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8話:闇に咲く華(余話そのころのアスカ)

マサハルが胡蝶の待つ場所へ向かった後、アスカは不知火屋の賓客として接待を受けていた。

見る人が見れば御大尽遊びではないかと見紛うほどである。


「でね。父しゃまがこうする。そしたら3人たおしちゃった」

「そうかい、そうかい」


道中でのマサハルの立ち回りをアスカが風牙にたどたどしくも身振り手振りを交えて説明する。

風牙はマサハルとの対峙の時とは打って変わって好々爺の表情でそれに相槌をうつ。

周りでは不知火屋の遊女や禿が同じようにアスカの話を聞いている。


「それでね。ねぎしゃんもって父しゃま言ったの。まだやりますか?」

「きゃ~、あぁ様お上手ぅ」


相手を褒めて相手をのせるという行動は遊女にとってお手の物である。

アスカも興に乗ったのかますます饒舌になる。


「アスカは父しゃまにブンッて投げられたけど泣かなかった」

「お強いんどすね、あぁ様」

「まぁ様酷いどすね。うちらがきつう言うときますえ」」

「また父しゃまにブンしてもらう。たのしかった」

「屋根の高さまでブン投げられて楽しいってお前さん剛毅やなぁ」


あまり動じた様子のないアスカに風牙はかつてのマサハルを思い出し笑みを浮かべる。

マサハルもまたそういう事をされると逆に目をキラキラさせてはしゃいだものだった。

ふと、気になった事があるのでアスカに聞いてみる。


「嬢ちゃんは将来何になりたいんや?」

「嬢ちゃんじゃないアスカ」

「ははっ。こりゃすまんな。アスカは将来何になりたいんや?」

「父しゃまにお料理おしえてもらって、お団子屋しゃんになる」


なんとも可愛らしい夢ではないか。

そう思う反面、己の生涯の宿敵の血を引いてるにしてはいささか平凡な考え方だなと

身勝手な失望にも軽く陥る。


しかし、次の言葉が風牙を腹を抱えて笑わすこととなる。


「でね。母しゃまみたいな立派なおしゃむらいになる」

「ほ?」

「こまった人を父しゃまみたいにお助けするお団子屋しゃんになるの」


瞬間、部屋内に風牙の笑い声が響き渡る。

顔にはうっすらと涙まで浮かべている。

アスカは不思議そうな表情でそれを見つめる。


それがどういう事か本人もよく解っていないだろう。幼いのだ。

しかし、己の父のやっている事を本能的に理解している。

先程から観察しているが勘がやたら鋭く、マサハルと椿の影響だろう。

常人のものの考え方をしていない。


マサハルがいなくなって交わしたやり取りからして明らかだった。


「父しゃまどこにいったの?」

「胡蝶っていう姉ちゃんの所に行ったわ。もしかしたら嬢ちゃんの新しいおかんになるかもなぁ」

「母しゃま増えるの?」

「はい?」

「アスカは母しゃまが好き。椿母しゃまも好き。アスカと姉しゃまが良い子にしてると、

 母しゃまが増えるかもって椿母しゃまが言ってた。それはとてもいい事」

「すごい考え方やのう」


ちょっとした悪戯で言ってみた冗談であった。

にもかかわらず父を別の人間に取られるではなく、母が増えるといった。

その捉え方に風牙も少し驚く。

すぐさま驚愕することになるのだが。


「けどすごい。おとこの人も母しゃまになれるんだね。おべんきょうした」

「え゛・・・・(初見で見抜いたいうんかい。わしでも無理かも知れんことやぞ)」


そして、先程の身振り手振りから刹那の動きを彷彿させるような筋を見せていた。


(こりゃおもろいわ。なり小さくてもしっかりあのボケの血ぃ引いとる)


「おじじ。アスカまじめに言ってる。笑うのはよくない」

「おお。こりゃすまんかった。よっしゃ、今から遊ぶか」

「アスカお手玉とおはじき得意」

「あほ、ここでの遊びを爺が教えたるわ」


そして、不知火屋で手すきの遊女達を集めてアスカの相手をさせるのであった。

マサハルが胡蝶と対峙している間、部屋は大騒ぎとなる。

風牙は率先してはしゃぐ。

アスカも動き回り、お猪口に注がれた甘茶をコクコク飲み干す。

その返礼として振舞ったマサハルお手製の飴の美味しさも影響したのであろう。

その気前のよさと愛らしさが加わり、一躍遊女達の人気者となるのであった。




余談ではあるが、翌日共に寝ていたマサハルがアスカのおねしょに気付き、


「ひぐっ、ひぐっ」

「寝る前にあんなに水気取らせて何考えてるんですか!」


と、風牙のもとに怒鳴り込む羽目となった。


さらに余談ではあるが、友達が増えたアスカがその事を帰宅した刹那に

喜色満面の笑みで報告した。


「あのね。ともだちいっぱいできた」

「あら?よかったじゃないアスカ」

「いろんなお遊びおしえてもらった」

「どんな遊びかしら?」

「えっとね。こんぴらふねふね・・・」


椀を持って覚えた遊びを披露するアスカ。他にも様々な座敷遊びを披露する。

それを見てどこで覚えたのか理解した刹那。


「子供を遊郭に連れてくなんて何考えてるの!」

「も、紋日だったんですから縁日と同じですよぉ」

「変な遊び覚えてきちゃったじゃない!」


と、マサハルのもとへ怒鳴り込み折檻することになる。


もう一つ付け加えるならば、


「なんじゃこりゃあああぁぁぁっ」


不知火屋からの請求金額を見て顔面蒼白な大河の絶叫が遠い東の地に響き渡り、


「あーさんだと!?どこの誰か知らないがギオン一の遊び人の座は大河さん譲らんよ!?

 格の違いを見せてやる。待ってろ胡蝶、今度こそ落としてやる!」


と、後にギオンでまことしやかに囁かれる事になる

不知火屋を借り切って豪遊したという伝説の遊び人あーさんの存在に闘志を燃やすのであった。

余話なのでかなり短いです。

こういう話は好きなんですけど、それだけじゃ話は進まないから

取り扱いが難しいものです。

今日明日に「そのころのミコト」編をUPして本編に戻る予定です。

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