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機械じかけの鳥

作者: アルファン

風が吹き、命が芽生える季節

豊潤な香を楽しみ、その豊かさを味わう季節が来た

その生命に感謝し、命を収穫しているさなか

またもや機械じかけの鳥が空を飛ぶ

無機質な瞳が時々こちらを羨ましそうに眺め

雲の合間へと消えてゆく。

一年の間に二回そんなことが起きるこの世界

この世界に住んでいる私たちは

この世界の全ての生命と知恵、それと自分自身に感謝し生活している


日々を生活している中、時には退屈になる日もある

そんな時は決まってあの「無機質な鳥」の話題が出る

監視している、誰かを捜しているとか色んな推測が飛び交うけど

私は強くこう思う。

「私達もああいう生活がしたい」

そう考えてしまう、なぜならあの瞳はとても寂しそうだから・・・


ある蒸し暑い夜、私たちの知恵者がこう提案した。

「この体に集いし猛りを解放することをやろう」

私たちは暑さには弱い。

だからこの季節は嫌いだけど、それを無くそうと言うのだ

その結果、様々な提案がだされ

好き勝手に自分を解放する習慣が出来上がった。

真ん中に火を焚き、それに向かって自分のやりたいことをやる。

誰が評価するわけでもない、本当に自分勝手な行事になった。


それを年一回やる行事にして以来、あの「機械じかけの鳥」が

いつしか見にやってくるようになった。

そう、いつも通り寂しげな瞳を輝かせながら・・・


あの行事が出来て、もう何十年も月日が経った日の事

私の体もサビつき、色あせていた頃

あの行事をやっている最中機械じかけの鳥が飛び込んできた

口が開き、中から出てきた皮が弛んだ私達とどこか似ている人たち

その人?達が一斉に火に向かって叫びだした。


「私は取り返したぞ!!」

「なんて素晴らしい空気だろう!!」

「この大地の感触!忘れていた日々が蘇る!!」

「たとえこの身が滅びようとも後悔はない!!」

「素晴らしい行事を開いてくれた!誇りに思う!!」


ひとしきり叫んだ彼らはやがて灰となってこの世から去った。

皆気味悪がってさっさと帰ってしまったが

私はその灰を自分のお気に入りの海岸に埋め

生命が実る種をその場所に蒔いた。


私の片隅に追いやられていた顔がふと浮かび

私はこの言葉を残してその場を去った。

「ありがとう、私を残してくれて・・・。」


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