第11話 キジンは所々雑だったり面倒がったりしがち ー主人公の異変解決回(弐)ー
「鬼神の弟子って、君もしかして頭が可哀想な感じの子?」
満足げだった師匠とは対照的に、憐みすら感じる目でこちらを見てくる。
おい、一体どこがよかったんだよ……!!
「鬼神なんて生まれてこの方見たこともない……ましてや弟子なんて取るはずないだろう、漫画アニメの見すぎでおかしくなっちゃったかな」
そうしてクスリと笑った奴は「こんなに残念な子だったとは、警戒するだけ損だったかな」と呟いた。
なんで人でなしの化け物にここまで言われなくてはならないのだろうか、非常に屈辱的である。
「そもそもアイツらって噂では基本現世には興味ないらしいからね。だから干渉もしてこないし出張ってくる訳がない、天狗ならともかく人間の弟子なんて取るわけがないだろう」
色々初耳の気になる情報が聞こえたけれど……いや、逆に天狗は人間の弟子を取るんですね。会ったことないからどんな存在かも知らんけど。
「さて、それでは鬼神の弟子クン」
一通り馬鹿にして気が済んだのか、そいつは改めて俺に鋭い視線を向ける。
「それが本当ならば、これから一体どうするつもりだい?」
「ふ……こうするんだよ!!」
俺は左腕の服の下に付けていた、組紐に硝子玉のような物が付いているブレスレットを引きちぎると、思いっ切り地面に叩きつけた。
「な!?」
するとそれはたちまち眩い光を放ち、俺とそいつ取り巻く景色が外界から切り離された異空間のような場所へと変わる。
「結界を張ったのか……いや、違う、一瞬にしてコチラを異空間へ引きずり込んだというのか!?」
そいつの今言った通り、俺と蟲男は最早先程までの場所にはいなかった。何故なら師匠から受け取った特性アイテムによって、別の空間に移動させたからだ。
理由は抵抗されて対処するにしても現世で下手なことをされると、悪影響が大きいかららしい。
——今、現世を生きている人間は、現実にある世界を揺るぎないものと思っているかもしれないが、実際はそうでもないからな。好き勝手されてバランスが悪くなった場合、直すのが割とメンドイ。
いや、メンドイとか言わないで欲しいんですが!!
……まぁ、そこら辺の師匠の事情はともかくとして、もう一つ大きなメリットがある。
「そうか、わざわざ自分にとって有利なフィールドで戦おうってことか」
やや落ち着きを取り戻したソイツは、殺意のこもった目で俺のことを睨みつける。
そう、この空間はある程度、蟲男の能力を制限し、俺にとって有利な状況を作り出せる場所でもあった。
——今の実力で、シキに化け物と一対一のガチバトルさせると流石に危ないからな~
そもそもバトルなんてしたくもないんだけど……まぁまぁそこはそれとして。
「酷いな……せっかく長々と付き合って、ようやく良い場所におびき寄せることが出来たのに」
その言葉と共に先程から噴き出していた黒い靄は一層勢いを増し、奴はその目を赤く光らせると、蟲と人間が混じったような完全な化け物へと変貌した。
「本気で怒った、君が何者かは知れないけど、寄生はせずに殺して魂も生身の肉体も一片残らず喰らいつくしてやる」
くぐもった、虫の羽音が混じったような嫌な音で奴はそういうと、大きな虫の下顎をガチガチと動かした。
き、キモ!?




