第10話 キジンはここ一番の名乗りにはこだわる派 ー主人公の異変解決回(壱)ー
前回までのあらすじ、師匠に嵌められたせいで大ピンチ。
って、現実逃避してる場合じゃなくて!!
「君さぁ、いつ頃どこで気付いたのかな。僕の正体はどれくらい分かっているんだい?」
目の前に対峙する絹本が喋る度に、その身体から黒い何かが揺らめくように噴き出す。やっぱりコイツは人間じゃないのか……。
以前聞いた師匠の話によると、コイツの正体は強化版蠱毒。大量の蟲霊と、これまた大量の人間の負の感情によって形作られた疫病神のような存在。自分自身も大量の蟲霊を操って、人間を呪い食い物にしている化け物だという。
「……そちらこそ、どれくらい前から人間に危害を加えてた?」
だからこそ俺はソイツに敢えて、こう問い返した。今までにどれくらいの犠牲者が出たのか純粋に疑問で、同時に少し腹立たしかったから。
すると一瞬意外そうな表情をしたそれは、クスリと笑った。
「わざわざ人間にって言うことは、僕が人間じゃないことまでバレてるんだ。凄いね、結構この仕込みには苦労したのに」
今までも身体から噴き出していた黒いものが更に激しく噴き出す。威圧感もさらに増したが……まだまだ俺が師匠に連れまわされた時に見た化け物達には及ばない。
「全部見えているはずなのに全然怯えないね。そもそもこの偽装は並みの霊能力者程度じゃ看破できないはずだし、正体が分かったとしても現実的な対処は不可能だから無視するくらいのもののはずなんだけど」
……待って、後半の部分は初耳なんだけど?現実的な対処は不可能についての説明を全くされてないんだけども!?
「ねぇ君は一体何者なんだい?」
他はともかくとしてこの問いに対する答えならば持ち合わせている。何故ならば以前、何者かに問われた際の受け答えについて打合せしたからである。圧力を掛けられたと言い換えてもよい。
「俺は——」
取り決め通りそこでやや間をおいて、神妙な顔を作ってこう答えた。
「さるキジンの弟子をしている者だ」
——…………よし。
何か知らないが、とりあえずよかったらしい。




