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君の隣を約束します。  作者: ゆきうさぎ
<第5章>
33/54

黄金のリンゴ争奪戦(6)

(奈)「あ、出てきた!」

(旬)「あれ。つまんねー‥結局2人で登場かよ」

(梨)「でもさ、なんつーか、高校の時も思ってたけど、直ってああいう格好したらほんとに映えるよね。今まで出てきたどの子よりも綺麗」


凛久に手をつながれながら、ステージをまっすぐ進む。高めのヒールをはいた私を気遣ってか、凛久はゆっくり歩いてくれた。いつもと雰囲気の違う凛久を見ていると、すごく顔が熱くなるのがわかる。なんかも、すっごく恥ずかしい。


「大丈夫だから。やっぱ直綺麗」


だから、そういう言葉が恥ずかしいんだって。

繋がれた手をぎゅっと握ってやれば、また優しそうに笑った。


「凛久のバカ」

「ん、最高の褒め言葉」


ゆっくりと真ん中へ向かうと、しんと静まり返る会場があって、真ん中にあるマイクが目に入った。思わず顔が引きつる。さっきから舞台袖から聞いていた、告白まがいの言葉を思い出すと、また顔が赤くなった。

‥いや、だって普通に恥ずかしいし!

マイクを挟んで右側に私、左側に凛久が立って、向かい合う。心臓の音が聞こえるんじゃないかってくらいうるさく鳴り響く。見上げた先にあった凛久の顏は、どことなく楽しそうだった。


「早く言わないとみんな待ってるよ?」


マイクも拾わないほど小さな声で凛久はそう言った。言われなくてもわかってるけど、どうしても恥ずかしくて言いたくない。でも、確かに言わなければステージから降りれないし、進まない。私は俯いて唇を噛み締めると意を決して口を開いた。


「…お願いだから、…‥お願いだから、もう、どこにも行かないで。もう、ひとりにしないでよ、…‥ずっと、私のそばにいて、」


こんな恥ずかしいセリフ誰が考えたのよ。顔にすごく熱が集中していくのがわかる。あんまりにも恥ずかしくて、最後の方は消え入りそうな声で、マイクを通しても何言ってるのかよくわかんなかったかもしれない。いや、正直あんまり聞いてほしい内容でもないんだけど。できたらなかったことにしてほしいくらいなんだけど。


(陽)「わー‥破壊力抜群」

(旬)「今のけっこうキタ」

(貴)「あれって素でやってんだもんね。凛久さん大変だなー」


言い終えたとき、今までしんとしていた会場がより静かに感じた。誰も動かずにこちらをただじっと見ていて、次の瞬間、会場がわっと沸いた。


「俺はどこにも行かないよーー!!」

「直ちゃん可愛いーーー!!!」

「萌えーーーーーーー!!!」

「俺はそばにいるからねーー!!」


とまぁ、かけられる声は様々だけど、こちらにかけられる声を聞くたびに凛久のこめかみがひくひくと動いているのが見えた。そんな凛久と目があうと、何ともやるせない表情で私を見返した。いっこうに声はやまなくて、私はいつこの場所から引いたらいいのかわからない。困ったように、また凛久を見上げると、マイクを手にして言った。


「こいつのそばにいていいのは俺だけだ」


いや、かっこいいけど。すっごくかっこいいけど。今このタイミングで言うことか、それ。

一瞬で歓声のような状態をざわつかせた凛久は、私をヒョイと簡単にお姫様抱っこすると、舞台のそでまで進んでいった。そのままカーテンをくぐって、さっきまでいた控室のようなところまで行く。


「あ、じゃ、じゃあ次の子、」


ぽかんとしていた先輩が慌てて次の子を呼んで舞台の上へと行かせる。私は凛久にお姫様抱っこされたまま慌てて出ていく2人とすれ違った。


「凛久にこうやってされるの、お酒飲んで運んでもらったとき以来だね」

「あー‥そういやそうか。もっとされたい?」

「そんなこと言ってない。つーかいい加減おろしてよ。目立って仕方ないじゃん」

「(別にこれで目立ってるわけじゃないと思うんだけど、)はいはい。おろせばいいんだろ、お姫様」


凛久はそう言ってすごく優しく私をおろしてくれた。そして1歩下がったところでじっと私の姿を見ると、ひとりで頷いた。


「は?なに」

「いや?ほんっとに綺麗だなーと思って。高校の時から思ってたけど、直ってなんでも似合うよな」

「それ、文化祭のときのこと言ってる?あれ、私の黒歴史なんだからあんまり掘り返さないでくれる」

「なんで?あの時も綺麗だったじゃん」


綺麗とか、可愛いとか、そんなんじゃなくて、ただただ恥ずかしい。あれが卒業アルバムに載ってるんだってことを考えるとなおさら恥ずかしい。


「いやー、目立ってたな、お前ら」


また、どこから現れたのか、恵は凛久の肩を抱いて言った。凛久はそれを嫌がることはしなかったけれど、少しだけ顔を嫌そうにした。いや、わかりやすっ。


「目立ってたのは俺じゃなくて直だろ」

「な、凛久がお姫様抱っこなんかするから!」

「‥いや両方だろ。ゆっきーのあのセリフはやばかったねー。や、セリフってかあの言い方がやばかったのかなー。声震わしてか細い声で弱々しく俯き加減で上目使いまでされてあんなこと言われたら、どんな男でもコロッと落ちちゃうよー?」


恵はそう言って凛久のほうを見た。恵の言葉がいったい何を意味しているかなんて、私にはまったくわからないけれど、凛久には何かが伝わったみたいで、盛大なため息をついてくれた。


「だから俺ちゃんと牽制したじゃん」

「のんのんのん。あんなんじゃあ敵を減らせないよ~。ていうか、ぼーっと聞いてるゆっきーにだって関係あるんだからね?」

「へ?私にも?」

「そうだよー。さっきのとっきーの男前なかっこいーいセリフに会場の女の子たちがきゃーきゃー言ってたんだからねー?」


いや、まぁ、確かにかっこよかったし。惚れ直したんじゃないかっていうくらいにはかっこよかったし。


「まぁ結果がどうあれ、しばらく2人は有名人ってわけだ!」


恵は本当に何しにここに来たのか、それだけ言ってどこかへ行ってしまった。

ていうか、また?

また、有名人?正直、平穏な大学生ライフを望んでたんだけど?なんていうか、ほんともう、…平穏なキャンパスライフ、カムバァーーーーーック!!!





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