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君の隣を約束します。  作者: ゆきうさぎ
<第1章>
4/54

どうやら右折と左折を間違えたようで。(4)

時村と喧嘩‥じゃないけど、まったく話さなくなって、5日が過ぎた。家でも、全然しゃべらなくて、というか私が単に時村のことを避けてるし、向こうも私を避けてるからなんだけど、顔をしっかり見たのもいつか忘れちゃったくらい。


「おはよー、直」


時村と一緒に居なくなってから、恵たちが絡んでくるっていうのもあるけど、学科の友達が話しかけてくれるようになった。いろいろ話すようになって、それなりに馴染めたかなって感じるようになった、午後の授業。5限目が始まる2分前。教室に入ってきた友達、結城 りん(ゆうきりん)があいさつをしながら私の席の隣に座った。本当だったら、その席には時村が座っていたんだけど、今日もあいつは一番後ろの席で居眠りをしていた。


「なーんか今日雨降りそうだねー」


来て早々、外を見だしたりんが言ったから、私も窓の外を見た。確かに外は暗くて、雨がすぐにでも降りそうな感じだった。


「だねー。やだなー、今日傘持ってきてないし」

「私もー。90分くらい我慢してくれないかなー」


雨って我慢しないよね。ていうか、90分我慢したところでって感じだし。


「ところでさ、直って時村君と付き合ってるんだよね?」


先生が教室に入ってきたというのもあって、りんは小声ではなしかけてきた。最近、大学内はこのもっぱら話題ばかりである。付き合っている疑惑からの電撃破局って感じで、疑惑なのに破局ってどうなのって思うけど、そんな感じで今もっとも注目を浴びていたりする。


「別れたっていう噂聞いてないの」

「え、別れたの!?」


いや、別れてないけど。とははっきり言えないけど。なんだか自然消滅を待つ中学生の恋愛みたいなんだよね。


「少し前まで一緒にいたのにさ、急に一緒にいなくなったじゃん。前は一緒に学校きて、ずっと一緒にいて、一緒に帰ってってしてたのに。まぁ、離れてくれたおかげで話しかけられたっていうのもあるんだけどね」

「別に話しかけてきてもよかったのに」

「あれだけ2人の世界作られたらこっちはけっこう話しかけるの勇気いるんだから」

「へぇ、それは知らなかった」

「なんで他人事なのよ」


そりゃあ他人事だろうに。私、話しかけられる張本人なわけだし。そんな感情知らないし。


「で、別れてないんでしょ?喧嘩でもしたの?」

「んー‥別に喧嘩したってわけでもないかな」

「じゃあなんなの。あらぬ噂がいっぱい飛び交ってるんだけど」


りんはため息をつきながら私を見て、その延長上にいる時村を視界に入れながら言った。その目はすっごく呆れているように見えた。


「あらぬ噂?」

「そ。あんたが時村を捨てたとか、時村がここの先輩と二股かけて向こうをとったとか、あんたが二股かけてたとか、時村を利用してたとか。なんかもう言い出したらきりがないって感じ」

「はー‥背ひれ尾ひれついたって感じだねー」


どっちしろ、なーんとなく私が悪いような噂ばっかりだったような気もするんだけど。まぁ、実際のところ、どれも事実じゃないしねー。何とも言えないって感じだ。


「早いうちに解決しとかないと、時村人気あるからすぐどっかとんでっちゃうよ?」

「そーだねー」

「聞いた話によると、どこの学部だったかは忘れたけど、綺麗な先輩と最近一緒にいるのが多いって。彼女じゃないかって説まで出てきてるし」


りんのその言葉に、呑んだつばがつまりそうになった。綺麗な先輩というのは、間違いなく、あの時、時村に声をかけてきた同じ高校の先輩のことだろう。最近、確かにあの2人が一緒にいるところをよく見るようになった。食堂に行くとたいてい一緒にご飯を食べてたり、たまに一緒に帰っていくところも見かける。後ろ姿を見るたびにすごく切なくなるけど、声なんてかけれなくて、いつもそのまま見て見ぬふりをしてしまう。


「それね、うちの高校の先輩で、あいつの知り合い」


私はそこまでしか知らない。陽斗に聞いたら、きっと教えてくれるだろうけど、陽斗に迷惑はかけたくないし、いろいろとややこしいことになる。というか、きっと私は時村からちゃんと聞きたいんだと思う。


「…あ、そうなんだ。それにしても一緒にいること多くない?私、あれはどうかと思うよ?先輩だって時村に彼女がいることくらいわかってるのにさ」

「まぁ、時村も人付き合い、ああ見えていいほうだから、仕方ないんじゃないかな」


なんて、心にも思ってないことを口にして、なんとかりんを言いくるめる。だけど、りんは納得してないみたいで、なんども間違ってると主張してきた。あんまりにも言うようだから、さすがに流しきれなくなった先生も、いつまでもしゃべり続ける私とりんを怒った。それからはりんは黙ったままだったけど、やっぱり顔は不満だらけだった。


「今日はここまで。再来週は小テストするから、そのつもりで」


先生はそう言って、教室からすぐに出ていった。ちらりと見た窓からは雨が吹きつけていて、けっこう雨が降っていることを知らせた。今日は車で来たから、別に濡れることはないけれど、おそらく時村はバイクで来ているはずで、こんな雨の中バイクで帰るはずがない。時村に声をかけようか迷っていた矢先、携帯の画面を見るなり一目散に教室から出ていった。その後ろ姿を見ながら、心のどこかで「またか、」と思う私がいた。





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