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君の隣を約束します。  作者: ゆきうさぎ
<第4章>
22/54

思い出って基本的にいいように塗り替えられてるよね。(2)

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直が買い出しに出ていってから、久しぶりに兄貴との時間が出来た。かといって何かを話すわけでもないし、俺は立ち上がってコーヒーを入れなおした。たまたま兄貴と目があったから、俺は兄貴の分も入れてソファに戻った。


「コーヒーはいれられるんだな」

「直にうまい入れ方教わった」


まぁ、別に教わらなくてもまずくはなかったけど。直がいれてるほうが美味しかったから、気になっていれかたを教えてもらった。そしたら、料理は全くできない俺でもコーヒーだけはいれられるようになった。まじ、進歩だって思う。


「仲良くしてるみたいだな」

「…本当はなにを言いにきたんだよ。わざわざ直をひとりで買い出しになんか行かせて」


行き帰りの道中でナンパにでもあったらどうすんだよ。まぁどうせ車で行ってるんだともうけど。あいつが重たい荷物手に提げて歩いて帰ってくるわけないし。


「あ、なに、ばれちゃった?」

「‥まさか今更直奪いに来たなんて言わないよな?」


さすがにそんな冗談あったらきつい。だって俺、兄貴に勝てるなんて思わないし。あいつだって、俺のこと好いてくれてるとは思うけど、相手が兄貴だったらわかんないし。別に信じてないわけじゃないけど。俺に自信がないだけってわかってるけど。


「まさか。ガキにゃあ興味ねぇ」

「よく言うよ。直には本気で惚れてたくせに」

「‥確かになー。雪瀬なら本気でいってもよかったかもしれなぇな」

「げ、」

「ばか。別に人の女取るつもりねぇよ。まぁ、今お前らが付き合ってなかったら今回は遠慮する気はなかったけどな」

「‥それって、」


それって、…やっぱりそういうこと、なのか?…兄貴、言ってることさっきから矛盾してない?国語的に言うパラドックス?


「あの時はあいつの先生だったからな、俺は。立場上、手は出せなかった。でも今はただの卒業生だ。俺はもう先生じゃない。踏みとどまる理由がない。そうだろ?」


そう言ってコーヒーを飲む兄貴は、あの時よりも数段かっこよく見えた。なんだか、北海道に行って男前度がアップした感じだ。やっぱり自然に触れるとワイルドになるのかな。


「それって俺から直奪うって堂々と言ってるじゃん」

「お前が雪瀬と別れたらな」

「は?別れること前提?」

「そりゃあな。俺は人の女取るほど嫌な男じゃないからな。別れねぇ限り雪瀬はお前のもんだろーが」


いや、確かにそうだけど。や、俺が聞きたいのはそんなことじゃなくて。


「つまるところ、俺は吹っ切れたわけよ。足枷もなくなったし。恨むなら俺を惚れさせた雪瀬を恨めよな」

「いや、惚れた兄貴を恨むに決まってんじゃん。兄貴だって同じ立場なら同じこと言ってる」

「違いねぇ。だから肝に命じとけ。別れたら次はねぇぞ。その時は俺が雪瀬をもらう。いとこなんて関係ねぇ」


そう言い切った兄貴の目は真剣だった。どうやら、本気で直を好きらしいし、本気で狙いにいくつもりらしい。俺は思わず息を呑んでしまった。別に直と別れなきゃそれでいいんだけど、なにがあるかわからないし、正直相手が兄貴だと思うと本気で取られそうで怖い。最悪、直が兄貴のほうに自分から行っちゃうんじゃないかって考えてしまう。そう思ってしまう俺が最低だってのもわかってるけど。


「手強いなー、それ」

「だろうな。俺は凛久に負ける気しねぇしな」

「負ける気か‥。そんな絶対の自信俺もほしー」

「ハハ、よく言うぜ(こいつ、俺が別れんなって遠回しに言ってるの気づいてないな、)」


兄貴はため息をつく俺を呆れた様子で見ていた。別にそんな表情しなくてもいいのに。俺は兄貴みたいに男前な顔してないし、そんな男前な性格もしてないんだよ。仕方ないじゃん、自分に自信ないの。


「そういや兄貴、あいつらいつくんの?直に何にも言ってないけど、」

「あー‥忘れてた。今何時だ?」

「もうすぐ5時だけど」

「‥やっべ、あと30分もしたら来るわ」

「はぁ?兄貴、直に怒られるよ、それ」


直怒らせたら怖いんだからほんと勘弁してほしいんだけど。あいつ静かに怒るんだもん。美弥のが断然怖いとか言ってるけど、俺からしたら直の方が数倍は怖いね。


「そういやー、加藤が彼氏も連れていきますねとか言ってたけど、」

「美弥の彼氏ィ!?貴臣くんの!?って人数増えてるじゃん!とりあえず直に電話!」


携帯を手にして、履歴の一番上にある名前を押して電話をかける。聞きなれた機械音が流れて数秒後、直は電話に出てくれた。


「直、すっげぇ言いにくいんだけど、」

「なに、人数でも増えた?」


 あー、やっぱコエェ。電話でもコエェ。


「はい、増えました。貴臣が来るそうです」

「‥ふうん。そ」

「…多分、もう増えないと思う、けど」

「貴臣?君だっけ?好き嫌いなにがあるか知らない?」

「は?」

「だーかーら、食べ物なにが好きかって聞いてんのよ」

「え、怒ってないの?」

「は?怒ってるに決まってるでしょ。いきなり買い出しに行かされて、あげく人数増えましたって。どうせ作るの私だし。鬱憤ばっかりに決まってるでしょ!」


ですよねー。激オコですよねー。


「でもまぁ、美弥の彼氏だし凛久の友達みたいだし‥悪くするのもだめかなって。人数多い方が楽しいと思うし」

「‥なんかサンキュ、」

「別に凛久にお礼言われたって嬉しくない。お礼言うくらいなら近くの酒屋でお酒買ってきて」

「…人使い荒いなー」

「それ、あんたのいとこのお兄さんに言ってくれる?」


うわー、怒ってる。てかすっげぇ根に持ってる。


「はーい」

「あ、凛久何食べたい?」

「え?」

「なんかあんまりいいメニュー思いつかなくて」


珍しい、なんてことを思ってしまった。直っていつも何が食べたいか聞くけど、けっこうあいつの中で決まってたりするのに。なんでか、兄貴に宣戦布告されたあとだからか、直のその言葉が無性にうれしかったりして。ここで直が食べたいとか言ったらしばらくガン無視だろうなー、うん。でも、うん、そろそろ限界‥。





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