一章〔6〕身勝手な少年
「先に言えよ! めまいでくらくらしたじゃないか!」
と少し強めに注意する。しかし思っていたより凄い威力が出ていた。体の調子を考えると打てるのは3回で限界そうだ。
「どう? 凄いでしょ魔法! アケボシ君は私よりセンスありそうだから、この先に進んでもなんとかなりそうだね! でもなんかあったら私を頼ってよね! 私のほうが魔法慣れしてるから!」
飛び跳ねながら話してくる。可愛いのは良いことだが少し抜けている。
「そういえば、転移魔法とやら使えるんだろ、それで奥まで一気にいけないのか?」
「うーん、魔法は使う人によってだいぶ能力差があるの」
「そうなんだ。 チアキはどんくらい使えるの?」
「私の場合は大体500メートル以内のとこしか行けない。あと私は一人だけしか転移させることができないから、アケボシ君は真っ先に逃げてね。私は転移して逃げるから!」
チアキは転移魔法について説明してくれた。話を聞いた感じだいぶ人によって変わりそうな魔法だ。
「わりと魔法もむずいんだな。分かった。なんかあったらすぐ逃げるよ。でもチアキも無理しないようにしなよ。」
「うん! あっちに着いたらラブちゃんもお兄ちゃんもいるから大丈夫。きっと、大丈夫!」
チアキは少し俯きながら大丈夫と繰り返し言葉にしている。本当は心配なんだろう。どう声をかけたらいいのだろう。兄妹のことはよくわからない。でもとても仲のいい兄妹なんだろう___
そういえば、俺にも兄はいたらしい。流産で亡くなったそうだが。確か名前は流星。母親に対して申し訳なさが残る。でも、もうあの世界には戻れない。そもそも戻り方が分からない。
流産で兄が死んで20年後に自分も。祖母はもういない。祖父も10年前から行方不明。父は病気で入院している。残されたのは母親だけ。
結局親孝行もできなかった。
「アケボシくん? どうして泣いているの?」
「なんにもない。昔のことを思い出しただけだよ」
きっと大丈夫。母さんは元気でやっていけるだろう。大丈夫。そう自分にいい聞かせていると突然柔らかい感触がした。
「大丈夫。アケボシ君は一人じゃないよ。私がいるから。大丈夫」
大丈夫。そうやって声をかけてくれる彼女がいるから。




