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小さな飯屋の繁盛記  作者: 大原雪船
第2部
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6話:独白(中編)

ちょっとずつですが調子を取り戻してきました。

やっぱり感想や意見を頂けると励みになりますね。

ご意見ご感想お待ちしてます。

これからも宜しくお願いします。


徐々に蝕まれていく心。

それと同時に全身が痛みが生じるようになった。

痛みは徐々に酷くなり一日中寝込む事もあった。

医者からはこれまでの鍛錬や実戦の疲労が吹き出たのだろうと言われた。


物好きにも東に赴く私に付いて来た連中は、私が寝込む程度で揺らぐような事はなかった。

元々、大久保家を解体した後に椿の補佐をさせる為に用意した人材達である。

戦乱中は彼等に書類仕事や計算を任せる事で私は戦の指揮に専念できた。

物好きにも程がある連中は暫しの休養を私に与えてくれた。


未だに東で頑張っている彼等も当時は相当心配したのだと思う。

その恩はまだ返せていない。というか、早く私に見切りを付けて椿の元へ走ってほしいのだが。

正直に言って、「良太派」と俗に言われている連中はありがた迷惑なのだ。

直接そう言ってやった事もあるのだが、それでも頑固な連中ばかりが東に固まってしまった。

政務に有能な連中ばかりなので、処断するに出来なかった。

事実、私が寝込んでいた三ヶ月間で今の繁栄の基礎の計画をほぼ立案してしまっている。


有能な配下に満足しつつも全く動けない自分に苛立ちを覚えた。

ミコトの泣き声を聞いても這い蹲りながらでしか進む事が出来ず、無力感に苛まれていた。


そんな私の心を救ってくれたのは師匠の料理だった。

私の元へふらりと訪れてくれた師匠は寝込んでいる間中、様々な料理を作ってくれた。

肉・魚・野菜は言うに及ばず、薬膳料理なども調理法を語りながら食べさせてくれた。

本人は「店で作れない料理の実験台にはちょうど良かった」と言っているが、

色々調べ・考えてくれたのだろう。


事実、私が調子を取り戻した時は寝込む前より調子が良かった。

そして椿や刹那よりも頭一つ分低かった背丈が徐々に伸び出し、後々の事にはなるが、

逆に二人を見下ろすようになった。今でも刹那に生意気だと耳を引っ張られる事がある。

体の厚みも増して筋骨隆々とまでは行かないが、武人らしい体付きになった。

武とはそれほど単純なものでは無いが、「体」も重要な要素となる。

今更遅いのだが、得ても仕方のない強さを手に入れてしまった。


これの恩恵を得たのは大陸に渡ってからだった。

当時の大陸はヒノモトの7倍はある規模の超大国で内乱が勃発し分裂状態にあった。

そんな状態の地に渡る事に配下から猛反対を受けたが私にはやりたい事があった。

それがミコトの教育と大陸料理の勉強である。ついでに情勢の偵察もあった。


ミコトには異国の空気というものを感じさせたかった。

言葉は分からないだろう。

だが、異国の空や大地を観る事や風を感じる事で後の糧になると考えた。

ミコトとゆっくり時間を共にしたかったのもある。

そして、一人で赴けば必ずといって良いほど騒動に巻き込まれる自分にとって

加護と枷になってくれると直感していた。


料理の方は我欲であった。

椿が自由にはさせてくれているが、私には時間が限られている事は重々承知していた。

その中で私という人間が、どれだけ包丁人としてやれるのか。

常々試してみたいと思っていた。

しかし、ヒノモトの料理を極めるには時間が足らなさ過ぎる。

武の世界に大久保幻斎がいるように、料理の世界には駒鳥屋ヨネがいる。

その領域まで辿り着く事は到底出来ない。

ならば?ならばどうするか?

自分だけの新しい料理を作り出す。それが私の出した答えだった。

ならば基本は当然大事であるが、全く違う趣向の物を学んだ方が近道になるかも知れない。


そういった思いが私を突き動かした。

そして私はミコトと愛馬と共に大陸へ渡った。


実際に大陸に降り立ったは私の糧になっている。

様々な人と様々な話をした。簡単な料理を学び、屋台を引きながら各地を転々とした。

全てを周ったとは言えない。それほどまでに大陸は広く、料理の数も多かった。

自分の知っていた料理の原典とも言える料理や大陸独特の食材を使った料理など、

ヒノモトに留まっていれば知りもしなかったであろう英知の一端に触れた。

厄介事に巻き込まれもしたが培った技術と経験、そして強くなった身体を駆使すれば、

然程の問題にもならなかった。


唯一の苦戦と予想外の収穫はガウとの出会いだった。

屋台を引いていると突然勝負を吹っかけられた。

年に見合わぬという言葉以上の剛力と速さに本気で応じざるを得なかった。

ミコトの泣き声が無ければ中断される事もなく、あの場で殺していただろう。

技を伴わない純粋な暴力での強さ。折れない心と私さえ血が騒いだほどの熱い闘争本能。

成長を続ければ武の手解きをすれば、どれほどの武人そしてミコトの守護者になってくれるのか。

それが果たして祖父の領域まで届くのか。

ふとそれが見たくなった。

好奇心に沸いた私の勧めにガウは大人しく付いてきた。

曰く「俺より強い奴にもっと会いたい」と想像通りの言葉を返してきた。


こうして私は大陸での見聞を終え、ヒノモトへ戻ってきた。

次に向かった先は、師匠の待つ駒鳥屋であった。


説明し切れなかった部分の補足をしますと、

良太が倒れたのは、疲労の蓄積と重度の成長痛によるものです。

十分な栄養補給と休養で急激な身体の成長を遂げます。

かなりのご都合主義ですが、そこはファンタジーということでww


何が言いたいかって?


「スゴイね、人体」

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