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小さな飯屋の繁盛記  作者: 大原雪船
第1部
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1話:とある日の光景

初執筆です。


舞台は戦国時代と江戸時代をミックスさせた様な国の料理屋です。

出す料理によっては「時代考証おかしいだろ!!」と思われる事もあるかとおもいますが、笑って許してくださいw


目標は何話になるか分かりませんが、1つの物語として作りきる事です。


駄文の投稿ですが生暖かく見守っていただければ幸いです。

 かつて、東と西に分かれての大規模な戦争が長年続いていた。

多くの英雄が現れては消え、双方の王も数代において渡り合った。

やがて、戦乱は終結。勝利した側による統治が始まった。

これはそんな国の中での物語である。

 

 ヒノモトという国の首都、ヤマトにある1軒の飯屋「良庵」は

客層が大工などの労働者がほとんどにも関わらず、

美味しい食事を良心的な値段で提供する事が評判で小さいながらも盛況な店であった。

 

「魚の塩焼き定食あがったよ~」

 

 厨房を切り盛りするのは店主のマサハル。

細目で地味な顔立ちだが動きに無駄がなく洗練されており、

まるで3人はいるかのような早さで次々に飛び交う注文を巧みに調理していく。

 

「は~い。父様、次は風呂吹き大根に豆腐の味噌汁とご飯だよ~」

 

 配膳を行うのは看板娘のミコト。

小さな身体で動き回り、周りに不快感を与えない愛らしい顔立ちで

後ろに束ねた髪の毛がピョコピョコと可愛らしく動く様は注文を待つ客の心を和ませる。

 

「らっしゃいだぞ。今満席だから暫し待って欲しいんだぞ」

 

 絶え間なく店に入ってくる客を捌くのは雑用係のガウ。

一際大柄で筋肉質、少年特有のあどけなさを残しつつも野性味あふれる風貌が

押し出しとなる凄みを生み出し、本人は愛想よい積もりでも、

客の文句が出るのを押し留めている。

 

 評判が高くなれば、客が集まる。

客が集まれば集まるほど当然の事ながら大小のトラブルも発生する。

それが話に出てくるような突発的なものであろうと人為的であろうと。

 

 これは、そんな日常の1コマ。

 

 

「何だ、こりゃ~!?」

 

 20人入れば満席状態になる店内に男の驚いたような声が響き渡る。

周囲の客も何事かと男に注目する。

 

「おう、店主。この店では客に虫を食べさせるのか」

 

 どこから取り出したのかゴキブリを摘み上げて叫ぶ男。

表情はニヤニヤと笑っており声も凄んでいるようで演技くさい。

どこぞの三文小説でも流行らない状況なら、平謝りする店主に難癖を付けるチンピラ、

運が良ければ颯爽とチンピラを退治する若侍が参上する。

 

 しかし、マサハルの対応は普通の斜め上を行っていた。

 

「虫を調理する事もありますね~。イナゴなどは佃煮にするといい味を出しますよ」

 

 男の表情は凍りつく。

これまでイチャモンを付けた経験は数多いが、こんな返し方をされるのは初めてだからだ。

対してマサハルは慣れているのか全く動じず、ニコニコと微笑んでいるようにも見える。

笑っているのか細目からくる平常時の顔なのか全く判別が出来ない。 

 

「そ、そんな事を言ってるんじゃねえ!!この店はこんなゴキブリを客に食わせるのかと聞いて  るんだ!!」

「いやぁ、あいにくゴキブリは調理法を知らないので店で出してないんですよ」

 

 あまりにも噛み合わない男とマサハルの会話。

激昂する男とノラリクラリとかわすマサハル。

 

 そんな騒ぎで客の視線は自然と二人に集中した。

平然といなすマサハルを見て常連客はニヤニヤと指を折って向かいや隣の連中と話し出す。

 

  「俺、旦那の当身に1本」

  「なら俺は投げに2本だ」

  「はいはい。ただ今、当身が10本、投げが8本、蹴りが5本だよ~」

 

 次々と客達が賭け出す。それを律儀に記録するミコト。

 

 客が集まると性質の悪い輩に因縁を吹っかけられることも増えてくる。

難癖をつけられる→ガウが力ずくで撃退のパターンがあまりにも多く、

相手が複数人いた場合はガウが何秒で叩きのめすか(計測役はミコトが行っている)、

相手が一人の場合は決まり手が何かで酒を賭ける事が店の恒例行事となっていた。

 

 安い酒代だから負けても懐もさほど痛まない、

それに加えて喧嘩というイベントを間近で観戦できる、

ちょっとした刺激が酒の肴になりえるのは、それだけ平和という事だとマサハルも

溜息を付きながらも賭けを了承していた。

 

 余談ではあるが一度金銭での賭けがあったが、

マサハルの「ミコトの教育に悪い」という一言で、以後、客が金銭を賭ける事はなかった。

その場にいた客全員が普段は感じないマサハルの視線の鋭さに凍り付いてしまったからである。

ちなみに常連客は大抵、マサハルを「大将」、ミコトを「嬢ちゃん」、

ガウを「旦那」と呼んでいた。

   

 その日の決まり手は、マサハルに殴りかかろうとした男の襟首を

いつの間にか近づいていたガウが掴んでそのまま外に投げ飛ばすというものだった。

 

 ミコトの

「またのお越しを~」

という言葉を聞いてその場にいた客は思った。

 

  (((いくらなんでも来れねえだろ)))

”剣客商売”を読んで、料理の光景をみてると食べてみたいと思ってしまいます。

”トリコ”を読んで、こんな食材があれば良いなと妄想してしまいます。

”酒のほそ道”を読んで、その光景に「あるよなぁ~」と共感してしまいます。


色んな物に影響されやすい料理も小説も素人な作者ですが今後ともよろしくお願いいたします。

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