一章〔8〕扉の前
しばらく無言で歩く。実際ランクとかよく分からない。どのくらい『星』が強いのかも分からない。だから、気まずい空気の中チアキに聞いてみることにした。
「あのさ、ランクってどんな感じなの? 教えてほしい」
「あ、ランクのこと教えてなかったね。E、D、C、B、A、S、SS、SSS、ゴッド、スターランクがあるよ、それぞれのランクの間にはかなり壁があるよ、でも、ゴッドランクとスターランクは別だけどね」
「お兄さんはこの世界だとどのくらい強いの?一応最上位のランクってことだよね 」
「ゴッドランクにも強い人がいる。ラブちゃんとかカルロスさんとか。だから一番かどうかは分からないけどお兄ちゃんはこの世界で上位5人以内に入ると思う」
ゴッドランクとスターランクの違いは実力として強いか、スキルが強いかの違いだろう。星を倒せばスターランクになれるとしたらスターランクの人間もかなり強いはずだ。
「ないとは思うんだけどね、もし、お兄ちゃんが…… ハルトが死んでたらどうしよう。ラブちゃんもいるし、大丈夫だと思うんだけどね…… 」
不安げな顔でこちらを見てくる。チアキの兄が死んでいた場合自分に何ができるのだろう。壁になる事は本当にできるのだろうか。そもそも自分はSランク程度の魔法が使える。相手はスターランク。ランクの差がどこまであるかは分からないが、ほぼ星に負けるだろう。せめて、チアキだけでも守れれば。
「もし、この先に誰もいなかったら、きっと無事に逃げたと思おう。もし、この先にお兄さんとラブさんがいたらみんなで帰ろう」
「うん」
「んで、もし、この先に『星』がいたら俺が時間稼ぎをする。その間に転移魔法でチアキは逃げてくれ。何も考えずに」
「それって、死ぬってこと……?」
ゆっくり息を吸ってチアキは口を大きく開く。
「バカにしないでよ。私だって騎士なんだよ……! 見捨てて逃るなんて、できるわけないじゃない」
「生きてほしい。もし星に会ったらどうにもできない。せめてチアキだけでも生きてほしい」
それは懇願だった。何もできない自分を情けなく思う。力のない自分に出来ることが時間稼ぎしか考えられない。そもそもできるかも分からない。それだけ無謀な戦いだ。この世界で初めて会って好きになった彼女に生きてほしい。自分はもう一度死んでる人間だから。
「生きてほしい。おれが死んでも笑っててほしい」
「無理だよ」そう小さくこぼした彼女は今にも泣きそうだ。
お互い目を逸らしながら進んでいると扉が見えた。
「でかい扉だな」
入ったらもう戻れない。現実を受け止めるしかない。それがどれだけ認めたくない現実だとしても。
「入ったらもう引き返せないよ。アケボシ君逃げていいんだよ。これは私たちの戦いだし」
「何があっても君を守る。大丈夫。みんなで帰ろう」
そうして扉を開けたのだった。




