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君の隣を約束します。  作者: ゆきうさぎ
<第8章>
52/54

P.S. お返しにはのしをつけてください。(1)

「私たちを女にしてください」

「…は?」


久しぶりに会った友人はファミレスの席に座るとすぐに、なんとも理解しがたい言葉を発したのだった。

ことの発端は、昨日の電話である。


「久しぶりー。直、明日空いてるよねー?」


昨日、美弥から久しぶりに電話が来たと思ったら、もしもしもなしに開口一番にこう言われた。もちろん答えなんて聞いていない。彼女にとって、これは確認の作業ではない。‥いや、確認の作業ではあるか。ただ、これは決定事項の確認作業というだけ。


「どうしてこんなに身勝手なんだ」


そう愚痴を独り言でつぶやきつつも、昨日言われた集合場所に来ている私。そう、確かに暇なのだ。テスト前だけど。



「お、いたいた。直こっちー!」


こっちと呼んだ声に振り向けば、マフラーをぐるぐるにまいた美弥とぽっこりコートを羽織った奈津子と、相変わらず怠そうな梨央が手を振っていた。3人のところまでかけよると、事情も知らされぬままファミレスへと連れて行かれ文頭へと戻る。

女にしてくれって。

いったいなにをどう解釈すればそんな言葉が出てくるんだ。

梨央はともかく十分女だろうに。


「えー‥と、」

「やっぱり伝わりにくかったよね。その‥もうすぐバレンタインじゃない?それでチョコレート菓子を作りたいんだけど、お菓子ってあんまり作らないからどうしていいかわかんなくって」

「‥あー、そういうことね」


なら初めからそう言えよ。どんだけわかりづらいことしてんだよ。ちょっと疑ったじゃん。


「ていうか梨央も作るの?」

「‥本当は作るつもりなんてなかったんだけどねー。現実そう甘くないわ」

「旬に手作りが欲しいってせがまれたんだって」


奈津子が梨央の嫌そうな顔を見て補足説明してくれた。それを聞いた梨央はことさらに嫌な顔をした。彼氏への手作りチョコでここまで嫌な顔するやついるんだな、なんて関心を覚えながら、ドリンクバーでいれたココアを一口飲んだ。


「で、直に教えてもらおうと思って」

「別に今持ってきてるそのお菓子の本さえあれば私必要ないと思うんだけど」


ちらりと見えた、どんだけ持ってんだよって言いたくなるくらいの冊数のお菓子の作り方の本を指さして言えば美弥にため息をつかれた。


「こんなの読んで、この絵の通りにできたら今頃あんたに頼んでないわよ」


…って失敗したのかよ。

その背表紙に書かれてる簡単って文字は飾りかよ。


「そんな偉そうに言うことでもないし」

「とーにーかーく、今日1日は付き合ってもらうからね」

「…まじかよ」


つーかバレンタインって明日じゃなかったっけ。どんだけ切羽詰ってたの、こいつら。そしてまったくバレンタインなんて行事をスケジュールに組み込んでなかった私もどんだけ。


「じゃあ、本題。なに作りたいの?」

「やっぱりガトーショコラだよね」

「うん、高度だな」


梨央の意見をばっさり切ってからほかの2人を見ると、ぱらぱらと冊子を見ながら思案している。どうやら本気で迷っているらしい。


「定番っていえばガトーショコラか生チョコかトリュフってところよね」

「うんまぁそうだろうね。私は定番すぎるから外すけど」


運ばれてきたポテトをかじりながら奈津子の言葉に相槌をうつ。そうしながら頭の中では凛久に何をあげようか考えていた。

定番はなんとなくやだ。でも、ほかになんかいいお菓子あっただろうか。ちょっと難しい、手間のかかるお菓子でもいいかもしれない。きっと凛久は明日のバイトで忙しいだろうし。でも、バイト先がケーキ屋っていうのもあって、あんまりケーキをあげるのはよくないかもしれない。

うー‥ん、悩む。


「うん、フォンダンショコラかな」

「え、なにが?」

「あ、いや、こっちの話」


思わずこぼしてしまった言葉を濁して隠そうとしたけれど、目ざとくその言葉を拾った美弥はペラペラと冊子のページをまくってあるページを開いて机の上に置いた。そこには私がさっき口にしたフォンダンショコラの作り方が載っていた。


「え、うまそう」


作り方ではなく、とろりとチョコレートが出てきている絵に反応した梨央が前かがみになってそのページをのぞく。


「本当に。あ、でも作るの難しそうだね。直はこれあげるの?」

「そうしようかな。あんまり甘いのもあれだし」

「いーなー、私もお菓子作りくらいしておけばよかった」


美弥のぼやきのような言葉に奈津子と梨央は苦笑しながらもうなずいた。それをポテトを食べながら見ていると、こちらを見た美弥がにっこりと笑った。思わずその笑顔に背筋が凍るような感覚を覚えたのは致し方ないことだと思う。


「一緒にこれ作れば問題ないじゃん」

「お、確かに!」


美弥の言葉に乗っかってきたのは梨央。


「私に作らせちゃおうっていう魂胆が丸見えなんだけど。そんなことしたら言っちゃうからね」

「せこい!」

「せこくないから。人に作らそうとか考えてるあんたのがせこいからね」


梨央に美弥にくぎをさして言えば、しぶしぶといった感じで、お菓子作りの本をまためくりだした。

‥つーか作る気あんまりないじゃん。




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