同級生の集い
第七作、夏のホラー2013参加作ですね。
読んでやっていただけると幸いです。
高校の時の仲間が集まる中に、懐かしい顔を見た。入り口近くの一番端の席、笹木はそこに座っていた。
今日は高校の同窓会。宴会として大いに盛り上がりをみせ、ほとんど酒を飲まない俺も、ノリで焼酎を1〜2杯あおいでいた。まあ、ボトルとかカップとかいうわけではなく、ほんとに小さなコップでだけれど。
周りの連中が酔いが回ってはしゃいでいるのに、うまい具合に混じって、過去の話で盛り上がっている時、対照的に周りとうまく話せてないやつが目に入った。
笹木は三年間クラスが一緒で、最後の席替えの時に席が隣になったから、よくその顔を覚えている。あの時は、どちらかというと活発な方で、クラスの中心に近い存在だったのに………
少し不憫に思えて、声をかけてみることにした。
「よ、笹木、久しぶり」
「あ、川井君、久しぶり」
やっぱり、少し元気がない気がする。
「どした? 何か、あまり周りと話せてない感じがするけど」
「あ、えっとね、今日女子あまり来てないでしょ。あの時の友達も少ないし、話す相手がいなくて……」
なるほど、それだと盛り上がれなくても仕方ないかな。
……よし、だったら俺が話し相手になろうではないか。
そういえば、笹木って高校の時、桜川と付き合ってたんだよな。同じ大学に進んだはずだし、まだ続いてるのかな?
……聞いてみるか。
「そういえばさ、桜川は今日来てないみたいだけど、桜川とはまだ続いてるの?」
自分の口からその言葉が離れた瞬間、笹木の顔があからさまに曇るのが見てとれた。何か聞いたらまずいことだったのだろうか。
「……ごめん、川井君。ちょっと事情が複雑で、ここでは言えないかな……」
そう、笑顔を作って話している。やっぱり、何かまずかったんだ……
「あ、いや、こっちこそごめんな。変なこと聞いて」
「いやいや、大丈夫だよ!」
そこまで会話が進んで、二人の間にいやな沈黙が訪れる。
………………
うわ、どうしよう……
何話そう……
そう考えていた、が、先に会話を切り出してくれたのは、笹木の方だった。
「あのさ、川井君、この後って暇?」
?
「この後って言うのは?」
「同窓会終わった後」
なぜそれを俺に聞く……
「ま、まあ、後は二次会とかにも出ないで帰るつもりだったけど……」
「時間ってある? 少し相談したいこと……というか、悩みを聞いてほしいんだけど……」
そ、そういうことか。なら、
「いいよ。お悩み相談受けようじゃないか」
そう返答すると、彼女の顔に笑みがこぼれた。今度は作り笑顔ではなさそうだ。
「じゃあ、二人で二次会だね。よろしく」
同窓会が終わった。さすがに二人一緒に出るのは気まずかったから、別々に会場を出て、外で待ち合わせをした。俺はほかの連中の二次会の誘いを断って、先に外に出て笹木を待っていた。中にいた時、俺の横では二次会の計画がたてられていた。その話によると連中は車で次へ向かうようだ。酒入ってるだろうに、大丈夫なのか? そんなことを考えながら夜風に当たっていた。……その時、
「あ、川井? 川井だろ!」
後ろから、声がした。振り向くと、そこにいたのは岸和田だった。
こいつも、よく覚えている。本当に、ほとんど変わってないんじゃないだろうか。最後の一年しかクラスは一緒じゃなかったが、名簿が一つ違いだったので、クラス替え当初よく話していたという記憶がある。
というか、こっちは後ろ姿、しかも夜だってのに、よく俺だと分かったな。
「もう、終わっちゃった?」
あ、そうか、こいつ今来たのか。道理で会場の中で姿を見なかったわけだ。
「ついさっき終わったよ」
「マジか〜 で、おまえは今からどこ行くの?」
え?
なぜこいつ、俺が次へ行くと知っている……?
何も言えずに黙ってると、
「あれ? 二次会ってないの? せっかくだから、そっちには出ようかと思ったんだけど……」
……こいつにとって、二次会が無いわけがないというのは、一般論らしいな。別に、俺の行動を見抜いているって事ではないのだろう。
「大々的な二次会は、ほかの奴らがやるみたいだぞ。あ、でも、もう行っちゃったみたいだな…… 俺は、笹木と一緒にもう一件だ」
「へぇー、川井やるじゃん」
「別に、おまえが考えてるような感じじゃないからな」
「ふぅ〜ん」
……なかなかこいつムカつくんだが
「……笹木か」
岸和田は少し険しい顔になってそう呟いた。
「どうした?」
「あ、いや、何でもない」
そう言うと、険しい表情は元に戻った。
「あのさ、この後、おまえらのところに混ざってもいい?」
ほう。まあ同窓会に参加できてないわけだし、
「俺はいいぞ。笹木が良いって言うならな」
「そうか」
そんなやりとりをしているうちに、笹木がやってきた。
「というわけで、岸和田も一緒に良いかな?」
笹木がくるやいなや、岸和田の話題をぶっ込んでみた。そうすると、すぐに、
「うん、いいよ」
と回答があった。
「聞いてくれる人が多い方が、話しやすいだろうし」
そんなもんなのか? まあ、本人がいいって言ってるから、いいのかな。
俺が乗って来た車で移動する。酒を飲んだとは言え、ほんとに飲んだか飲んでないか分からない程の量しか胃に納めてないから、大丈夫だろう。こうなると、俺も二次会に行った連中にとやかく言う権利はないな。そう思いながら、助手席に笹木を、後部座席に岸和田を乗せて、車を動かした。
二次会として会場に選んだのは、さっきと同じような居酒屋だった。もちろん、宴会場のような広いところではなく、普通の、至って普通の座敷席。俺は酒を頼む気はなく、笹木もそんな気分じゃないとウーロン茶を頼んでいた。岸和田は、まだ酒は飲めないと言った。見た感じ、少しやつれている……というか、少なくても体調が万全とは言えなさそうだ。禁酒でもしてるのだろうか。
頼んだ料理はあまり多くなかった。さっき食べてるから、当たり前といえば、当たり前なのだが。
料理が一通り運ばれてきて、笹木が口を開いた。
「じゃあ、聞いてもらってもいいかな……」
「高校出てからも、桜くんとは付き合ってたんだけど、高校出てから一年ちょっと後くらいの時に、山の中の道で事故を起こしちゃったの…………」
笹木の話によると、高校出てすぐ桜川は車の免許をとり、その日はドライブを楽しんでいたのだという。だんだんと暗くなり笹木は眠くなって後ろの座席で寝ていた、その時いきなり、車が大きく揺れたらしい。どうしたの? と笹木が聞くと、桜川は青い顔でこう答えたのだという。
「どうしよう……、人……轢いちまった」
山の中で、ランニングらしきことをしていた人の隣を走り去る直前に、その人が転んだ。歩道と車道の区別が無いようなところで、転んだその人の上半身が、車のタイヤの真ん前に倒れ込んだそうだ。そして、ブレーキも間に合わず、そのまま……
「それで二人とも動揺しちゃって、逃げちゃったのよ……」
確かに、あの場で出来るような話ではない。だから、あの時、事情があると言ったのか……
岸和田も、話を聞いて、少し険しい表情になっている。
「で、警察っていうのも、すごいんだよね。目撃者もいないようなほんとの山の中だったにも関わらず、轢いた車を特定して、桜くんのところに来たの…………」
桜川は笹木をかばって、その時車に乗っていたのは自分だけだと証言して、自分だけ刑務所に入ったのだという。
「裁判で一年半、実刑で三年半かかって、ようやく、事件から五年たってようやく、三週間前に出所したの。ほんとにようやく、罪を償って出てきたんだよ。それなのに、その三日後に……交通事故で、死んじゃったの……」
え…………
え……?
困惑する俺を気にせず、いや、気を配ることも出来ず、笹木は話を続ける。
「しかもね、桜くんが死んだ場所、事故を起こした所と同じところなの……」
桜川は事故を起こしたのと同じ山の中の道をバイクで走っていたようだ。車の免許は剥奪されてしまっていたため、昔とったバイクの免許を利用して、バイクを使っていたのだという。
が、理由がない。
事故が起きる理由がない。
道の何かにつまずいたのでもない。ブレーキ根もない。バイクの故障もない。
しかも死因は首からの大量出血による失血死。バイクの周りには人の皮膚が切れるほど鋭いものは何一つない。転倒しただけで、こんなことがおこるだろうか?
「まあ、警察は事故で発表したんだけど、こんなことがあったから、怖くて仕方ないの…………」
「そうか、だからあまりみんなと話せてなかったんだ」
笹木は無言で小さく一度うなずいた。
確かに、これは恐怖の対象になりうるものだ。……でも、
「そういう経験したことないから、アドバイスしようにもしようがないんだけど、俺から言えるのは、あまり考えすぎないってことかな。意識しすぎるのも、恐怖の原因になることがあるからな」
ほんとに、今自分にいえるのはこれだけだと思った。
「うん、ありがとう。何か聞いてもらったら楽になったよ。誰かに聞いてほしかったのかもね」
もはや、グチられただけじゃないですか。まあ、楽になったって言ってくれるなら、聞いたかいもあったのかな。
「さあ、暗い話も終わったことだし、同級生の集いを楽しもうぜ」
岸和田がこう言って、二次会は更なる盛り上がりを見せようとした。が、お互いにほとんど話す話題もなく…………
「……お開きにしますか」
時刻は日をまたごうとしていた。そこまで都会という訳でもないので、もう最終列車は駅をでてしまっている。
「笹木も岸和田も隣町だったよな」
「うん」「ああ」
「二人とも送ってくから、車乗ってくれよ」
そう言って俺は自分の車を指し示した。
「いいの!?」
「もちろん」
二人は二次会につれてきたときと同じ位置を陣取っていた。
「じゃあ、安全運転でお願いね」
「へーい」
あ、そうだ。
「途中で高速乗るから、シートベルトをお願いしまーす」
「はーい」
市街地をぬけ、高速道路を通る。まだ隣町までは道がつながっていないので、途中から一般道へ降り、電柱によって成される光と闇のコントラストの中を進んでいく。高速に乗ったといっても、隣町まではまだ少し距離がある。そのうちに、だんだんに山の中へ入って行く。
笹木は助手席でうとうとしている。まあ、楽にしてあげられただろうとはいえ、さっきまで重い思いを抱えてたわけだから、つかれてても仕方ないかな。
岸和田は後ろでちょこんと座っている。運転しながら後ろ向くのは危ないので、ミラーで確認した。こっちは眠りそうな気配はない。
まあ、最も眠っちゃいけないのは、俺なのだか。
山の中で事故を起こしたって言ってたっけ。ちょっと、注意して行こうかな。
規模が小さなトンネルが見えてきた。ここを通れば、もうすぐ隣町だな。山の中もだいぶ進んできて、後少しで抜けられたはず……。よし、後少しだ。
トンネルに入ったとき、異変は起きた……
「う〜〜〜〜…………」
岸和田がうめき声をあげ始めた。
「おい、大丈夫か?」
「頭と……ここが痛い…………」
ミラー越しにその姿を確認すると、片方の手でおでこのあたりを、もうか片方の手で胸の少し上、首に近いところを押さえているように見える。
「もうちょっとで着くから、なんとか持ちこたえろよ」
「う、う〜〜、ウ〜〜!」
うめき声の大きさがトンネルを進んだ距離に比例していく。
おいおい………どうしたってんだよ!
「何かあったの……?」
うとうとしていた笹木がうめき声に起こされる。彼女の寝起きで少し潤んだ目は、フロントガラスを透過して網膜に映し出された映像を確認した瞬間、先程とは比べ物にならぬほど、大きく見開かれた。
「ねえ、ここ、どこのトンネル!?」
「どこって、隣町に向かう途中の、山のトンネルだけど……」
その言葉を聞いて、彼女の顔から血の気が消えた。夜で暗いというのに、分かるほどに。
「このまま行くと、桜くんが死んだ所だ……」
えっ!! ってことは桜川と笹木が人を轢いてしまった所?
おいおい、なんてところに……
「引き返して。お願い、引き返して!」
「そんなこと言われても、車回せるところなんてないよ」
「いいから、引き返して!!」
トンネルを抜ける。何も起きない。岸和田のうめき声は、だんだんと大きくなってきている。でも、それ以外は大きな変化は何もない。
「ほら、大丈夫だって。考えすぎない、考えすぎない」
笹木のためにも、岸和田のためにも、はやく送り届けてやらないと。そう思って、もう一段階アクセルをふかした。
その時、白い影が目の前に倒れ込んだ。
ん?
ガタン
車が少しの衝撃とともに、急停止する。
えっ、今、何が?
ま、まさか、人を……ヒイタ?
ど、どうすれば、いい…………
どうすれば……
頭の中が真っ白になった…………
そうだ、他の二人は?
「さ、笹木、大丈夫?」
「だ、……だから言ったじゃん、引き返そうって!」
そう言って、笹木はガタガタと震え始めた。でも、とりあえずは大丈夫そうだ。
岸和田は? そういえば、さっきまで聞こえていたうめき声は聞こえなくなっている。大丈夫……なのか?
意識をミラーに移す。
!! あれ……、いない!?
「おい、岸和田!?」
直接後部座席をのぞきこむ。……いない? なんで?
その時、車の外で人影が揺れた。
岸和田? いつの間に外にでたんだ。
轢いてしまった人の安否も気になる。生きていてくれるといいのだけど……
一度、車の外にでた。風が吹いている。車は電灯の真下に停まってしまったようで、ある程度の明度が確保されている。
やはり、外にいたのは岸和田だった。
「おい、大丈夫か?」
「…………」
返事がない。岸和田は、車の近くをふらふらしていた。
おいおい、どうかしちまったのかよ……
もう一度声をかけてみたが、反応はなく、一時的にあきらめることにした。
轢いてしまった人は……
そう思って、車の周りを見て回る。
フロントガラスの前から右回りにグルッと一周してみる。けれども……
誰もいない。いくら周りを見渡しても、知り合い以外はこの場にいない。
はは、気のせいだったのか……
あれ、じゃあ、なんで、車、停まったんだ……?
強い風が吹いた。周りの木々がざわつく。真上の電灯が不規則に点滅を始める。
おいおいおいおいおいおい、何だって言うんだよ! とにかく、ここを離れよう!
運転席に乗り込もうと思った。だが、助手席の辺りに岸和田がいる。
「おい、岸和田、車乗れ! ここから離れるぞ!!」
「…………」
返事がない。
「岸和田!」
名前を呼んだ二回目、その瞬間、前と後ろから一気にプレスされたかのように、岸和田の首のあたりが潰れ…………
ブシュー…………
首から彼の物であったはずの液体が、噴き出す。
そして、地面にありえない角度で崩れ落ちる。
俺も、膝が崩れた。
な、何が起こってるんだよ!
……はやく…………
はやく、ここをはなれよう……
ガクガク言っている膝に、言うことを聞かせて、這うように運転席に戻る。
「な、何が起こってるのよ!」
車に入った瞬間、先程俺が思ったのと語尾しか変わらない台詞を口にする笹木と対峙する。
「分からない、でも、今はここから、はやく、立ち去ろう!」
止まっていたエンジンを動かすため、エンジンキーに手をかける。
ブロロロロロロロロロロ
…………
沈黙…………
おいおいおいおい!
かちゃ……かちゃ……
けたたましい音は立てるものの、いっこうにエンジンがかからない……
「何してるの! 早くしてよ!!」
「エンジンが……エンジンがかからないんだよ!」
その時、
バタン
えっ……?
助手席の扉が開いた。
おい、そとには、だれも…………
いない……
助手席に目を移す。
影が見える……腕の形の影が……扉を……掴んでいる…………
「キ、キャアアアァァァ〜〜〜〜ーー」
笹木の叫び声が車内にこだまする。
な、何で? 何が起こってるんだよ!
腕の影は、笹木の足もとに伸びて……足首を掴んだ。
「ヒ、ヒイイイイィィィ」
影は、笹木の体を外に引きずり出そうとする。が、シートベルトがしてあって、笹木の抵抗もあって、車の外に体は出ない。
かちゃ……かちゃかちゃ!!
ブロロロロロロロロロロ
…………
何でエンジンがかからないんだよ!
扉が開いていても関係ない。走り出してしまいさえすれば、車の外の影の主は振り切れるはずだ。……なのに…………
何で、…………
何でエンジンがかからないんだよ!!
影は、笹木を引きずり出すのを止めた。
その代わりに、今度は、シートベルトに手をかけた。笹木の体を守っていたはずのシートベルトが、笹木の首に……ま、巻きついていく。
「く、苦……しい……」
笹木は、首に手をやって、抵抗している、が……
「た、助……ケ……テ…………」
その言葉を最期に、首にかけていた手は、ブランと、タレサガッタ…………
おいおいおいおい!!
なんだって、何だってんだよ〜〜〜
シートベルトを首から外し、影は無理矢理に彼女の体を外にヒキズリダス……
彼女の首からも、彼女の物と思われる液体が流れているのか、肌色の面積がだんだん少なくナッテイク…………
ありえない方向に曲がりながら、抵抗することのない彼女の体は…………
グシャ
外に…………オチタ……
ダメだ、おかしくなりそうだ。はやく、はやく、ここから、タチサラナイト……
かちゃ……
ブロロロロロロロロロロ
…………
沈黙
何でなんだよ!!
バタン
いきなり、助手席の扉が、シマッタ。
そして、それと同時に…
バン…………
バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバシバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン
え、え、え……!?
腕の影が運転席の窓を叩きまくって、大きな音をあげている。
な、な、な、な、な、な、な、な、な、何なんだよ〜!?
かちゃ……
ブロロロロロロロロロロ
…………
かからない…………
けたたましい音で耳が痛い。
キーを回し続けながら、怖いけど、音の鳴っている窓を見る。
!! えっ!
窓を叩いている影の本体と目が合った……
な、何でお前が!
その時、
ブルルン
!! かかった!
反射的にアクセルを踏みつけ、俺は山を抜け出した…………
次の日、俺の家に警察が押し寄せた。笹木の遺体は、そのまま道端に放置されていたようで、俺は、笹木を殺したという罪に問われ、捕まった。
証拠になったのは、車内に残った笹木の血痕と、同窓会に来ていたやつらの証言だったという。
「川井と笹木が二人で車に乗りこんで、どっかいくの見てたぜ」
「そういえば、川井酒飲んでたよな。飲酒運転じゃん」
…………あいつらは、周りのことしか見てないのか?
もちろん、俺じゃないっていう反論はした。だが、この状態からは、何を言っても、信じてもらえなかった。
俺は今、刑務所の中にいる。
そして、今でも、同級生の集いの日の恐怖は、忘れることが出来ない。
[同級生の集い]か……
この単語から、この単語を発した本人を回想した。
なあ、なんで、
何であの時、
目が合った相手がお前だったんだよ、
なあ、岸和田……
飲酒運転は犯罪です。絶対にしないでください。
他作品も読んでやっていただけると幸いです。