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小さな飯屋の繁盛記  作者: 大原雪船
第1部
3/55

3話:依頼(前編)

やっと更新できました(汗)

遅れた理由はリアルの忙しさと禁煙によるイライラです。


拙作を読んでいただいている皆様申し訳ございませんでした(涙)

「良庵」は飯屋である。

にもかかわらず、マサハルを頼って客のみならず様々な人が相談にやってくる。



家の屋根に穴が開いたと女性に言われれば、

暇をしている大工を紹介し、


借りた金を返せなくて困ってると男性に言われれば、

日雇いの仕事を紹介しつつ返済の期日を延ばしてもらうように頼みに行き、


辻斬りの噂があって怖くて夜中に出歩けないと老人に言われれば、

ガウを中心に自警団を組み排除に向かわせ、


飼っている猫が迷子になったと子供に泣かれては、

常連客を総動員し捜索を行う。



まるで、「何でも屋」「万屋」の様相をていしているが、

相談料、依頼料の類は一切取らなかった。



商いの妨げになっているのだから金を取ればいいのにという提言にも


「お客から受けた相談をなるべく金をかけずに解決しているだけです。

 それに、皆さん面白がって力を貸してくれますしね。」


マサハルからすれば持ちつ持たれつの関係を構築しているだけだけなのであった。

そんな彼の人柄を信頼し、人々は助けを求めた。


その日も一風変わった、それでいてマサハルにとっては久々の本職としての

相談事が持ちかけられた。






「料理の助言がほしい、ですか。」

「ワタシ、今度ある人に料理を作るヨ。ケド、何を作ったらいいのか分からないネ。」


あまりに抽象的な相談事にマサハルは腕を組み考え込んでしまう。

ヤンと名乗ったその男は、駒鳥屋ヨネからの紹介状を持って店にやってきた。


この国では見ない服装、覚えたてと瞬時に分かる不完全な言語、

そして明らかにヒノモトに来たばかりの外国人。


見るまでもなく面倒事だと嘆息しつつも確認した紹介状には、このように書かれていた。


「彼の料理はこのままだと人前に出せない。

 どこが駄目なのかは分かるが自分には説明ができないので協力してやってほしい。」


-駒鳥屋ヨネ-


ヒノモト一の料理人と言われ、ヒノモト上層部とも繋がりの深い女商人。

そして、マサハルにとって料理の師匠だった。


マサハルは改めてヤンの姿を確認する。

がっしりとした体格に腕には火傷の痕があり、マメやタコだらけの汚い手、

背には年季の入ってそうな中華鍋とお玉。


さぞかし腕の良い料理人なんだろうと理解は出来るが、

それゆえに師匠がなぜ自分に案件を丸投げしたのかが分からなかった。

よほど、ショックだったのだろう。

ヤンの顔色はあまり良くなかった。


「ヨネサンはワタシの料理を食べないで駄目だと言ったヨ。

 ワタシこれでも祖国じゃ王様に料理を作ったネ。

 ワタシの誇りズタズタダヨ。」

(師匠、傷つけといて丸投げはないでしょう・・・)


師匠の対応に呆れるものの、異国の料理を勉強できる機会はマサハルには魅力的だった。

とりあえずは原因を究明しないと始まらないと気を持ち直し、

ヤンと店内で話を聞いていたミコトとガウに指示を出す。


「とりあえずヤンさん、どんな料理を出すか見せて貰えませんか?

 材料は好きに使って構いません。小さな場末の店ですから無い材料が多いでしょう。

 ガウは出来る限り店を回って買出しに行ってあげてください。

 大陸にしかない物でも似たような食材をガウなら見つけられるでしょう。

 ミコトは厨房の使い方をヤンさんに教えてあげてください。

 私は試食してもらう人達を連れてきますので。」


「は~い」

「分かったぞ」

「了解ネ」


返答に満足し、マサハルは外に出て行った。

1刻半(約3時間)後、審査員として常連客を引き連れたマサハルの眼前に、

様々な点心やスープ、肉料理が卓に所狭しと並べられていた。


初めて使う厨房で、しかも短い時間にこれだけの料理を!!


「器具の使い方に苦労したけど、ワタシに掛かればこんなモンネ。」


疲れた様子を見せずに配膳するヤンを見て

マサハルは彼が凄腕の料理人である事を再認識した。


「凄いよ父様。動きが父様より速かったよ!!」

「大陸の料理を久し振りに食べたけど、すっげえ旨いぞ!!」


ヤンの仕事振りを間近でみて興奮したからか、

ミコトとガウの口調も熱っぽい。


そしてマサハルよりタダで食事が出来ると聞いて集まった常連客達は

初めてみる料理に今にも飛び掛らんと目がギラ付いていた。


「どれも美味しそうですね。早速いただきましょうか?」


この言葉を合図に狂乱の宴が始まった。


「もらい!!」

「テメェ独り占めするんじゃねえよ!!」

「旦那、それはあっしが目を付けてた饅頭ですぜ!?」

「先手必勝。早い者勝ちだぞ」


米の1粒1粒がハラリとほぐれた炒飯

フカフカの皮と中の餡が絶妙なハーモニーを生み出している包子

香ばしく揚がった衣に歯を突き立てると肉汁がピュッと飛び出す唐揚げ


どれもこれも名前は知らないが、彼らにとっては初めて味わう逸品ばかりだ。


ガウは大きく口を開けて料理を次々と飲み込み、

ミコトは行儀が悪いながらも「うまいよ~」と叫びながらハグハグと料理を頬張る。

そんなミコトの世話をしながら、マサハルは料理の味を確かめながら

ヤンからコツを聞き出そうとする。

ヤンも皆の食べっぷりに気が良くなったのか饒舌になり、

料理の起源も交えて料理談義を繰り広げる。



料理はあっという間になくなり、常連客達も腹を摩りながら満足そうな表情で引き上げていった。


後には、ご飯粒1つ残らないような綺麗になった皿と、

満腹になったのか腹をポンポンと叩くミコト、

まだ足りないのか丼をリクエストするガウと

料理談義を続けながら丼料理を共同で作るマサハルとヤンが残った。


「イヤ~、皆さん食べっぷりが半端じゃなかタヨ。

 というか、あれだけ食べてまだ食うガウさんは只者じゃないネ。」

「この辺りは職人が多いですからね。皆身体を使う仕事ですから食べる量がすごいんですよ。

 あ、ミコト!!食べてすぐ横になると牛になりますよ!!」


調理と片づけを並行しながら、この後どうするかをマサハルは思案する。

ヨネが取った対応、その理由は分かった。

何が言いたいのかも、彼が行う仕事やらも理解できた。

問題は自分より力量のある相手に対してどう説得するかの1点に絞られた。




「ヤンさん、落ち着いて聞いてください。」

「ん?どうしたカ?」




ヤン自身は料理を作る事に誇りを持っている尊敬すべき相手だ。

そして人間としても気持ちの良い男であった。




「今のままだと、あなたの仕事は確実に失敗します。」




マサハルの選択はそれゆえに心を鬼とする事だった。


初めての前後編です。

長々と作ってしまうと、どこで区切ればいいのか迷ってしまいます。

前話も勢いだけで書いてしまったせいで、ちょっと不満が残ります。

後々、手直ししていきます。


禁煙・・・まさか手に痙攣が起こるとは!!

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