二章〔7〕研究職の女は基本的に変態である。
「しばらくここにいるんでしょぉ! 逃さないよぉぉ! 」
そう言うと、彼女は腕をつかみ狭い部屋に連れて行った。そして、ベットに押し倒された。
「やめろ! 俺には、会うべき人がいるんだよ! 帰らせてくれ!」
暴れる俺を彼女は無理やり鎖で縛り押さえつける。不気味に光る天井のライトが俺の恐怖を増幅させた。
「やっと2人きりになれたねぇ! 今からお楽しみの時間だよぉ!」
怖い。何されるか分からない。ボロ布をはがされ獣の肌が露出する。
「ふむふむ、こんなふうになってるんだねぇ! ちょっと痛いかもだけど我慢してねぇ」
そう言うと彼女は毛を抜き始めた。
「痛い痛い! やめてくれ、何するんだよ」
「研究に使うんだよぉ。だから君は今日は実験動物になってくれ。いいだろちょっとくらい。次肉少し削ぐねぇ」
怖い。ミノタウロスを抑えつけるほどの力。彼女はかなりのパワー系だ。見た目はメガネのポニーテールの研究職って感じだが、中身は暴走した実験体みたいな感じだ。
「いっくねぇ! せーの、」彼女がナイフを振りかざしたとき、〈バタンッ〉と扉が開いた。
「あれぇ、アリス隊長どうされましたぁ」
「騎士長、アサヒ呼んでる」
扉を開いたのは赤い髪の毛に黄色の瞳の女性だ。
「わっかりましたぁ、今鎖ほどいて渡しますねぇ。少し残念ですがぁ」
そうして鎖はほどかれ、俺はアリスに引き渡された。
「また遊ぼうねぇ、ミノタウロスくん」
「絶対嫌です」
そうして、外に出て2人で廊下を歩く。隣にいる彼女はなぜか赤面している。
「どうしたんですか?」
「服」
忘れていた。出れたことがうれしくてボロ布を奪われたままだった。獣だから、裸でもなんかそういうものだと思っていたが、中身は人間だ。倫理的に服は着ないとまずい。ただ、ボロ布を取りにあの女に会いに行くのはちょっときつい。また、怖いことされそうだ。
「えっと、どこか布ないですか?」
「分からない」
気まずい。なんか大人しすぎると逆に困る。今までの人みんなうるさかった。
「着いたよ」そう言われ前を見ると白い扉があった。
〈コンコンコン〉とアリスは扉を叩き中に入っていった。
「連れてきました」
扉の向こうにいた女性は、見知った顔だった。それは、とてもチアキに似ていた。
「フユミ・ブレードだ。ラヴィルからはある程度聞いている。座れ私の前に。アサヒ・アケボシ。アリスは外で待っていろ」
凛と透き通る筋の通った声。目は生気がない。なのに内なる何かが、こちらを訴えかけている。
「失礼します」と、アリスは外へ行き部屋は二人だけになった。
「いろいろ聞きたいことがある。すべて正直に話せ。まずお前は転移者なのか?」
「そうです」
「お前は〘均衡崩ス者〙か?」
「それは、よくわからないです。俺は元の世界で死んで気づいたら洞窟で目覚めました」
「お前は本当にスターランクなのか?」
「たぶん2つ星の力が使えます。あまり、詳しい能力は分からないですけど」
「お前は私達の味方か?」
「それは保証できないです。自分は友人のために戦います。それで、もしかしたら敵対するかもしれません」
「最後だ。お前はチアキを命を懸けて助けたか?」
「助けました」
「なぜ、初対面の彼女を命懸けで助けたんだ?」
「彼女に恋をしたからです」
「分かった。ありがとう。私の娘を助けてくれて」
先程まで硬かった表情が緩くなった。ただそれは笑顔ではなく悲しみに満ちた表情だった。
「頼みがある。ハルトの意思を継いでほしい」
「え、」
俺にできるのだろうか。彼は英雄だ。俺はただの一般人だ。
「アリス、中に入ってこい」
「失礼します」
「すまないがあれをしてくれ」
「分かりました。手握りますね」
彼女がこちらの手を握り、そして、
【脳への侵入】
意識が分裂するような激しい頭痛。自我を保てない。何かが脳に入ってくる感覚。そして、プツンと意識が途切れた。




