まずは進路よね
マリアが開き直って推し活の為の人生設計を考え出して1年後、6歳の誕生日パーティーで具体的な目標が定まった。幼児期に母親の慰問を兼ねて遊びに行っていた孤児院が盛大に行ってくれたのだ。
この世界では、通常5歳までの身寄りの無い幼児が暮らし、6歳になると卒業を兼ね、誕生日パーティーをするのが習わしとなっている。
貴族であるマリアは、家が多額の寄付を行っているため感謝を込め通常より盛大に行われ、以後は一緒に遊ぶ形では無く、母親と共に慰問として訪れる事になるのだが、これを不服としたマリアはシスターとなる事を思いつく。
(そうよ、中等部卒業後に就職するのも結婚するのも孤児院からは遠ざかってしまう!前世保育士の私としては、子どもたちと一緒に遊べて美味しいオヤツとご飯が食べられるここは楽園。手放す事は出来ないわ!)
1人胸の内で進路を決めたマリアは、平民で同じく6歳になったばかりの少女の就職先として、自分のメイドとなることを提案。
利発でテキパキとシスターの手伝いをしていた美少女で、母親の印象も良かったためその場で採用が決まり、今も馬車内でタイミング良く食事の話題を振りメンタルケアをしてくれている。
「ねえミア、私シスターになりたいの。だから協力してくれない?」
メイドとなって召し抱えられ、一通りの教育が終わった頃、ミアがマリアの専属になった日に告げられた。
「お嬢様がシスターに、ですか?」
ミアが困惑するのにも訳があった。
通常のシスターは基本的に平民の出で、孤児院の卒業から見習いを経て就くか、離婚後に嫁ぎ先兼、就職先を失った行き場の無い女性の寄る辺としてなるもので、貴族令嬢の就職先としては決して選ばれる事はない。
それで無くとも、貴族というものは乳母や教育係が世話をするのが当たり前で、自分で子育てをする事は無いのだから。
「ええ、私の夢はね、シスターとして子どもたちの健やかな成長を見守りながら、毎日3食おやつに昼寝付きの生活を維持し、崇拝する対象を見付けて拝み称え、尚且つ巡礼をしたいの」
「は、はあ。あの、でも崇拝する対象を見付けるというのは?シスターになるのであれば神様にお仕えするのですよね?」
一瞬、時が止まったかのようにマリアは静止し思考を巡らせる。
(神様、そうね。そうよね。この世界にも神様は存在するわ。盲点だった、、、。でも、でもでも推しって推す側にとっては神様も同然じゃない?考えようによっては神を讃えるんだから、推しを崇拝する=世界の神を崇拝するってことよね!?つまりは神様にお仕えするのは推しに貢ぐ精神と同義ってことで何も間違いでは無いはずよね!!)
「え、ええそうよ。神様にお仕えするのだから、崇拝するのは神様ね、、、。とにかく!私がシスターになりたいという事を理解し、支えて欲しいのよ。お願いできるかしら?」
ツッコミ所が満載のお願いであろうと、一介のメイドが主人の要望に否を唱えられるはずも無く、この日からミアは半強制的にマリアの野望の手助けをする事となった。