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小さな飯屋の繁盛記  作者: 大原雪船
第2部
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4話:狼煙

その料理は丼で出された汁物だった。

それぞれの丼には茶褐色・琥珀色の汁が濛々と湯気を上げている。

汁にたゆたう透明な脂分が光に反射しキラキラときらめく。

具として中に添えられたのは刻んだ葱。

一見して粗末に見えるも汁と相対した鮮やかな緑色は見る者の眼を爽やかな気分にする。

そして、透き通った汁の中に沈む黄色っぽい色をした麺だった。


丼から湧き上がる湯気は香気を存分に含み、未知の味に対する期待感を盛り上げる。

汁の中に箸を突っ込み麺を引き上げる。

縮れた麺に汁が絡み、余った分は滴となって丼に戻る。

口に含むと汁を程よく含んだ麺が喉に滑らかに飛び込む。





「アスカ、よく噛んで食べなさい」


マサハルは膝の上に座るアスカへ小さな丼に麺を取り分けてやる。

他の面々も初めは恐る恐る口に入れ、咀嚼し、貪るように食べ始めた。

誰も会話せず、ただひたすらに麺を啜る音だけが店内に響き渡る。


「感想は聞かなくても良さそうですね」


一心不乱に食べる面々の姿を見てマサハルは試作の評価は上々と胸をなでおろす。

しかし、ここで安心してばかりもいられない。

本題はここからである。

自分の家族、昔からの仲間。

結び付きが強い面々に自分の心中を語らなければならないのだから。





熱いからか麺にフーフーとひたすら息を吹きかけるミコトを見る。

公式にはヒノモト統一後、空白の6年間で最も長い時を共に過ごした愛娘。

まだ乳離れしたばかりの彼女を連れてマサハルは大陸へと向かった。

自分が観たかったというのもあったのだが、ミコトには外の世界を見せたかった。

椿のような籠の鳥の境遇にはさせるつもりは微塵もなかったからである。

今は分からずとも、それが後々の糧につながると信じて。


教育の成果か妻の血のせいかミコトは王女という身分にとらわれず天真爛漫な少女になった。

町の人間に可愛がられ、誰とでも物怖じせずに気さくに話す快活さを備えた。



翻って自分の膝元で麺を一本一本チュルチュルと啜るアスカを見る。

愛おしさはミコトと何ら変わる事はないが、自分の至らなさで共に過ごす時間が少ない愛娘。

マサハルはアスカの出産には立ち会えなかった。

原因には心当たりがあれど刹那の懐妊すら知らなかった。


初めて会った時には母の背に隠れるように自分の姿を覗き込んだ瞳の奥に

隠しきれない寂しさが感じ取れた。

おずおずと近付き、自分の姿が幻とでも思ったのか震えていた小さな手。

不在だった父、職務ゆえあまり構ってやれない母。

もう放したくないと自分の袖に籠められた年不相応の力強さは今でも忘れられない。


道半ばであった料理の修業を捨て引き取って育てると宣言した際は、

最終的には折れたものの妻達の反対を前にして頑として退かなかった。






過去には主君であり姉であった妻が、なぜ今になって自分の存在を明かしたのか。

それを単なる悪戯とは思わなかった。

否、悪戯心も多分に含んではいるのだろうが、それでも椿は早期の決着を望んでいる。


それが妻としてなのか、母としてなのか、為政者としてなのか。

恐らく総じてなのだろうとマサハルは考えた。


(柄ではないのですがね・・・)


自分の感情とこれまでの奔放な所業に苦笑しつつ、

それを紛らわせるかのようにアスカの髪を撫で回すとマサハルは未だ麺を啜っている面々に言い放った。

自分と家族の未来を切り開くために。


「食べながらでも構いませんので聞いてください・・・

料理の描写が難しすぎました。

半年以上もたついたのは、それが大きなウェイトを占めます。

これ以上やっても進展しなさそうなので妥協します。

話を書く者としてあるまじき行為ですが、

更新を進める為ということで目溢ししてくださいm(__)m


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