ハーレム勇者「愛の力ってすごい」
異世界に召喚された俺は、すぐさま俺を召喚した少女と目が合った。
その瞬間、その少女は「ずっきゅううううううん!」と叫んだかと思うと、俺の虜になった。
甘い声音で擦り寄ってくる少女に俺が困惑していると、兵士(男)に謁見の間へと引きずられていった。
何が何だか分からないまま国王の前に引きずり出された俺は、魔王討伐を命じられた。
国王様の頼みとあっては断れない。
俺は喜んで引き受けた。
戦士(男)・僧侶(男)・魔法使い(マッチョ)が俺の仲間として選ばれた。
三人とも凄腕らしく、英雄と呼ばれるような存在だという。
しかも、俺を魔王城まで護衛してくれるらしい。
それなら安心だ。
そう思ったのも束の間、王女様と目が合った。
王女様は「ずっきゅううううううん!」と叫ぶと、俺達の旅に同行すると言い出したのだ。
しかも、やけに熱っぽい視線を向けてくる。
王様や仲間三人の反対を押し切って、旅に同行する事となった。
それどころか、仲間の三人を解雇してしまった。
「魔王城まで二人旅。二人っきりですわ!」とか言ってくるけど、冗談じゃなかった。
取り敢えずその日は休むこととなり、客人用の部屋へと案内された。
案内の途中に王宮の女騎士や、侍女と目が合った。
目が合った全員が「ずっきゅううううううん!」と叫んでいた。
どうやら、目が合った女は全員、俺の虜になるらしい。
どうしてこんな能力が?
異世界召喚の影響だろうか?
一日目のハーレムメンバー
人間:41
勇者のお披露目として、パレードが行われた。
出来るだけ女の人と目を合わせないように努力したのだが、やはり「ずっきゅううううううん!」という叫びがかなり聞こえた。
四歳くらいの幼女や、七十を超えているであろうお婆さんにすら、熱の籠った眼差しを向けられた。
俺はロリコンではないし、熟女好きでも、ババ專でも無い。
俺にはこの能力がとても恐ろしく感じられた。
まあどうせ、明日からは魔王討伐の旅だ。
人と出会う事は少ない。
きっと何とかなるだろう。
二日目のハーレムメンバー
人間:9678
なぜか俺のハーレムメンバー(人間:9678)が、魔王討伐の旅に着いて来る事となった。
王都の周りにはゴブリンが大量発生しているらしい。
お婆さんとかは大丈夫なのだろうか。
そう思って視線を向ければ、「全ては勇者様のために! ずっきゅううううううん!」と叫びながらゴブリンを嬲り殺しにしていた。
スプラッターなお婆さんだ。
これが愛の力というヤツだろうか。
どうやら問題なさそうだと視線を前に向けると、ゴブリン(メス)と目が合った。
「ゴブゴブ……ずっきゅううううううん!」
「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
三日目のハーレムメンバー:
人間:9678
ゴブリン:1465
次はオークの出現する草原だ。
またしても「ずっきゅううううううん!」を聞くハメになろうのだろうか。
そう考えると気が重いが、進むしかない。
だって、後ろからゴブリンが血走った目でこちらを凝視してくるのだ。
貞操の危機を感じた。
それに、世界を救った暁には、俺はあの人と結婚しようと心に決めて……いや、今はやめておこう。
そんな考えに耽っていた俺は、前方のオーク(メス)に気が付かなかった。
「ブヒブ……メスブタと罵って下さいブヒィィィィィィィ!」
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
四日目のハーレムメンバー
人間:9678
ゴブリン:2783
オーク:843
・
・
・
異世界に来てから十二日が経過した。
愛の力とは凄まじいもので、俺の仲間の数は増加の一途を辿っていた。
特にゴブリンが。
十二日目のハーレムメンバー
人間: 9678
ゴブリン: 1473984023
オーク: 876323
スライム: 769021
ゾンビ: 14354
スケルトン: 12381
オーガ: 8767
トロル: 7982
グレムリン: 1818
リザードマン:1075
ドラゴン: 469
翌日、魔王城にたどり着いた。
俺のハーレムメンバーは、その圧倒的な物量差をもって、魔王を滅ぼした。
愛の力のおかげだ。
こうして、世界は救われたのだった。
十三日目のハーレムメンバー
人間: 9678
ゴブリン: 4739840235
オーク: 876323
スライム: 769021
ゾンビ: 14354
スケルトン: 12381
オーガ: 8767
トロル: 7982
グレムリン: 1818
リザードマン:1075
ドラゴン: 469
四天王: 4
「勇者様! 私と結婚して下さいゴブ!」
「いいえ! 私とゴブ!」
「何を言ってるの! 勇者様は私が好きなのゴブ!」
世界に再び平和が訪れた。
誰が俺と結婚するかで、ハーレムメンバーが争っているが、俺には関係ない話だ。
あの人と結婚すると、既に心に決めているのだから。
しかし、それには一つだけ問題がある。
身分の差だ。
俺は王女様に問いかけた。
「世界を救った褒美として、王族との結婚を許して貰えるでしょうか?」
「はい! もちろんですわ勇者様! 例え無理でも、私がなんとかしてみせますわ!」
俺の言葉を聞いた王女様は、喜色満面の笑みを浮かべ、心強い返事をしてくれた。
王女様が直々に太鼓判を押してくれたのだ。
もはや、心配することなど何もない。
俺は、高らかに宣言した。
「俺! 王様と結婚するから!」
なぜか、その場にいた全員が凍りついた。
解説:勇者は王様に「ずっきゅううううううん!」