第十三話 ピンクでマジック 中編
第十三話 ピンクでマジック 中編
冬美は無表情のまま言った。
「安さん、パンツ好きなんですか」
安はハイともイイエとも言えず、苦し紛れに言った。
「いや、これはそう言う訳じゃなくて」
「安さんも男ですからね」
冬美の淡々とした調子が、かえって安の胸にグサリと刺さる。
何も言えず苦しんでいる安を見ながら、冬美は部屋に上がると声を落として言った。
「大丈夫です。私話しませんから。安さんが恋人連れ込んでたなんて」
冬美はすっと座って続けた。
「でも、よく優乃にバレませんでしたね」
安は違うと言いたかったが、ここで言い訳すれば更に自分の立場があやしくなりそうだった。
うんうんうなっている安とは対照的に、冬美はどんどん静かに沈みがちになった。
「あの、今まで、安さんや雪先生に相談に乗ってもらってましたけど、結局、別れることになって」
冬美の目が赤くなってきた。
安はハッとして冬美を見つめた。
「それで明日、最後に会うんですけど、私がふられたじゃ格好がつかないから、安さん、一緒に行って、新しい彼氏ってことにして欲しいんです。だから…、お願いします」
冬美はがばっと安に抱きついた。
安の鼓動がまた早くなった。抱きしめていいのか、どうなのか。冬美の肩の辺りで手がうろうろしている。
「さっきのこと、優乃に秘密にしてあげますから、明日…」
冬美がおどしながらもう一度「お願い」と顔を上げた時、バランスが崩れて安と一緒に倒れてしまった。
「キャッ」
冬美は思わず大きな声を出した。
隣の部屋で、優乃がその悲鳴に気付いた。
あれ、冬美の声?そう言えば冬美、今日来るって言ってたけど。そうだ。こう言う時はスパイ大作戦だわ。
優乃はグラスを取ると、安側の壁にそそっと近寄り、グラスの口を壁に付け、耳を底に当てた。
「付き合って下さい」
冬美は安の顔を覗き込みながら言った。
どう考えても拒否する訳にはいかず、安はゆっくりと頷いた。
「いいよ」
優乃はガバッと壁から離れた。
嘘。冬美、安さんに「付き合って下さい」って言った。安さんも「いいよ」って。どうして。冬美も安さんも付き合ってる人いるのに。もしかして安さん、二股?じゃあ今日、冬美が来るって言ってたのは、私に安さんとの恋人宣言をするため?ちょっと安さんヒドイっ。でもそっちがその気なら、こっちも安さんに付き合って下さいって言って、三股させてやる。そうすれば隣同士の強みで、冬美になんて負けないんだから。冬美泣かないでね。
「でもこの体勢はちょっと」
安は恥ずかしげに横を向いた。
冬美が安を襲っているような格好だ。
「あ、ごめんなさい」
冬美も顔を赤くして、さっと安から体を離した。
その時、外から誰かの怒っている声が聞こえてきた。
「もーどうなってるのよこれ。ちょっとー。動かないじゃないの。誰か来てっ」
渡りに舟と、安は冬美を山川の部屋にと、連れ出した。
「山、いるか。すまん」
戸を開け、冬美の背中を押して、山川の部屋に入れる。
「あら安さんと…、冬美ちゃん」
冬美の所だけトーンが下がる山川。
「山、すまん。すぐ戻ってくるから、冬美ちゃんよろしく」
安はそう言って、強引に冬美を山川に預け、外に出た。
外では月森がピーピー鳴っている洗濯機を相手に、デタラメにボタンをボチボチ押していた。
「あら、安さん。この洗濯機壊れてるんじゃない。全然動かないのよ。後、脱水だけなのに」
今にも洗濯機に蹴りの一発でも食らわせかねない感じだ。
安はちょっと失礼と言って、洗濯機の表示を見た。『E05』と出ている。
昨日、取扱い説明書を読んだばかりだ。安はもう一度失礼と言って、洗濯機の蓋をガバッと開けた。
「見ちゃダメッ」
月森はとっさに手を上げた。
「えっ?」っと振り返った安の頬に、パーンッと月森の平手打ちが決まった。
「何するんだっ」とばかりに、安は反射的に月森の両手首をガッと握り、で愛の荘の壁にドンッと強く押しつけた。
『冬美に負けないんだから』と安を追っかけて出てきた優乃は、その瞬間をハッキリと見てしまった。
優乃は、がばっと体を戻して隠れながら考えた。
安さん、月森さんって人と、どういう関係?今のって修羅場って奴?じゃあ、月森さんとも付き合ってたって事?え、安さん三股?雪先生も入れて四股?私入れたら、本当は何股になるの?安さんて実はすごくタラシで、みんなをもてあそんでいるとか。冬美が前言ったみたいに、色んな所で女作ってるの?
優乃のドキドキは止まらない。
ヒドイっ!安さん、ヒドイっ。こうなったら私が安さんと付き合って、安さんをまともな人にしてあげなきゃ。
「ご、ごめん。つい」
安は謝った。
「いえ、私もいきなり叩いちゃってごめんなさい。でも洗濯機の蓋を、急に開けられたから…。あの、早く離して下さい」
月森は手首をつかんでいる安に、膝蹴りをしようとした。
安は素早く自分の左膝を月森の左膝の外側に入れ、それをかわした。月森から用心しながら離れて安は言った。
「そう言うことは止めて下さい。こっちも痛い目はみたくないし」
「あ、ごめんなさい。ついクセで」
クセって何だ。いつもやってるのか。悪びれてないところが手に負えんな。
安はそう思いながら、月森に言った。
「蓋の裏にこのエラーコードの意味が載ってるから、確認したいだけです。中は見ないようにしますから」
「本当ですね。約束ですよ」
月森は強い調子で言った。
「はい」
何でこんな風に怒られなきゃいかんのだ。
安はそう思いなから蓋を開けて、その裏のコード表を確認した。『E05』は『エラーコード 05』『原因 洗濯物が片寄っています』、とあった。
安は蓋を閉める時、チラッと洗濯槽の中を見た。派手な色の光沢のある下着が見えた。
何気なく蓋を閉めて、安は思った。
結構、派手な色の下着してるんだ。いや、そうじゃなくて、あのピンクのパンツはこの色からすれば、月森さんのではないな。
蓋を閉め、洗濯機から離れて安は言った。
「これは洗濯物が片寄ってるから、動かないんですよ。洗濯物を均等にバラしてからもう一度やってみて下さい」
取扱い説明書読めよ、と安は思った。
「あ、そうなの。やってみるわ」
月森は顔を少し赤らめながら蓋を上げて、手で洗濯物をバラし、ボタンを押した。
今度はエラーも出ずに、洗濯機は動き出した。
「ありがとう、安さん。でも手首痛かった」
大げさに手首をさすりながら、月森は言った。
ようやく胸のドキドキが収まってきた優乃は、その後どうなったのかと、入り口角まで動いて、聞き耳を立てた。
「お詫びに、今度ごちそうして」
月森は上目使いに安を見た。
お前が仕掛けてきたんだろ。お詫びとかお礼はこっちがして欲しいくらいだ。
と、思いながらも安は笑って答えた。
「見ての通り貧乏なんで、高い所には連れて行けませんけど、いいですか」
「いいわ。安さんが連れて行ってくれる所なら」
月森は満足そうだ。
やってられん。こう言うのが、こいつの手か?
月森を心で「こいつ」扱いしながら、安は言った。
「それじゃ、また日にち合わせて行きましょう。僕はこれで失礼しますね」
「はい。待ってます」
安が戻ってくる様子に、優乃はあわてて部屋に戻った。
安さん、月森さん誘った。修羅場じゃなかったの?別れる所かと思ってたのに、どうなってるの。あっ、安さん、私にヤキモチ焼かせようとしてるんだ。そうか、そうだ。色んな所に手を出しておけば、私に気付かれやすいと思って、無理に手を出してるんだ。もう、回りくどいんだから。そんなに無理しなくても、私がちゃんと付き合って真人間にしてあげるから。
むしろ先に真人間になって欲しい、バラ色妄想の優乃であった。
隣の部屋では山川が冬美を扱いかねていた。沈んだ様子でいつもの勢いがない。山川は色んな話題を振ってみたが、冬美はどれも食いついてこなかった。
「…」
山川もとうとう困ってしまった。安に頼むと言われたが、何も話してくれないのではどうしようもない。
冬美も山川が気を使ってくれているのは分かっていたが、訳の分からない雑学ばかり披露してくるので、むしろ腹が立っていた。
何なのよこの人。私がこんな気持ちなのに、なんで新幹線のひかりとこだまの違いの話が出たり、H鋼の話が出るのよっ。だいたいH鋼って何なの。次は日本人形について?知らないわよっ、もう。
何も話に乗ってこない冬美に、山川はとうとうたまりかねてぼそっと言った。
「ねぇ、どうしたの」
山川自身が本当に困っていた。あまりにも実感のこもった言葉に、冬美はついポロポロッと涙をこぼしてしまった。
「う、うんっ、だ、だって…」
冬美はその場に突っ伏して、声を上げて泣き出した。
な、何?どうしたの?
優乃が部屋に戻るなり、隣の山川の部屋から、冬美の泣き声が聞こえてきた。
分かったわ冬美。山川さんに安さんは諦めろって言われたのね。そうじゃなきゃ、あの冬美が泣く訳ないもん。私と同じね、冬美。いいわ、今日だけ一緒に泣いてあげる。今夜は一緒に飲んで、安さんの事忘れるの。でも私は諦めないから。冬美、残念ね。女わね、あきらめちゃダメなのよ。『そうなの、優乃』『そうよ、冬美。私はあの月森って女の人にも負けないんだから』『優乃、素敵。お願い今日だけでいいの。私に安さんの事、忘れさせて』『いいわ。これでいい?』『うん、優乃の体、柔らかい。ねぇ、唇いい?』『あっ、だめよ冬美っ。この唇は…』。キャーッ、何考えてるの私。そんな趣味ない筈なのに。
何でこっちが食事に連れていかなきゃいかんのだ。
安は半ば収まらないような気持ちで、部屋に戻った。
通路に冬美の泣き声が漏れてきていたが、安は『山、すまん』、と心の中で謝ると、自分の部屋に入っていった。
残るは雪と矢守か…。
安は深く息を吐いた。
雪から先に行くか、矢守から先に行くか…。雪のではないと分かってはいるが。
冬美はひとしきり泣くと、涙を拭いて顔を上げた。思いっきり泣いたお陰で、気分がすっきりしていた。
「山川さん、ごめんね。ありがと」
冬美はとまどっている山川にウインクをして、部屋を出て行った。
冬美のウインクに、真っ赤な顔をしてドキドキする山川であった。
冬美は優乃の部屋には寄らず、安の部屋に立ち寄った。
「安さん」
冬美は戸を開けた。
中では腕を組んで悩んでいる安がいた。
「安さんっ」
冬美はもう一度強く呼んだ。
「えっ?何」
安はあれっと顔を上げた。
「冬美ちゃん、いつから」
間の抜けた質問だ。
「今来たばかりです」
冬美はあきれた。
「私、今日帰りますから、明日十一時にお願いしますね」
冬美は町の中心の駅の改札で待ち合わせです、と言った。
安があぁと気の抜けた返事をすると、冬美はもう一度お願いしますね、と念を押して帰って行った。
それよりも、問題は矢守の所だ。よしっ。最初に雪の所に行って練習だ。
安は意を決して部屋を出た。
トントン
安は二階に上がると、雪の部屋を叩いた。
「誰」
雪が無愛想に戸を開けて出てきた。
「安じゃない。何」
安は自分でも意外な事に、口からさらっとパンツの話が出た。
「僕の洗濯物の中に、女物のパンツが混ざっててな。ピンクの物なんだけど、お前のかなって思って」
そうか、最初からこうやって聞けば良かったんだ。
安は妙に意識するからダメなんだ、と一人納得した。
「私、そんな子供っぽい色のパンツ持ってないわ。ベージュとかグレーよ」
雪も意識してないのか、それとも安を男として見てないのか、平然と下着の話をしてきた。
安も雪に同調する。
「そうか、ちょっと困っててさ」
「そうよね。大の男が女物のパンツ持ってるなんて、おかしいものね」
「持ちたくて持った訳じゃないって。いいんだ、一応誰の物か見当もつけてるし、念のため確認に来ただけだから。ありがと」
安はふっと気を楽にして、階段を降りていった。
この調子で矢守に聞いて、最後に優乃ちゃんに渡せばいいんだな。
最初から直接優乃の所に行けばいいものを、安の思考もかなりおかしくなっている。
あいつ、一人で全員に聞く気かしら。私にでも頼めばいいのに。バカね。
頼まれてもやる気がないのに、雪は思った。
安は部屋に戻ると、まず昼食をとった。
腹ごしらえをしていかんとな。
すでに意識している時点で負けているようななものだ。しかし安の中では、矢守が最後の山のようなものだった。おそらく下着の説明をした時点で何かしてくるのは間違いない。迫ってくる分には何とでもなるが、これを弱みとつけ込んで来るかも知れない。そうなっては安としては困ることになるに違いない。
安の考えは意識しないで行こうから、強気で押して行こうに変わっていた。
昼食を食べ終えて、よしっと気合いを入れる。安は矢守の部屋に行くと、戸を叩いた。
コンコン
「矢守、矢守」
しばらく待ってみたが、部屋から返事は返って来なかった。さらに二度三度叩いて呼んでみたが、物音すらしなかった。
まずいぞ。
安は考えた。
矢守で確認を取って、その勢いで優乃の所に行く予定であった。それがいきなり途切れてしまっては、計画が水の泡だ。万が一ここで優乃にバッタリ会ってしまっては、パンツの事を聞かなければ後々不自然になってしまう。一時退却。急がば回れだ。
安は自室に戻って矢守を待つことにした。
夕方。矢守の返ってきた様子に気付いた安は、早速気合いを入れて、矢守の部屋に行った。
コンコン
戸の音に、中から「いいわよー」と返事が返ってきた。
「あら、安さん」
誰かと会っていたのか、いつもよりしっかりした化粧に、格好のいい服を着た矢守が言った。
「矢守、どこか行ってたのか」
安は部屋にはいると自分を落ち着かせるため、まず世間話から入っていった。
「今度、雑誌にマンガ載せてもらうことになったの。連載じゃないんだけど、その打ち合わせよ。でもなぁに、安さんが私の部屋に来るなんて、めずらしい。私に会いたくなったの?」
矢守は人差し指を下唇に当て、流し目をしながら安に迫ってきた。
「何やってんだ。今日は聞きたいことがあって来たんだ」
安の声にいつものような勢いはなく、すでに上ずりかけている。
「実は、女物のピンクのパンツを持っているんだが、誰の物か捜しているんだ。お前ってピンクのパンツ持ってないか」
誤解されそうな言い方だったが、安は気付いていない。
矢守はいつもと違う緊張した安の様子に、悪ノリを始めた。
「あら、安さん。私の下着見たいんだ。いいわよ、待ってて。今ここで、着替えてあげる」
すっとスカートをまくり上げる。
安は慌てて、矢守の手を握って止めた。
「止めろって。違う。そうじゃない。ないならいいんだ。うん」
「あら安さん嬉しい。私の手を握ってくれるなんて」
すっと顔を寄せてくる。
安は逃げるように後ろに下がった。
「もう」
矢守は怒ったフリを見せながらも、心の中では可愛いと思っていた。
「また来るっ」
安は立ち上がって、部屋から出ようとしが、
「私、ピンクの持ってるわよ」
の声に、立ち止まった。
「何だ、あれお前のか。優乃ちゃんのかと思ったよ」
安はほっとしながら、振り返った。
一言多かった安の言葉に、矢守はすぐにくるくるっと頭を働かせた。
「安さん、今それ持ってる?見せてくれない」
「あっ、あぁ、部屋に置いて…」
安は言いかけて思い出した。朝、冬美が来た時に、パンツをズボンのポケットに入れてそのままだ。安はこわごわポケットを探った。
「…!」
やはり、あった。ポケットの中で、すでに半分乾いている。
「矢守、すまん」
安は謝りながら、パンツを取り出して見せた。
矢守はクスクスッと笑いながら言った。
「あんっ。かわいいパンツね。でも、私のじゃないわ」
「お前、持ってるって」
安は動揺した。
「私もピンク色は持ってるって言っただけでしょ。大切にポケットなんかに入れて、もう安さんったら、イヤらしい」
矢守はさらに安を動揺させて続けた。
「いいわ。私が優乃ちゃんに、それとなく聞いてきてあげる」
白黒していた安の顔が、パァッと明るくなった。
「その代わり、来週から一週間、夜付き合って欲しいの」
「断る」
動揺していた筈の安が、間髪入れず拒否した。
「んもう。どうしてそこで断るのよ。今、うんって言うかと思ったのに。でもそんな所も素敵」
矢守は小憎らしげに安を見たが、続けておどすように言った。
「じゃあ、自分で聞いてくる?優乃ちゃんのことだから、どんな風に聞いても泣き出しちゃうけど、それでいいんだ。年頃の女の子ってデリケートなの知ってるでしょ。頑張ってね。フォローはしないから」
矢守の突き放した態度に、安は慌てた。安に限らず男は女の涙に弱い。そう何度も泣かれたくはない。だいだいどうして下着の事を聞いただけで泣くのか訳が分からない。それでも矢守に優乃ちゃん泣くわよと言われれば、確かにそんな気もしてくる。安は泣く泣く矢守に頼むことにした。
「あ、いや、そう言わずに頼む」
「じゃ、来週夜付き合う?」
「何するんだ」
安は折れた。何するか聞くと言うことは、半分了解したも同然だ。
「聞くのはナシ。付き合うの?どうするの」
矢守は楽しくって仕方がない。こんな安は滅多に見られない。安の悩んでいる様子がまた可愛い。
これはこれで一つのプレイね。
矢守は密かに喜んだ。
どうしても優乃に聞きに行けなくて、優乃の順番を最後に回したのだ。矢守が聞いてくれるなら、それはありがたい。しかし、夜のつき合いとなると…。
安は散々迷ったあげく、なるようになれと矢守に言った。
「分かった。来週付き合う。だから優乃ちゃんの方、よろしく頼む」
矢守はニッコリ笑って言った。
「約束よ。でもそのしわくちゃのパンツ、もう一回洗って、しわ伸ばしてよ。そんなんじゃかわいそうじゃない」
矢守に言われ、安は手にしていたパンツを丁寧にたたむと、やはりポケットに入れた。
「乾いたら、袋か何かに入れて、優乃ちゃんの所に返しに行ってね。ちゃんと話つけておくから」
矢守はそう言いながら、密かに思った。
いろいろ尾ひれつけちゃおう。
安を先に部屋に帰し、矢守は着替えると優乃の部屋に行った。
「ゆーのちゃん、いる」
軽く戸を叩くと、中から優乃が出てきた。
「あ、矢守さん、こんばんは。珍しいですね」
矢守が部屋に来たのは初めてだ。優乃はちょっとびっくりした。
矢守も挨拶を返して「ちょっといいかな」、と言い淀む様子を見せた。
「どうぞ」
優乃はそう言って、矢守を中に通した。
一体何の用だろうと思っていると、矢守は声を落として話し始めた。
「あのね、大きい声じゃ言えないけど、安さんがね」
★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★
次回予告
矢守がただで終わらせる訳はない
パンツ騒動もようやく終わりと思ったら
もう一波乱
洗濯機講習会の途中、安が冬美とデートに?
代わりに山川が?
「安さん前、殴ってでも止めてくれって言いましたよね」
優乃の頬をつたう涙
「私、いいですから。気にしてません」
その光る瞳に、戸惑う安
「もう終わったことだから…」
「もー何なの、あの山川って男」
山川と冬美の結末は?
次回第十四話 ピンクでマジック 後編
安さんったら、照れちゃって




