二章〔14〕私は何もできない
「私は彼を屠るべきだと思います」
そう声を上げたのは白き髪の美しい女騎士。
「シルヴィアは考えすぎだっしゃよ。アサヒはなぬもしないだっしゃよ」
「まずよ、俺は思うんだけどよ、チョ、怪しすぎじゃないか? あれがほんとにアサヒだって根拠はあるのかよ」
「エレイス、彼はアサヒだ。彼は嘘をついていない。アリスも言っていた。彼は信用できる」
彼が来てから四日目、騎士達の中には彼をよく思わないものもいた。今部屋にはペスタ、シルヴィア、フユミ、ガルド、エレイス、カインの六人が集まっている。
「チョ、ペスタは優しすぎんだよ。第一、ここは神聖な騎士庁舎のなかだ。あんなモンスターを野ざらしにしてるなんて、表にバレたらどうんすんだよ。今ここで殺すべきだ」
「彼の力は私たちに必要になる。星の力を持つ彼は、魔王を倒すのに必要だ。英雄が死んだ今、私たちに残される道は彼に頼るしかない」
「私達だけでは魔王に勝てないと言うのですか。貴方はいつからそんな弱気になったんですか」
「騎士長はどう思うんだっしゃ」
「私は彼を残すべきだと考えている。そも、ラヴィルとの約束もある。彼を仮に駆除したとして、ラヴィルが敵に回る可能性もある。そうなれば私達は終わりだ。今は彼を言われた通り育てるべきだと考えている」
部屋に沈黙が訪れる。
私はいつも頼ることしかできない。夫や息子に頼り、私はすべてを失った。残されたのは、娘だけ。彼女も今、私ではどうにもできない。
「分かりました。しかし、私は最後の試験の際に彼を殺しに行きます」
「シルヴィア少し、考え直さないか?」
「チョ、面白そうっス! それでいきましょうよ!」
「エレイスも、落ち着け」
「負けなきゃいい話スッよ! あんなミノタウロスの身体してて、星の力を持ってるんすよ! それで負けたらそこまでッスよ」
「騎士長からも何か言ってください」
「彼が次の勇者になるのなら、こんなところで負けてはいけない。私はそれでいいと思う。しかし、他のときに彼を襲うのは禁約だ」
「でも、
何かをペスタが言いかけたがそれをなだめたのは同期のカインだった。
「大丈夫だっしゃよ。ペスタと俺てちでアサヒを強くするんだっしゃ!」
「分かった」
そうして、彼等はそれぞれの任務に戻ったのだった。
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「ママ、オスカーさんから連絡きたよ」
静かになった会議室に入ってきたのはアリスだ。彼女とは血はつながっていない。それでも私は娘のように可愛がっている。
「あっちは順調そう?」
「とりあえず凍土の氷は割れそうらしい。3日後に討伐開始だって」
「そう、ありがとうね」
副騎士長であるオスカーは姉の敵を、彼にとっては奥さんの仇を取りにいっている。敵の名は戦塊ガードナー。私達の故郷を破壊した。古くからエルフが住んでいたあの森を。
私は、シルヴィアを連れ、逃げることしかできなかった。
今回も、オスカー達に任せきりだ。何故なら、私ではガードナーに何もできない。魔法も普通の剣技も、届かない。戦塊を倒せるのはすべてを貫く刃のみだ。私にそれはできない。
私は何もできない。




