救い
その夜のことだった。
正院が疲れて寝ていると家老の手先の悪人がきて寝ている正院に刃を突きつけた。正院が目を覚ますと口を塞いだ。
「静姫様。」竜神様は部屋の中に飛びこんだ。
「騒ぐな。騒ぐと姫を殺す。」
「お前は 家老の手先か」と竜神様はもいった。
「それは言えんな。私に取ってはどうでもいいことだ」
「なぜ。姫を殺さなければならないのだ。」
「ある人が姫を連れて来いと言ったのでね。」
と悪人が言った。
竜神様は一瞬たじろいだ。城では力が使えない。
悪人は正院を葉がいじめにした。正院の顔が真っ青になる。
竜神様は家老の反逆の証拠をつかもうとしてこのまま行かせることにした。警備の侍が出てきたが他の悪人達と切り合いになってしまった。
「さがれ。さもないと静姫を殺す。」
警備の者達は刀を捨てた。
「このまま行かせるのです。大丈夫。静姫は殺させない。」 と大声で竜神様は言った。そして竜神様は姿を隠した。
正院は両手、両足を縛られ龍乗せられ運ばれて行った。
縛られているので外の様子は判らなかった。
どれぐらいの時間が過ぎたのであろうか籠が下に降ろされ乱暴に開けられた。正院は「あっ。」と驚いた。
「美しい静姫様。殺すのは余りにももったいない。」と家老は言った。
「家老。父上を殺したのは貴方か。」
「いいや。私ではありませんよ。」と家老は言った。
「やったのは悪人達ですよ。貴方がたは 盗賊にやられたのだ。お父上はさすがに強く弓で射て殺しました。」
「父上は貴方のことを信じていたのに。」
「家老はやっぱり家老ですよ。私は城主になりたいのです。」
と家老は 正院をにらみつけた。
「どうして家老のままで満足していなかったのです。」
「静姫。貴方もばかな人だ。尼のままでいて帰らなければ生きのることができたのに。それを殺されに戻るとは。」
「私は苦しめられている民を何とかしてやりたいと思ったのです。」
「関所は、どうしました。」
「私には竜神池の竜神様がいます。きっと助けられるでしょう。」
「おいっ。静姫を小屋へ運べ。」
と家老が言うと悪人の一人が正院を引きずりだして肩に担ぎあげた。正院は怖くなってされるがままになっていた。
手下は正院を古びた小屋の中にほりこんだ。
「本当に殺すのは勿体無い姫さんだ。悪く思うなよ。あんたが城にいると大金が手にはいらないのでね。」と手下が言った。
「貴方がたは必要以上に取り立てた年貢を横取りしていたのですか。」正院は腹を立てて手下を睨んだ。
「そのとおり米を他国へ売った金でけっこういい暮らしができたのさ。」と手下はふてぶてしく笑った。
「でもな。あんたが城へ戻ってから大金が手にはいらなくなっちまった。ご家老もやるものだ。城主を殺しといて神隠しだと。誰もがそう思っているのだからな。」
しばらくして手下達は小屋の中で酒を飲み始めた。
「悪事はばれますよ。」
「ふん。静姫。どっちみち私は 死罪だ。どうせ死罪なら姫様を殺す。」と家老は 薄笑いを浮べて言った。
「あんたが死ねばご家老様の天下だ。悪事の証拠がないのだよ。」と悪人の頭は言った。
「ああ。もったいないなあ。こんな美しい姫を殺さなければならないとはなあ。」と手下達はそれぞれ言った。
「尼を殺せば罰が下るぞ。」と悪人達は笑った。
「なんということでしょう。私は家老を死罪にせず追放するだけにしょうと思ったのに。」
正院は恐ろしくなってしまった。
「証拠が証拠さえなければ・・・」と家老は言った。
家老は悪者達の酒宴には 加わらない。
「お前達。しっかり見張っているのだぞ。今迄に大金をつかませてやっただろう。」と家老は悪者達を怒鳴りつけている。
「わかっていますよ。いつ姫様を始末するのです。
と悪者の頭は言った。
「少しかわいそうな気もしますね。」
「姫に同情するな。」と家老は言った。
家老は、正院が殺されるのを見届けるつもりらしい。」
[竜神様。助けてください。]
正院は心の中で竜神様を呼んだ。
とその時である
「静姫を離せ」。と竜神様が叫んだ。
正院が顔を上げると竜神様が入ってきた。
「なんだあ。静姫の家臣か。」と悪者の頭が刀を引き抜いた。
「おやつ。こいつは静姫の家臣ではない。何者のだ。お前は。」と家老は驚いた。
「私は竜神池の竜神だ。静姫を殺させはしない。静姫を返して貰おう。」
「ふざけるな。竜神だと。お前も殺してやる。」日
と家老は、刀を抜いた。
「お前達。酒ばかり飲んでないでこいつを殺せ。」
家老が怒鳴ったので悪者達は慌てて刀を抜いた。
「いけません。竜神様。人間を殺せば地に落とされてしまいますよ。」正院は捕らえられているのも忘れて叫んだ。
「大丈夫です。静姫様。」と竜神様は正院を見て微笑んだ。
悪者達は刀を振りかざしたまま動けなくなってしまった。
「竜神様。」と正院が驚くと竜神様は微笑んで正院の縄を解いた。
「心配なかったでしょう。悪者達は動けないのだから。」と竜神様は正院を起した。
「貴方に出来ないことはないのですね。」
と正院は竜神様と一緒に古い小屋を出た。
「この悪者達をどうしましょうか。このままにすればまた静姫様を殺そうとするでしょうね。」と竜神様は困った様に言った。
「私はいくら悪者だと言っても死罪にすることはできませんしね。」と正院はじっと古い小屋を見つめた
「貴方様は本当に優しいのですね。」と竜神様は正院を見た。
「私も仏に仕えた身ですから。」と正院は竜神様から目を反らせた。
「いっそあのまま動きを止めたまま帰りましょうか。」と竜神様は、微笑んでいる
「静姫様。竜神様。」と義晴が飛び込んでくる。紀森も飛び込んできた。「大丈夫でしたか。悪者達に連れて行かれたので心配しました。」と紀森は言った。
「また静姫様をお守りすることが出来ないのかと思って。」と義晴は苦笑している。
「悪者達や家老は動けずに刀を振り上げたままですよ。私の力で動きを封じておきました。」と竜神様は微笑んでいる。」
「静姫様。あの者達にしかるべき裁きを受けさせ。家老はすべての財産と家老の職を取り上げましょう。」と紀森は 正院を促した。
「私もそのつもりです。他の者を呼んで家老と悪者を捕らえさせなさい。」と正院は言った
さて家老と悪者達は 全部捕らえられ牢獄に入れられた。
城の者達は 正院に今迄の話を聞かされ驚いていた。
正院は悲しそうな顔で目を閉じた。
「そろそろ。お別れですね。」と竜神様は言った。 正院と竜神様は城内の庭にたたずんでいる。
「ねえ。竜神様。」と正院はしみじみと言った。
「私は何時までも側にいてもらいたいのですがそうもいきま
せんね。」と正院は竜神様を見なかった。」デル大人成行人
「心配しなくても竜神池へ来れば何時でも姿をお見せします」
と竜神様は微笑んで正院を見た。
「それでは竜神池に帰ってしまうのですね。♪♪」
「はい。静姫様。私は何時までも貴方のことは忘れません。」
そう言うと若侍の姿をした竜神様はたちまち元の金色の竜の姿になった。
「さようなら。竜神様。」正院の目から大粒の涙がこぼれた。
「さようなら。静姫様。」
竜神様はそう言うと天高く登り始めた
家臣達や腰元達はみんなその場に立ち尽くした。
城の外にいた者も大声をあげて驚いていた。
正院は竜神様の姿がみ見えなくなるまで見送っていた。




