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エデン プロトコル 〜 楽園の徒花、散りゆく瞬に花は咲くのか 〜  作者: βαcH
産声

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第16話:敗者の戴冠

 ハンガロリンクにチェッカーフラッグが振られ、サーキットがいつもの静寂に包まれていく中、中継ブースには公式プロモーターのニックが姿を現した。


「オッラアアア! アミーゴたち、歴史的な一戦を目撃した気分はどうだ! 実況のアルバロ・ガルシアだ。そして解説のサトウ・ケン氏と、ゲストにニック氏の登場だ! さて、運命のリザルトを確認していこう。……といっても、上位陣は下馬評通りだ。1位バイエルンのカイザー、2位ロッソのプリンス、3位レガシーのマジシャン。順当にメジャーなAIが並んだ。だが……特筆すべきは、最後尾の2台。AGP史上初の、ダブルリタイアだ!」


 アルバロが画面を指すと、そこには「RETIRED」の文字が刻まれた乱菊とモンスターの名があった。サトウ・ケンは、翻訳デバイス越しに冷めた声を出す。


「まあ、思った通りの結果になったね。ほとんどのリザルトは下馬評通りだ。効率を重視して走れば、物理的にそうなるのは自明の理だよ」


「ハハハ! ケン、君は一体何を見てるんだい? いつもと違うことが起きただろう?」


 ニックがARグラスを光らせ、不敵に笑う。ケンは少し言葉を濁しながら、渋々と頷いた。


「……まあ、そうだね。あの『元気』を分けるとかいう茶番は、少しだけ面白かったよ」


「楽しんでいただけたかね?」


 ニックはどや顔で胸を張り、アルバロに視線を送った。アルバロが手元の資料をめくる。


「さて、例年ならここでドライバーズポイントとコンストラクターズポイントの集計ですが、ニック、新レギュレーションでは『ドライバー・オブ・ザ・デイ』の扱いが変わるとか?」


「その通り。これはパッション・メーターとバズ・リソースによって自動的に決定される。生身のレースと違って、この『バズりトップ3』のAIには、レースの順位とは別に、正式なドライバーポイントが付与される仕様だ」


「となると……今回のポイント獲得者は、1位モンスター、2位乱菊、そして3位にようやくレースウィナーのカイザーが入る形になりますね!」


 アルバロの言葉に、ケンが顔をしかめた。


「無理やりバズに繋げなくてもいいでしょう。レースの体をなしていない」


「何を言っているんだい、ケン。レースにはスポンサーが付きものだ。彼らの目的は、何より『目立つこと』。私はそれをシステムとして先鋭化させただけさ。目立った者が勝つ。至極真っ当なビジネスだよ」


 ニックは上機嫌で、今後の展望について身を乗り出した。


「これからシステムやサービスもどんどん拡張していくよ。次戦からはAIによるリザルトインタビューを予定しているし、専用の公式アプリもリリースする。世界中どこからでも無料でライブが見られるようになる。マシンのオンボード映像、無線やAIの思考ログのリアルタイム文字化、さらには視聴者がコメントを残せる機能も実装予定だ」


「無料? 採算取れるの? さっきのスポンサーの話だと、結局赤字を垂れ流すだけになるじゃないか」


 ケンの痛烈な指摘に、ニックは肩をすくめた。


「まずは見てもらわないとね。分かっていないな、ケン。熱狂が集まるところに金は動く。最終的にはスポンサーも、そして我々も、莫大な利益を手にするようになるさ。……確信があるんだよ」


 アルバロがカメラに向かって力強く締めくくった。


「とんでもない時代の幕開けだ! 次戦はカナダ、ジル・ヴィルヌーヴ! 難攻不落の壁が待つモントリオールで、何が起きるのか。私は早速、そのアプリとやらをダウンロードして見ることにするよ! それではアミーゴたち、アディオス!」


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