジオから台風情報が流れていた。
「まずいか」
安は雨戸に板を打ち付けていた手を止めた。
「相当風が強いみたいですよ。テレビでも見ましたが、トラックとか横転してるし、信号機がしなってるのや、看板が飛ばされそうな映像も出てましたから」
隣の雨戸で同じ作業をしていた山川が、同じく手を止めて安の方を向いた。
「キリが着いたら、ちょっと休憩にするか」
安が言うと山川も、そうしましょうと相槌を打った。
台風は今晩、で愛の荘上空を直撃・通過するという。風が強く当たるこの場所で五十年耐えてきたのだ。今回も大丈夫とは言えないまでも何とかなるのではないかと、安は思っていた。
「この程度で、いけますかねぇ」
で愛の荘を壁にして腰を下ろし、山川は言った。手には昼食のスナックパン、もう一方には牛乳がある。こんな時の定番だ。
安の手にも同じ物だ。
「やらないよりかはマシだと思うが、実際は分からんな。今まで耐えてきたから大丈夫だとは思うが、今回は丸ごと飛ばされたりして」
二人は声を出して笑った。
本当にいつ飛ばされてもおかしくないボロさである。今どき、木造板張りの造りなんてどこにあるのか。まるでマンガか何かのように、で愛の荘がスポーンと気持よく飛んで行く光景が目に浮かぶ。
そうならないようにと昼前から雨戸を閉め、板を打ち付けていた。被害がないようにと出来るのはその程度だ。
「しかし、月森さんってのは、男を使うのがうまいって言うか、投げっぱなしって言うか、ホント感心しますよ」
山川がイヤイヤ納得するように言った。
安も同じ思いで苦笑いをしつつ、首を横に振る。
もはや言うこともないのだ。
「出来るだけ関わらないようにしてるんだが」
月森は朝、出勤前に安の部屋の戸を叩き、今回の台風対策について聞いてきたのだ。しかし、聞いてきたと言っても、内容はお願いだった。
「安さん、今晩台風来るってニュースで言ってますけど、どうします?私、今から会社なんで出来ないんですけど、ここのやり方知りませんよね。階段の下辺りに木が置いてあるので、雨戸閉めて動かないようにそれを打ち付けるんです。私も早く帰って来られればやりますけど、安さんたち初めてだから、覚えておいた方がいいと思うんです。だからお願いしますね」
そう言って、有無を言わさずお鉢を渡してきたのだった。
「今日俺たちが空いてたから良かったですけど、空いてなかったらどうするつもりだったんですかね」
山川は立ち上がって、ズボンのパンくずを払った。
「山、手伝ってもらってスマンが、あの人はどっちにしても何もしないよ」
安も同じく立ち上がり、空を見上げた。
台風の強さを示すように雲の動きが早い。月森に言われなくても対策はやっておいたほうが良さそうだ。
午前中に一階の窓は月森の言った通り、打ち付け用の板を引っ張り出して全部打ち付けた。次は二階だ。雪の部屋と月森の部屋。あと二部屋…。一体誰が住んでいるのか。
安たちは、雨戸が閉まっているその二部屋を、見えなかった事にした。
二階の雪と月森の部屋が終わった。
山川が脚立から降りてきた。
「安さん。今、雨戸閉めて板打ち付けるときにチラッと見ちゃったんですけど」
「山、待った。そういう事は見ても言わないほうがいいぞ」
安は聞くのが嫌だと言うように、手を上げ顔を背けた。
「はい。そうなんですけど、ちょっとスペインのことわざを言いたくなったんですよ」
「じゃあ、そういう話で聞こうか」
安はチラッと月森の部屋を見上げた。
「スペインでは、美人は部屋がちらかっている、と言うようなことわざがあるんですよね」
「そうか…」
安は深く頷いて続けた。
「でもまぁ、男に比べて女性は化粧道具ってのがあるからな。そういう事にしておこう」
「そうですね。何か女の人って、大変なんだなぁって同情しちゃいますよ」
山川は苦笑交じりに脚立をたたんだ。
安は道具を片付け始めたが、余った板を見て聞いた。
「そうだ、山。裏はどうする?」
「そうか、板がこんなに余っていたのは裏の窓の分でしたか。仕方ないですね。乗りかかった船ですし、やっておきましょう」
二人は道具と板を持った。
裏に回った安が、洗濯機の屋根、水槽池の屋根を見つけて言った。
「あ、この辺どうする」
「何か今回の台風、風が相当強いみたいですから、取っておいたほうが無難ですよね」
山川が作りを調べながら嫌そうに言った。
「あぁ、そうだな。手、掛かりそうだけど、取るかぁ」
安も仕方なさそうに頷いた。
「取った屋根、廊下ですかね…んっ。この洗濯機の上と横につけて紐でしばっておけば、一応の雨よけになりますし、万が一、何かモノがぶつかっても盾になりますよ」
「それだ、山。ナイスアイデア。よし、それで行こう」
面倒くさそうな作業が一変して、面白くなる。二人共ウキウキとして動き出した。
ザザザァー
ゴォォォ
雨だけでなく風まで強くなってきた。
昼間まで穏やかだったのが嘘のように、夕方になると空一面を雲が覆い雨が降ってきたのだ。
夕飯を終えた頃には、外へ出るのもちょっとためらわれるような状態になっていた。
優乃はTVをつけ音量を上げた。風の音でいつもの音量では、声が聞きにくい。
食器を片付けながら聞いていると、台風情報が始まった。
優乃はちらっと画面を見た。
「うわっ。ホント、真夜中に直撃通過ルート。安さんと山川さんが板打ち付けてくれたけど、この、で愛の荘丸ごと飛ばされないかな」
考えることはみんな同じである。
「でも雨漏りは前、私が自分で直したから…心配。えぇいっ。自分に自信を持て。天下の優乃様が初めて自分で直したのよ。どんな台風だって万全よ。そう私の技術力とビギナーズラックで完璧防水」
『『優乃ちゃん、すごいよ。僕の部屋なんて、昨日の台風で窓際なんてべちょべちょになったのに、ここは少しも濡れてない。僕はあの時偉そうに言った自分が恥しいよ。これからは優乃ちゃん、いや、優乃先生に教えを請わせて頂きます』『そんな安さん。急にかしこまって』『いや、優乃ちゃん、俺もそうだよ。優乃ちゃんにこれほどの技術力があるなんて思ってもみなかった。自分の不明を恥じるばかりだ。そうだ、安さん。これからは優乃ちゃん、いえ、優乃先生を講師に迎え、日々生活いろんなことの教えを頂いてはどうでしょう』『山、それだ。優乃先生を頂点、即ち女王とし、我々は女王陛下にかしずくのだ』『賛成です』『優乃様』『優乃様』『わー』』
雨音が人々の歓声に聞こえている。優乃は妄想のバルコニーに出て片手を上げ、人々の声に応えた。両脇には貴族の服を着た安と山川他、数多くの臣下。眼下には広大な広場を埋め尽くした人々が、手を振る優乃を見上げて歓声を投げかけている。
ザザァー
ゴォォォ
歓声と言う名の風雨が暴れている。
ガァン!ビシビシ!ガンガンガン
何かが当たったような音に優乃はビクッと体を震わせ、妄想から覚めた。
『やだっ。ここ本当に大丈夫かな。ぎょぎょっ。何か水、染みてきてる』
優乃は窓際に近寄った。
『危ないかも』
優乃は慌てて、タオルを二・三枚取り出して押し当てた。
ブ・ブゥン
蛍光灯が揺らぎだした。電気が不安定になってきているようだ。
『どうしよう。安さんとか山川さんの所に行ってみようかな。でもちょっと大胆かな。『優乃ちゃん、台風だね。女の人には分からないかもしれないけど、男にとって台風は血が湧き上がるエネルギーを与えてくれる存在なんだよ』『安さん、いつもと目つきが違います。怖いっ』『優乃ちゃん。覚悟は出来ているんだよね』『山川さんまで』『魔神に血を捧げる儀式の生贄になってもらうよ』『キャー』何て事になっちゃったらどうしよ。やっぱりここは矢守さん…ダメだ、雪先生。雪先生のトコ行こ』
優乃は部屋を恐恐出ると、二階に上がり雪の部屋の戸を叩いた。
トントン
叩いてみたが反応がない。
優乃はもう少し強く叩いてみた。
ドンドン
すると中で「何?」「どっか壊れたのっ」と言う声が聞こえた後、ようやく戸が開いた。
「良かった。優乃ちゃんじゃない。壁のどこかに穴が開いたかと思ってびっくりしちゃった」
赤く出来上がった顔で矢守が出迎えた。
部屋の中は酒盛り・宴会会場のようだった。
雪なら台風でも気にせず仕事をしているだろうと思っていたのに、まさか矢守と飲んでいるとは思っても見なかった。
予想外の事に棒立ちになっている優乃を、矢守が「早く」と手を引っ張り一緒にソファに座らせた。
「つっ立つのは男だけ」
分かるような分からないような事を言いながら、矢守は優乃にグラスを渡した。
「何にする?ビール?チューハイ?日本酒?」
「いきなり何ですか。どうして飲み会なんです?」
矢守も雪も何かいつもと違う。矢守は無理に酔っている感じだ。
「怖いから飲んでるに決まってるでしょ。はい。じゃあチューハイね」
矢守はチューハイの缶の蓋を開けて、優乃のグラスに注いだ。
「はい、カンパーイ」
怖さを紛らすように、大声で乾杯だ。
ソファの前の机には、サキイカ、サラミ、ポテトチップス、チーズなど酒のつまみの他、ふ菓子などの駄菓子まで揃っている。
「雪の館にようこそ。今日は騒ぐわよ」
矢守が一人無理矢理なハイテンションで、口が止まらない。
優乃は向かいの雪に聞いてみた。
「雪先生。矢守さんってずっとこうなんですか?」
「そうよ」
一言である。その後が続かない。雪もちびりちびりとグラスに口をつけているが、いつもと様子が違う。緊張というよりおびえている感じだ。
「優乃ちゃん、はい。あーん」
横から矢守が、ふ菓子を差し出してきた。
「今のうちからお口は鍛えておいたほうがいいわよ。この太さはまだお目にかかったことがないけど、この太さに慣れておけばいざっていう時に役に立つわ」
矢守はもう飛ばしまくりである。
「…台風は進路をやや北東に変え、速度を上げて進行中です。暴風圏内の…」
点いているTVから台風情報が流れてきた。
優乃は矢守のノリには付き合わず、ふ菓子を受け取ると、もしゃもしゃ食べながらTVに見入った。
「うわっ。まともに進行方向ですね。朝には通過してるみたいですけど、ちょっと車横転って…キャー木折れてる。電柱がしなってますよ。あれがしなるってどういう事ですかっ」
ビュゥゥ
ゴォォォ
カン
ガーン
ザァー
ザザァー
段々、風も雨も強くなってきた。いろんな物が飛ばされてきているようだ。もしかしたら、で愛の荘に生えている木も相当しなっているのかも知れない。
ゴロゴロゴロゴロ…
雷まで鳴ってきた。
すると今まで静かだった雪が、急にグラスをあおった。
「飲むわよっ」
「ええ?雪先生、急にどうしたんですか」
優乃は驚いて聞いた。
「どうもこうもないの。恵ちゃん、注いで」
雪は勢いよく空のグラスを矢守に突き出した。
「雪先生、ようやく本気出してきたわね。よーし、私も飲むわー」
矢守は嬉しそうに日本酒を雪のグラスに注いだ。
ゴロゴロゴゴォ
ザザザァー
「テレビの音大きくしてっ」
雪が叫ぶように言ってきた。
「あのー、もしかして雪先生って雷怖いんですか?」
優乃が気が立っているような雪に、恐る恐る聞いた。
「怖くないわよっ。怖いのは台風よっ」
「へっ?」
優乃は間の抜けた声を出した。
雷が怖いというなら分かる。だが台風が怖いというのはちょっと分からない。
優乃がぽかんとしていると、雪はまたグラスをあおって言った。
「あのねぇ、台風よ、台風。雨も風も雷もみんな一つになって来るのよ。一つ一つも怖いけど、いいの。だけど三つ重なるって、どういう事。もう何が起こったっておかしくないじゃない。この、で愛の荘だって吹き飛ぶかもしれないんだから。本当だったらダンベルでも買い占めて重しにしたいくらいよ」
やっぱりよく分からないが、台風が嫌いと言うことは分かった。
「雪先生、昔台風で何かあったんですか?」
何かありそうだ。優乃は好奇心がくすぐられた。
「あったも何も、教えてあげるわ。あれは中学生の頃よ」
雪は怒りと怖さが入り混じった調子で、語りはじめた。
「台風が直撃した時があったの。真昼間によ。今日みたいに雨も風も強くて、派手にゴロゴロ鳴ってたわ。私、面白いって家の中でワクワクしてたのよ」
今の状態とはまったくの反対だ。それがどうなったのか。
矢守も赤い顔に目を輝かせて、耳を傾ける。
「それで何を思ったんだか、こんな台風は二度とない。体験しなきゃって傘持って、家を出たの。そうしたら昼間なのに誰もいないのよ。車なんてほとんど走ってなかった。人気もなくて、木もビュンビュンうなってて。雷の音がどんな大ボリュームよりも大きくて、台風ってすごいって感動したわ。それぐらい危ない台風だったのにホント、馬鹿。風がぐるぐる回って吹くから傘、両手でしっかり持ってても飛ばされそうなのに」
雪はそこまで言うと、突然ふ菓子を三本立て続けに、詰め込んで食べた。
「もうこんな勢いよ」
「さっぱり分からないけど、分かったわ」
矢守が優乃の気持ちも代弁してくれた。
「とにかく」
雪はそう言って、お酒で口をすすいだ。
「その当時の私は『わー、すごーい』って叫びながら、しばらく外にいたわ。そうこうするうちに傘の骨は折れるわ、雨でベチャベチャに濡れてくるわで帰ろうって思ったの。そしたら近くの木がメシッって音を立てて、太い枝が折れてきたのよ。びっくりして逃げようって思ったら、傘が飛ばされちゃって次の瞬間に何かがゴンッって後頭部に当たったの」
「大丈夫だったんですか。雪先生」
優乃は心配になって聞いた。
「今、生きてるんだから大丈夫に決まってるでしょ」
矢守が雪に変わって答えた。
「それでどうなったんですか?」
ドキドキしながら優乃は聞いた。
「それっきりよ。私、気を失って道路に倒れてたらしいわ」
雪は語り終わったように、ふーっと息を吐いた。
ここからが面白そうな所だ。矢守がその先をと、雪をせっついた。
「ここから先は思い出したくもないのよね」
そんな事言わずにと、二人はお酒を注ぎ、新しくつまみの袋も開けつつ、話を聴きだした。
「気が付いたら、病院だった。たまたま車で通りかかった人が一一九番に通報してくれて、助けてもらったの」
「へー、良かったじゃないですか」
嫌な思い出といっても、大した事なかったではないか。優乃は軽い気持ちで言った。
「問題はここからよ」
雪の物語は、まだ終わっていなかった。
「病院で目を覚したのはいいけど、低体温で肺炎になりかかって、頭の方は少し切っただけだったけど様子みたいって合わせ技で一週間入院よ。すぐに親が飛んで来て泣かれたわ。どうして家にいなかったのか、大丈夫だったかって。だから台風体験してみたかったって正直に言ったら、とたんに思いっきりど叱られたわ。そりゃそうよね。あんな危険な時に外に出るバカなんだから。医者もそれ聞いたら、君は中学生にもなってそんな事するのかとあきれるやら、馬鹿にするやら、看護師も裏で私のこと笑ってたし。退院して学校行ったら全校集会で校長のバカが『この学校で台風の日に外に出て、怪我して入院した者がいる』って言うのよ。私しかいないじゃない。いい笑いモンだったわ。もうそれ以来、台風が来ると怖いし、嫌いなの。分かった」
雪の長い物語が終わった。
それだけ痛くて、寒くて、苦しくて、イヤな思いもすれば嫌いにもなるしトラウマにもなるというものだ。だが今の優乃、矢守には、絶好の話のサカナだった。
「頭のどこに当たったんですか」「嫌味な校長って…」と、これだとばかりに盛り上がる。
「このまま朝まで行くわよー」
いつの間にか台風の事など忘れて、雪の部屋はただの宴会と化していった。
ビヒュー
ビシビシッ
ガンッガガーンッ
ミシミシ
風の音に混じって、木がきしむような音が聞こえた。
『おい、大丈夫か』
安は不安な面持ちで耳を澄ませた。
雨戸がずっとガタガタ鳴っている。日のあるうちに板で補強しておいて良かった。やらなくても大丈夫だと思ってやっていなければ、雨戸が飛ばされていたかも知れない。庭に出て様子を見たいが、風が強くてとても出られそうにない。開けたが最後、入り口の戸が飛ばされそうな風の音だ。何も出来ることはないのだが、落ち着いて寝るどころではない。布団に入ってはいたが、電気をつけたまま安は眠れなかった。
一方、山川も同じだった。
TVの天気図では今まさに直撃・通過していると言っている。ここ数時間さえ乗り切れば大丈夫だ。だが部屋のみならず、あちこちから聞こえる音が気を休ませてはくれない。
ビヒョォォ
ミシッ
メリメリッ
ビキッ
風雨に混じって、どこかが割れるような音がした。
ガンッ
ガタタタッ
バァーンッ
バリーン
何かが剥がされたような音に続いて、ガラスの割れる音がした。
『近いっ』
山川は思わず立ち上がった。
さらに風が強まってきたようだ。で愛の荘自体が小刻みに震える。幸いにして、山川の部屋に被害はない。しかし、様子を見に外に出ることなど自殺行為に思える。
山川は不安なまま腰を下ろした。
ドンッ
ガラガララーッ
鈍い振動が一つしたかと思うと、瓦だろうと思われるものがぶつかり合う音がした。
『うわっ。ホントに大丈夫かよっ』
山川はますます心配になりながら、夜を過ごした。
翌朝はまさに台風一過の澄み渡ったいい天気になった。
死屍累々の雪たちとは反対に、安と山川はあくびを交えつつ部屋で会議だった。
「夜中にやばそうな音がしたんで、心配だったんですよ」
「まさかなぁ。あれ直せと言われても出来んぞ」
「そりゃ、業者呼ぶでしょうけど、直す価値がここにあるかどうかですよ」
「そこだな。こっちには価値があっても、大家が認めなければなぁ」
「そうですよ」
山川は視線を落として考え込んだ。
台風は、で愛の荘にクッキリと爪痕を残して去っていった。だが築五十年にしては被害が小さかったと言えるかもしれない。木の持っている強さのおかげと言っていいのだろう。しかし問題はそこではなく、被害の箇所をどうするかであった。
「ま、いい。とにかく今日中に打ち付けた板外して、裏のテントとかも戻しておくよ。山はバイト行ってこいよ。もう時間だろ」
安は時計を見ていった。
「はい、すみません。出来たら早く帰ってきますけど、あとお願いします」
山川は頭を下げ、足早に安の部屋を出ていった。
残った安は脇においてあった工具を持つと、どうするかとうなりつつ外に出た。
庭は台風の影響で、いろんな物があちこちに散らばっていた。
『これもあとでまとめて捨てないといかんな』
安が視線を上げると、見慣れない男性の二人組が、で愛の荘入り口の上の屋根を見上げていた。
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
次回予告
台風が、で愛の荘に残した爪跡
二人の男性
二つの出来事が、新しい出会いを起こしました
「東さんっ」
「梅田です」
この二人は一体何者なの?
今まで隠れていたあの部屋の存在が、やっと出てきました
何だか期待しちゃうな
いい人だといいけど
「いやー、ひどいもんよ」
「遠回しに結婚のアピールじゃないの」
「どうして誰も直さないのっ」
「じゃ、ボクとやってみませんか」
次回第四十四話 台風一過で全員集合
全員集合なんて、初めてですね




