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君の隣を約束します。  作者: ゆきうさぎ
<第8章>
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P.S. お返しにはのしをつけてください。(2)

材料、と言ってもほとんどがチョコレートだけど。買い込んで美弥の家に行く。机の上に買ってきた材料を広げて、さっそく取り掛かった。結局あんなに悩んだくせに、最終的にはガトーショコラで落ち着いてしまったのは致し方ないことだろう。まぁ、定番中の定番だし、もらって喜ばない男はまずいないだろう。


「とりあえず、はい。みんなでチョコレートを刻む」


あまり広くないキッチンでいっせいに作るなんてどうかしてるだろうと思いながらもとりあえず同時進行で進めていく。だってもう日傾いてるんだもん。あんまり帰りが遅いと凛久が拗ねてしまう。なんてことを考えながら、分量をはかったものを次々にボウルにいれていく。


「直頼むからなんか説明しながらやってよ」


途中梨央からそんなことを言われて、4人でお菓子作りをしていたことを思い出した。


「あ、ごめん。無意識。メレンゲもう作りなよ。あ、ちゃんと塩いれてね」


いかんいかんと思いながらも、たまに意識はどこか違う方へ向いてたりして。たまに上の空になりながらもなんとかタネをつくり終えて、あとは順番にオーブンで焼いていくだけだった。


「なんかこんな大真面目にバレンタインにお菓子作るの初めてかもしれない」


一体誰が作ったものかわからないガトーショコラがオーブンで焼かれているときに、片づけをしながら奈津子がぽつりと言った。そう言われれば、確かにその通りかもしれない。こんなふうにバレンタインに一生懸命になって作ったのは十何年も前のことだ。


「それもそれでなんか悲しいわ」

「いや梨央は最初から作る気なんてなかったでしょうが」


たまにはいいとこ見せてやれよって私がどんだけ言っても無理の一言でばっさり切り捨ててたのはどこのどいつだよ。

ていうか、小さいころからお菓子作りなんて無縁だったじゃん。


「旬のためなら頑張れるってわけね。お熱いことで」


美弥が厭味ったらしくからかうように言えば、ほんのり梨央のほほは赤色に染まった。

…こんな一面あったんだな、こいつにも。


「そういうあんたもだからね、美弥」


高校の時、作ってなかったでしょ。なんて付け足して言えば、「それもそうか」なんて簡単に認めてしまった。

梨央みたいな反応してくれてもよかったのになー‥。

なんて言っている間に、ガトーショコラは焼けたみたいで、オーブンから音が聞こえてきた。オーブンをあければいい匂いがしてきた。

ケーキを取り出して粗熱がとれるのを待ってると、だんだんとしぼんで写真に載っているようなケーキが出来上がっていく。

あとは型から取り出して冷やせば完成。


「よし、次いこう!」

「ばか。オーブンの熱とってないでしょうが」

「あ、そっか。…え、じゃあこれ人数分しようと思ったら何時間かかんの?」


そんなことこっちが聞きたいよ。


「とりあえず、だいたいオーブン冷ましたら温度下げて次の焼いていって」

「「あいあいさー!」」


美弥と梨央が私に敬礼をして、オーブンの前に立ち尽くす。

…いや、そんな見張ってなくてもいいんだけど。

とは思いながらも何も言わずにガトーショコラのラッピングを考えている奈津子の前に座った。


「ううー‥どっちの色のがいいかなー?」

「私はシックなほうが好きだけど」


あんまりけばけばしてるのもいやじゃん。

ていうか、ラッピングでも悩むあたり女の子って感じするよな、なんか。


「陽斗ってやっぱり黒とかのが好きだよね‥?」

「‥うーん、どう、だろうね?」


ていうかたとえそうだとしても、それ元カノに聞くようなことでもないよね、うん。

なんて答えていいものか‥正直返答に困るんだけど。


「まぁ、陽斗なら奈津子からもらったものだったら喜んでくれると思うけど?」


私の時もそうだったし。とは言わないけど。‥てか言えないけど。

奈津子にそう言えば、悩んではいたけれど奈津子は「うん」とうなずいてくれて、私に笑顔を向けてくれた。





それから何時間たったかわからないけれど、ガトーショコラは無事3つ焼けた。私が勝手に作っていたフォンダンショコラも無事焼けて、ちらりと見えた時計はすでに11時をこえていた。

‥このまま帰ったら日付こえちゃうんだけど。


「疲れたー!」

「お菓子作りってこんな体力いるんだー」

「‥や、本来なら1つでいいからね、作るの。こんだけ数作るとそりゃ大変だよね」


私よく頑張ったよ、ほんと。


「みんな今日どうするの?泊まってくの?」

「いやー、私は帰るよ」

「私は泊めてもらおうかな」


美弥の言葉に、奈津子は帰ると返答をして梨央は泊まると返答をした。‥あれ。


「直どーすんの?」

「‥やっば、」


連絡してない‥!

私は鞄の中に入りっぱなしだった携帯を取り出してロックを解除して着信履歴を見る。そこにはおびただしい数の留守電と履歴とが入っていた。おまけにラインもばんばん来ていて、3ケタはいってないものの、何人でグループ組んでんだよって数がきていた。


「おーおー、すんごい数」

「そりゃ連絡ひとつもよこさなかったらそうなるよねー、普通」

「直、どーすんの?」


三者三様の回答をいただいたあとに私は深いため息をついた。

かけなおすべきなんだけど、かけなおしたくない。

だって絶対怒られるもん。

と、渋ってたら携帯はまた震えだした。

言わずもがな、画面に表示された名前は"時村凛久"。

あまりにも電話に出たくないせいか、私の指は無意識に拒否のボタンを押していた。


「‥あ、」


って私なにやってんのーーー!?


「バカだ」

「バカね」

「‥直、」


ああもう、私のばか。






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