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君の隣を約束します。  作者: ゆきうさぎ
<第7章>
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猫ってかぶるもの以外なにがある?(5)

「直ってば機嫌直してって」

「知らない」


さっきからこの会話を繰り返している。お風呂も服もすべて貸してもらって、私は今凛久が敷いてくれた布団、ではなく、本来ならば凛久が使うはずであるベッドの上を陣とってあぐらをかいていた。わたわたと、不機嫌な私をどうにかしようとする凛久を見ながら、私はため息を盛大についた。なんだかこんな押し問答を続けていたせいか、私がいったい何にこんなにイラついているのかよくわからなくなっていた。こうやって盛大なため息をついたら、私が許すサインだとわかっている凛久は、なんだかすごく嬉しそうに私を見ていた。なんかこいつに尻尾が見える。ちぎれんばかりに振ってるところが容易に想像出来ちゃう。あーもうやだ。‥なんかもうここまで来たら、これがこいつの狙いかって思ってしまう。


「そういえばさっきの電話誰からだったの?」


と、1時間ほど前にかかってきた電話を思い出して聞いてみた。凛久は携帯のディスプレイを見るなりそのままそれを伏せてしまった。別に、聞かなくてもだれかなんて容易に想像はつくんだけれど。その時の凛久の顏ときたら、まぁ。


「当ててあげよっか?」

「は?」

「今日会った彼でしょ?」


と、自信たっぷりに言ってやれば、凛久は目を見開いていた。なんつーわかりやすい反応をしてくれるんだ、こいつは。もう少しポーカーフェイスになってくれないとこの先のが不安で仕方ないんですが。


「図星ってね」

「なんでわかったんだよ。画面見えた?」

「まさか。あんた隠すようにして見てたじゃん。怖ろしいねー、女の勘は」


なんて茶化して言えば、凛久は呆気にとられていた。別にこれ以上は追及する気はないので、私は興味を無くしたとばかりに凛久の部屋の漫画を物色する。というか、こんなことでもしなければ、どうしても思い出してしまうのだ。あの時の彼の表情を。彼の、凛久に対する思いを。すべて、すべて。それも嫌というほど鮮明に。


「…ほんと、こわいな、女の勘は」


それは何思って言ったのか。私の言葉の復唱にしては、すごく重たい言葉に聞こえた。


「気付いてた?」

「なーに?今更そんなこと聞くの?彼と別れてすぐに聞いてきたのに?」

「そんなとげのある言い方しなくてもいいじゃん」


凛久はいつまでも漫画を物色し続けて背中を向けている私に自分の背中をくっつけてきた。背中合わせなんて、女友達とでもここ何年とやってないぞ。


「好きなんでしょ?凛久のこと。見てたらまるわかりでしょうが、あんなの」

「…やっぱり?」

「で、離れれば忘れてくれるなんて、勝手なことほざいたよね、あんた」

「やっぱとげあるよね、直の言い方。つーか最近ほんっとトゲが鋭利になったよね。気のせい?」

「そう思うんなら鋭利になってきてるんじゃない?まぁよく言えば猫かぶらなくなってきたってことよ」

「…どんだけ猫かぶってんの、普段」

「マトリョーシカもびっくりね」

「いや、マトリョーシカにも限界あるし。つーかそのたとえなんか違ぇし」


一瞬だけ凛久がこちらを振り向いたのか、背中が離れた気がしたけれど、また、同じように背中を合わせてきた。多分、顔を見ない方が話せることもあるんだと思う。


「で?そんなきつい言い方されるってことは何かしらの不満を持ってるのかなー」

「持ってるのかなじゃなくて持ってるんでしょうが。でなきゃこんな10人中9人は言い方きついっていうような言い方しないわよ」

「じゃあその不満ってなに?」


言ってもいいけど、言いたくない。というなんとも子供みたいな葛藤。黙っていれば、遠慮していると思ったのか、凛久から「言って」と少し強めの言葉をいただいた。思わずため息がこぼれる。


「別にさー、彼の肩を持つわけでもないけど、離れれば忘れてくれるなんて、都合いい考えだと思わない?」

「…だって、」

「だってじゃねぇんだよ。あんたさ、深山ちゃんの時にも言ったけど、あの子の気持ちなんだと思ってるわけ?ろくに応えもしないで向き合いもしないで、なにを偉そうに。まぁ、2年ほど相馬のことを避けて避けて避けまくった私がこんなデカイ口叩くのもぶっちゃけ間違ってるけど、それでもあんたは間違ってるって思う」

「揚げ足とりだ、」

「だから間違ってると思うってちゃんと言ったでしょ。それでも私は最終的に相馬とちゃんと向き合ったわよ」

「ぇえ!?あれで向き合ったって言っちゃう!?仕返しにとばかりに相馬の下駄箱にバラの花束つっこんだだけじゃん!」

「あれにはあれで深い意味があんのよ。だいたい今はそんな話どうでもいいの」

「…相馬かわいそう」

「なに?だったら今頃私は相馬の横にいればよかったわけ?」

「言ってねぇ!そんなことは言ってねぇ!」


おお、そこは必死だな、おい。


「ああ、もうまた話がそれた」

「そらしてるの直じゃん」

「凛久がその話を広げるからでしょうが」

「直がちゃんと軌道修正しないから」

「あん?軌道修正したのをまたそらすあんたが言うな」


って、また話がそれた。






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