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君の隣を約束します。  作者: ゆきうさぎ
<第1章>
2/54

どうやら右折と左折を間違えたようで。(2)

「今日はここまで後ろからレスポンス集めろ。てめぇら寝てるやつに優しくすんなー?優しくしたやつには単位やんねぇからなー」


怠そうにそう言って回収されていくレスポンスを集めていく芝ちゃんは、名簿らしい紙に今寝ている人をチェックしていた。その中には、私の隣で朝寝れなかった分を存分に寝ている時村もしっかりと含まれている。

…こいつこんなんでいいのか。

と、心の中で思いながらも起こしてやらない私もたいがい厳しいのだろうか。


「雪瀬さんはいこれ」


後ろから肩を叩かれて回されてきたレスポンスカードを受け取る。名前は覚えていないから、ごまかし笑いと一緒にお礼を言って、自分のを重ねて前へと送る。その一連の動作を行ってから、隣で人が必死に板書をしてる横で気持ちよさそうに寝ている時村をゆすって起こした。


「んあ、授業終わった?」

「終わった。ちなみに出席もとってた。あんた欠席扱い」

「ぇえ!?なんで起こしてくれなかったの!?」

「うるさいなー、起こしたら道連れって言われたんだもん。それだけはごめんだわ」


机に置いてある板書した紙と筆箱を鞄のなかにしまって、顔に寝痕がついている時村を見た。相変わらず可愛らしい顏は健在で、この顔のおかげで大学内ではちょっとした有名人である。


「まぁ、よく寝れたしいっか」

「なにひとつよくないけどね、なにも解決してないし」


こいつのまぁいいかの基準がなんだか怖い。


「な、それより購買行こうぜ。俺お腹空いてるんだって」


あんたが寝坊なんかするから朝ごはん抜きになったんじゃん。とは言わないが、私は不満げな顔を時村に見せた。


「いーじゃん。どうせこの後暇なんだろ」

「確かに2限は授業入ってないけど、」

「じゃあれっつごー!」


時村は私の手を取ると、荷物を持って教室から出た。その後ろ姿を何人か見ていたような気がしたけど、連れ去られている私はそれに気づかないふりをして購買に向かった。


「あっさごっはん~」


購買に着いた時村はかなりご機嫌で、鼻歌を歌いながら焼きたてのパンを見ていた。その様子を怖いものでも見るかのよう遠巻きに見ていた私も、飲み物を買うためにパックが並ぶ棚を見つめる。やっぱりコーヒーかな、と思ってコーヒーを手にしようとしたとき、隣から視線を感じてそちらを見ると、時村が私の手の先にあるコーヒーを見ていた。

…飲みたい、のか?


「直、最近コーヒーの量多いんじゃね?別に飲むなとも言わねぇし、控えろなんてことも言わねぇけど、あーんま飲みすぎると体によくないよー?」


と、人に忠告しておきながら、さっと取った飲み物は私が飲もうとしていた手の先にあったコーヒーで。あいつは私をおちょくってるのだろうか。それでも、それなりに心配してくれてるんだと思うと、コーヒーを手に取ることはできず、その隣に並んでいたココアを私は手に取って時村が並ぶレジに並んだ。


「凛久君!」


時村と日の当たる外の階段で、のんびりしていると、後ろから声が聞こえてきて、2人で振り向くと、そこには明るい茶色の髪をふわふわとさせたいかにも女の子って感じの人が笑顔で寄ってきた。そして彼女はしごく当然のように時村の隣に来ると何も言わずに座り込んだ。


「先輩なんでこんなところにいるんですか?」


時村は最初は驚いていたが、見知った顔なのだろう、とくに警戒もせず彼女と親しげに話し出した。


「あら、言ってなかったっけ?私、ここの商学部なのよ。こっちこそ驚いたわ。凛久君、この大学の1回生なの?」


可愛いというよりは綺麗と形容されるだろう彼女は惜しげもなく、その良さを発揮している。


「俺、法学部なんすよ」

「そうなの?凛久君がそんなに頭が良かったなんて知らなかったわ~。また凛久君にあえて嬉しいわ」

「そんな、」


明らかに照れたその表情にちょっといらっとしたり。なんか2人の世界って感じで、すっごく、すーっごく気に入らない。そう思った私は、考えるよりさきに行動していて、階段を早足で降りていた。


「雪瀬?」

「ごめん、私忘れ物したから取りに帰ってくるね」


そんなの大嘘だけど、いてもたってもいられなくなった私は、逃げるようにその場から立ち去った。その時に見えた、彼女のほくそ笑んだ顔はすごく憎たらしかった。


「なんか自己嫌悪」


食堂に逃げ込んだ私はいらいらをどうすることもできず、意気消沈していた。頭に浮かぶのは、さっきのあの2人のことで、あの女の顏を思い出すだけでものすごくいらいらする。なんちゅー嫉妬深いんだ、私。


「ゆっきー、珍しひとりなんだー?」


沈む私に声をかけてきたのは、同じ学科の1回生だった。金に近い髪に、耳には数個ピアスをつけていて、どこからどうみてもチャラいっていう言葉が似合う男。名前は自己紹介してたけど覚えてない。見た目同様、言うことなすこと全部が軽い男。


「珍しくってなによ」

「えー?言葉のまんまだよー。ゆっきーいつもあの可愛らしい番犬つれてるじゃん」


可愛らしい番犬って意味なくない?


「‥あー、時村のこと?」

「そ、とっきーのこと~。どしたのー?とっきーと喧嘩でもした?一瞬、すっごい嫌そうな顔したよー?」

「…あんた意外に鋭いんだね」

「ひっどいなぁ。俺、恵 大智(めぐみたいち)って自己紹介したじゃんかー。ちゃんと覚えてよー」


あー‥そんな名前だったような気がする。どっちも名前じゃんって心の中で突っ込んだ覚えがあるわ。





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