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竜神  作者: 岡本ゆきえ
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二人の忠臣

森の木々達も小さな点に見えた。

「森は美しいですね。」と正院は竜神様に言った。

「そうですね。静姫様。もうすぐ関所を超えますよ。」

竜神様は関所からだいぶ離れた所まで飛ぶと目立たない所で下に降りた。

「さあ。姫様。下りてください。」

「これからどうしましょう。」正院はそう言って竜神様の暖から下りた。

「さぁ。どうしましょう。これから考えましよう。」そう言うと竜神様は 若侍の姿になってしまった。


日は高く登り竜神様は 木立に座った。

「国の様子を見てみたいのですが国の人達は幸せでしょうか。」

「必要以上に年貢を取り立てている様ですよ。幸せなく苦しんでいるのかも・・・」

と若侍になった竜神様は 優しそうな目で言う。

「それは困ります。殺された父上は立派な城主でした。眠の言うことは善く聞いてやり困っている百姓には年貢を特ってやったものですよ。もちろん必要以上に取り立てをすることがなく国の民から大変慕われていたのです。」

正院は涙をこぼして竜神様の側へ座った。

「貴方の父上を殺した人物を知っていますか」

「ええ。よく知っております。父上がよく信頼していた家老です。先代の家老の息子で父である家老が病死して父上が良くしてやり家老にしてやったのです。先代が立派な人物なの五で父上が息子も立派な人物だろうと思ったものですが腰元に手を掛けようとして父上がいさめたのです。それを恨んで父上を

殺し自分が城主になろうとしたのに違い有りません。」

「そうですか」。

「実は父上のほかにも殺された人がいます。父上に照良の悪事を伝えようとした正長という下級武士です。」と正院は、吐息五を漏らした。

「その正長は私に仕えていたのですが照良の下町の乱行を父上に上告しようとして照良に殺され池で冷たくなっていたのです。確信はありません。でも私は正長を殺したのは照良の部下だと思っています。」

「その男は、そうとうずるがしこいですね。さて。どうしましょうか。」

「私は照良を国から追放してやろうと思います。一度は尼になったのですから死罪にすることは差し控えましょう」

「貴方はお優しい方ですね。それでは様子を見に行きましょう。」と竜神様は立ち上がった。

正院も土を払って立ち上がった


正院と竜神様は森をぬけ町に入った。

町は賑わっていたが道を行く人々はみんな暗い顔をして痩せていた。体もまるで年寄りのようでひどく疲れている風である。」 正院は宿場で見た人々の掛け声や飴を買う子供達の姿もない。

「お母さん。お米のご飯が食べたいよう。」

王院がふと道端を見ると痩せた子供が母親にすがって泣いていた。

「よしよし。今、あわのお粥をあげるからね。」と母親は薄いこのお粥を子供にやった。さして母親は立っていることもできずに倒れてしまった。

「ごめんね。私が倒れてしまったばっかりに・小山

と母親は悲しそうに子供にいって立ちあがろうとした。

「どうしたのですか。」正院は思わず母親を起こした。

「すみません。ご家老様は 医者にかからず病気の者にも働けという。医者かかるお金もみかな差し出さなければならないのです。ご家老様は食べ物を人々に下さるのですがわずかで子供人にお腹いっぱいご飯をあげることすら許されていないのです。」

正院は袋の中からアケビを取り出すと子供に差し出した。

「これは山からいただいた物です。山に行けば食べ物が見つかるでしょう。」

「みんな飢えているので山のアケビは取りつくしました。峠を越えればいいのですが関所の役人は アケビを取りに行くか。ことを許しません。これは、どこに有ったのですか。」

「関所を抜ける前に取りました。」

「ありがとうございます。さあ。これをお食べ。」

母親は こどもにアケビを食べさせた。小さな子供はむさぼるように食べている。

正院は袋の中にアケビがもう一つあったので母親にあげた。母親は手を合わせるとアケビを受け取り食べ始めた。


竜神様はそれを見て正院に耳うちした。

「事は急がなければなりませんね。早くなんとかしなければ、みんな飢えて死ぬでしょう。」

「私は情けなく思います。自分の力が・・・」

「大丈夫。きっと巧くいきますよ。」

「ではこれで・・・」正院は母親と子供に頭を下げた。

「尼様。ありがとうございました。」

と母親と子供は頭を下げ正院と竜神様はその場を立ち去った。

「竜神様。私が生きていることを照良に証明して悪事を暴くのはどうかしら。」

「そうですね。そうしましょうか。でも今でも貴方の見方になってくれる侍を探しましょうか」

「いったいどうやって。」

竜神様は立ち止まって言った。

「もう少し行った所に姫様の見方がいますよ。」と竜神様がいったたので正院は不思議に思いなら歩いていた。


しばらく歩いていると向こうから疲れた様な顔をした四十才ぐらいの侍がなにやら急ぎ足で歩いていた。

「城主様と奥方様はどこに消えてしまわれたのだ。いつまでも家老にいい様にはさせぬ。」侍は一人ではなかった。もう一人三十才ぐらいの侍がいた

「もしもしお侍様。」正院は懐かしく声を掛けた。

「はて尼様。どうかなさいましたか。」

四十才ぐらいの侍が立ち止まって正院の顔を見る。

「はてこの尼様。どこかで昔お会いした様な気もするが・・・」

と若い侍が言う。

「何か懐かしい気がするな。」と四十才ぐらいの侍が行った。

「もしや貴方は」二人の侍は顔を見合わせた。

「私は静姫でございます。」

二人無飲む侍は顔を見合わせ地に手をついた。

「間違いござらん。静姫様だ。静姫様。私達は貴方が小さな

時からご城主様より姫様をお守りするようにおおせつかった者でございます。申し訳ございません。今の今まで私達は貴方様をお守りすることができませんでした。死罪を言い付かってもしかたがございません。」

二人の侍は頭を地にこすりつけた。

「私は貴方方に死罪を申し渡すことはしません。貴方方に力になって欲しいのです。」と正院は泣いた。

「はい。それはもう。」と三十才ぐらいの侍は言った。

「私達は家老の企みにより父上を殺され母は病死しました。私はそれで出家したのですが国のことが忘れられず竜神様に助けられて帰って来たのです。」

「えっ。竜神」と二人は同時に驚いた。

「はい。実はこの方は竜神池の竜神なのです。」

竜神様は微笑んで言った。

「お立ちください。」と竜神様は二人を助け起した。

「私は人間ではありません。森のムジナを操り水を支配する竜神なのです。」

「本当ですか。少し信じられない気もするが。それはありがたい。」と四十才ぐらいの侍は言った。

「そうですね。静姫様が戻って下されたのも不思議といえば不思議ですが竜神様がお供というのも私にはなんだか不思議な

気もするのです。」と三十才ぐらいの侍は竜神様を見た。

四十才ぐらいの侍は名前を紀森といい正院が生まれる前から。正院の父上に仕えていた。

三十才ぐらいの侍は名前を義晴といい十一才の年に静姫である正院を守るために城で仕えていた。

「紀森様。城でのことをお聞かせくださいこの国の人々は幸せではないのですか。」

正院はさっきの子供と母親のことを思った


小さなこどもが薄い粟のお粥を食べもっとお米のご飯が食べたいと言っている。おまけに母親は病気でそれでも家老は働けと言う。

「城では家老が権力をふるっています。わざと腰元をからかい民から取り上げた米を他へ売りお金を絞り取って逆らう者を殺します。私と義晴は 家老に逆らって殺されるよりも城主様や奥方様。それに静姫様を密かに探していたのです。」と紀森は言った。

「さて。問題はどうやって家老を追い出すかですね。」

と竜神様は腕組をした。

「この頃、家老は何か悪い夢でうなされている様でとてもやつれていますよ。」と義晴は言った。

「それは ムジナ達が夢の中に入っていろいろと苦しめているのですよ。」と竜神は言った。

「へえ。ムジナって夢の中に入れるのですか。」

「はい。悪戯好きなムジナ達ですがこういうことに役だってくれるのです。」

「とにかく静姫様と竜神様。私の屋敷にお泊りくださいささやかではありますがお米のご飯がありますよ。」

と紀森が言うので二人と義晴は、とりあえず紀森の屋敷へ行くことになった。


紀森の家ではささやかながらお米のご飯と焼き魚が振舞われた。義晴もありついている。妻はお雪といい優しそうな女性であった。

「なんと美しい人でしょう。」

お雪は傍らに正座しながら正院美しさに驚いている。

「お雪。この方は城主様の娘の静姫様なのだよ」

と静かに紀森は言った。

「えっ。確か静姫様は、城主様。奥方様共々神隠しにお合いなったのでは。」

「お雪。城主様は。家老に殺されたのだよ。その上奥方様は病死してしまわれたのだ。」

お雪は驚いて正院の顔を見た。

「それではどうやって静姫様はこの国にお帰りになられた

のでしょう。」とお雪は不思議がった。

「竜神様だよ。姫様には竜神様がついておられるのだよ。」

と紀森は竜神様の方へ手を示した。

「えっ。このお若いお侍様か・・・」

「この方は竜神様の化身なのだ。」紀森がそう言うとお雪はまじまじと竜神様を見つめている。

「何という不思議なことでしょう。」

とお雪は竜神様にお茶を注いだ。

「これからはどうなさるおつもりですか。」

と義晴は心配そうに聞いた。

「そうですね。もっと苦しめてやりたいのですが民が困っているので余りそのままには出来ないでしょう。心配することはありません。竜神に出来ないことはないのです。」

と竜神様はその場にいるみんなに言い含める様に言った。

「静姫様。竜神様。何時までも私の屋敷に何時までもいて下さいね。」とお雪は言った。

「紀森様。何時までもお世話になることは出来ません。」

と正院は微笑んだ。

「いずれこのままではいきますまい。いずれ事を起さなければならないのです。」と正院は目を閉じた。

「それはそうですが・・・」

と紀森は困った様に義晴と顔を見合わせていた。

「紀森様。義晴様。私は一度出家した者です。民の幸せのために国に戻れましたら一国の姫として尼を辞めようと思うのです。私はある住職様に助けられ生きることが出来ました。仏様の教えも守ってきたつもりです。でも私ばかり幸せでいることが出来ません。姫に戻り民の幸せのために尽くしたいのです。」と正院は紀森と義晴の顔を真剣な眼差しで見た。無紀森と義晴の目は輝いた。

「姫様。私達も貴方様に仕えさせて下さい。私は何時か貴方様が国に戻られると信じて耐え忍んでおりました。」

と義晴は言った。お雪はポロポロと畳の上に涙をこぼす。

「姫様。実はご城主様がいない間夫はひどく苦しみました。民から米を取り上げ家老は、あろうことか私の夫にひどいことをさせ民を苦しめる役人にしたのです。米は一粒も残さず取り上げろ。病人は床を上げて働かせろ。逆らう者は殺せと」

「私は静姫様が戻られるのを信じて嫌な役人になりました。民から恨まれる役人に。家老は私の心を知ってそうさせたの

です。」と紀森はじっと畳を見つめていた。

「私だって。私だって。家老は逆らう民を殺す役人にしたのだ。私は払うむお金がない人をたくさん牢に入れなければならなかった。亡くなられた城主様ならきっとこんなことはなさらなかった。」と義晴は顔を上に向けると涙を流した。

「静姫様。いい考えがあります。」と竜神様は言う。

「私が力になりきっと助けてあげますから四人で城に行くというのはどうでしょう。」

「貴方は竜神様でしだね。」と正院は竜神様を見つめた。

「家老に名乗りをあげ驚かせてやるのです。」

「それはいい。家老のやつどんな顔をするだろう。城主様を殺したとなると死罪だからな。」と義晴は言った。

「城では、ムジナ達が暴れております。いざとなったらムジナ達が姿を現して城内を暴れ廻るでしょう。」と竜神様は言った。


さて正院は一夜を紀森の屋敷で過ごすこしにしたお

竜神様は、相変わらず大空の中に姿を隠していたが正院は頼

もしいと思った。襖を開け正院は夜空の星を見た。

見事な松が枝を伸ばして良く手入れされている。地には玉砂利が敷きつめられ踏み石がしてあった。行灯の油がゆっくりと燃えていた。

〔何と美しい星空なのだろう。〕と正院は思う。

[今はすべてを家臣と竜神様にお任せしなければ・・・]

と正院は思っていた。

[いったい家老は城の中でどんな顔をしているのだろう。殺すには忍びない。けれど何時までも好きにさせてはおけない。」 正院は ふすまを閉めた。

部屋には贅沢な絹のふとんが一組整えられておりふすまには見事な鷹の姿と松の木が描かれているおい

正院は袋の中を開けた。












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