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星喰者  作者: K瀬
二章 反撃の炎

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二章〔4〕心霧を晴らす者



 「怖いけど、ラヴィルは可愛いよ」


 その言葉が胸に響いた___


 あまり覚えていないが、私は捨て子だった。

 森の中で魔物たちに育ててもらった。


 優しい魔物だった。

 ただ、魔物は魔物だ。

 人を襲い、物資や食べ物を奪う。

 彼らは奪ったもので私を育てていた。


 ある日、彼らは帰ってこなかった。

 幼い私は一人ずっと待っていた。

 いつものように帰ってくるのを待っていた。


 一晩が経ち、私はお腹が空いて、森を彷徨った。

 美味しそうな果物を見つけ、取ろうと木を登った。

 うまく登れなくて、苛立ちで木を叩いた。


〈ドシンっ〉と大きな音を立てて、木は折れてしまった。


 私も魔物と大して変わらなかった。


 果物を見つけては木を折って、最初はそれで満足していた。

 でも、果物だけだとお腹がいっぱいにならなかった。

 私は困って近くの村に行った。


 「化け物、化け物」と村の人達は私を恐れて、魔法を撃ってきたり、剣を振りかざしてきた。


 怖くて、怖くてそこから逃げ出した。


 私の居場所はどこにもなかった。


 それからは人に会わないよう、洞窟でひっそりと暮らした。


 ある日、森で果物を採っていると少年と出会った。

 怖くて隠れたけど少年は話しかけてきた。


「どうしたの? まいご?」


 怖い、


「だいじょうぶ?」


「わたしのことこわくないの?」


 少年は少し照れながら、


「うーん、かわいい!」


「わたし、こんなくろいはだで、まものとかとおなじだよ」



「うしさんはね、しろくろでごちゃまぜなんだよ! だからね、しろいとかくろいとかかんけいないよ!」



「よくわかんない」


 よく分からなかったけど、それでも私の心は少年に救われた。


「ぼくのおうちくる? おいしいごはんもたくさんあるよ!」


「いく」


 少年に連れられて、久しぶりに村に行った。

 また怖いことされるかもしれない。

 少し不安だった。

 でも少年はずっと手を握っててくれた。

 暖かった。


 村に着くとやっぱり怖かった。


「ジョーカー、その子誰? 速く手を離しなさい。危ないでしょ!」


「いやだ、はなさないもん!」


「ジョー君、悪い事は言わない。その子から離れるんだ」


「なんでそんなに、このこをいじめるの!」


「その子は災いを呼ぶ子なの、悪魔なの、森でね、おじさんたちが木を破壊して回ってるのを見てるの。だから私達とは分かり合えないの」


 私は逃げ出した。

 優しいこの少年まで虐められてしまうと思った。


 洞窟で泣いた。独りで泣いた。

 

 もう私に味方はいないんだ。

 もう誰もいなくていい。

 だって傷つけるだけだから。

 もう一人でいい。


「やっとみつけた」


 洞窟の外から声が聞こえた。


「なんで、」泣きながら顔を上げると、先程の少年がいた。


「きみをたすけにきたんだよ。むらのひとたちはぼくがたくさん、おねがいしたら、ゆるしてくれたよ」


 少年の目は少し赤くなっていた。

 きっと少年も泣いたのだろう。


「なんで、わたしをたすけに、きたの。わたしがいると、きみもいじめられる、わたしといたらだめだよ」


「ぼくのむらには、おんなのこがいない。だから、きみがきたらうれしい」


 下心しかない少年だ。でも許してしまう。

 好きになった男だからだ。


「ずっと、きみをまもるよ。だからいっしょに、むらにかえろう」


「うん、なら、やくそくして」


「なにを?」


「きょうからわたしのおっとになって!」


「わかった。じゃあぼくからもおねがい。きみのなまえをおしえて」


「わたし、わたしはラヴィル。これからよろしくねおっと」



 これが、私の愛するジョーカー・ホルスタインとの出会いだった。



 私は彼に出会って変わった。誰かを頼れるようになった。ただ、その分自分に甘えてしまうことも多くなった。


 だからあの時、私はハルトを守れなかった。


 違う、私はハルトに守られた。


 ハルトと私は洞窟の奥に行った。

 奥には、マーズとアース、そして冥王がいた。


 私はアースとマーズ、ハルトは冥王の相手をした。


 そして、私がアースを洞窟に叩き落として、下に着地した。

 正直、アースを仕留めたと思って油断した。


 だから、気配のないもう一人の魔王に気付けなかった。天王は奥から魔法を放ち熱波が洞窟を襲った。即座にハルトは冥王に剣を突き刺し、そして私を転移させた。


 その後奥から来た魔法は洞窟を飲み込み爆発させた。


 ハルトならまだ生きてる。そう言いながら、洞窟を出た。そして、洞窟を出た先でチアキが泣きながらハルトの死を報告していた。


 現実を受け入れられなかった。私一人でどうにでもできると思っていた。でも、一人だけじゃ勝てなかった。私があの時、油断しなければハルトは死なずに済んだ。


 もう、私だけだ、戦えるのは。敵討ちをしたいという気持ちはある。でも、一人じゃ勝てない。そんな時に、アサヒが現れた。


  戦っている最中に、中身が変わったことにはとても驚いた。筋肉の動きが急に雑になった。ミノタならあり得ない。


 それで、点と点が繋がった。


 最近の牛たちの異常。森の中にあった大きな半球状の穴と瀕死のライオンコング。それをすべて、彼がやったのだと。


 アサヒはきっと、魔王を倒す鍵になる。


 彼がアケボシと名乗ったこと、星の力を持っていること、そして、ランク差を覆すほどの戦闘センス。


 ただ、今の彼は弱い。このままだと何度も死ぬだろう。


 だから、一週間程騎士隊に任せる。彼らならきっと最低限戦えるレベルに育ててくれる。


 私は今、頼ることしかできない。私は一人じゃ戦えない。なのに、アサヒのことをずっと名前を呼ばずに接していた。こんな酷い私にも彼は可愛いと言ってくれた。


 その言葉に少し戸惑った。だけど返す言葉は決まっていた。


「ありがとな、アサヒ」


 私が彼を守る。もう誰も死なせない。

 そう、心に誓った。



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