二章〔3〕小さな幸福
「ちょっとお前は中で待ってろ。アタシがいってくる」
そう言って、ラヴィルは牛車を降りた。
「あれ、ラヴィル姉ちゃんだ。かえる?」
「帰らないよ。ちょっと話し聞くよ。何でスターマップに載ってるんだよ? ラヴィルは星を倒したのかよ? 今日は何の用事だよ。何も聞いてないよ」
「ウィッスウィッス、ラヴィさんこんチャス」
「エレイス静かにしててほしいよ。君が喋ると一番面倒くさいことになるよ」
彼らは武器に手を添え、こちらの様子を伺っている。
優しく話しかけているように見えるが、相手は臨戦態勢だ。
特に大きな盾を持った男。
彼からは凄まじい圧を感じる。
ずっと無言だが、あの中だと彼が一番強い気がする。
「アタシ今日行くって言ってなかったけな。ちょっとフユミに頼みがあって来たんだよ。まぁとにかく通してくれ」
「そんな事言われてもよ、困るよ。どうしますガルド隊長」
盾持ちの男が前に出てくる。
彼は無言でこちらの方に指を差し盾を下ろした。
すると金髪の男がこちらに近づいてきた。
「チット中覗いていっスカ。チッスチッス」
そう言いながら中を覗き込んだ。
そして、目が合ってしまった。
「ゲッ、ミノタウロス? ちょっとやばくないすか。どゆことすかラヴィさん」
「通せ。話は後でアタシがフユミに全部話す!」
「チョッ、流石にモンスターを街に入れるわけには、いけないっすよ! ですよねガルさん!」
鎧を纏った大きな男がこちらに近づいてくる。
そして、盾をおろしこちらをまじまじと眺めてくる。
今喋って何か言ったら余計に混乱させるだろう。
下手したら殺される。
ただ、何も言わずにラヴィルに任せても、頼りにならない。
なんというか、雑い。
そもそも説明なし、許可なしで急に押しかけているのだから、これは完全にこっちが悪い。
「こいつは、アケボシだ。カインとチアキのことを知っていた。洞窟のことも知ってる。アタシはこいつを預けに来た。ガルド、ここを通してくれ」
すると、ガルドは盾を置き、腕をあげ、ゆっくりと下ろした。
緊張が解け、全員が武器をしまった。
あんな適当な説明でなんで納得するんだろうと疑念は湧いたが、とりあえず一安心だ。
「チョ、まじで通すんすか。 やばくないすか?」
「エレイス黙ってほしいよ。きっとガルド隊長にも訳があるよ。おとなしく帰るよ」
「おわた? みんなかえる?」
「アルカード、みんな帰るよ。ラヴィル後でちゃんと説明してもらうよ」
エレイスと呼ばれた男は「チェッ」と言い残し去っていった。それに続くように他の人間達も帰っていった。
「ラヴィル、彼らは騎士隊なのか?」
「そうだな、あれは五番隊の連中だ。スターマップをみて、こっちに星の気配があったから見に来たんだろうな。アタシ昨日の夜に手紙入れに行ったんだけどな」
「昨日の夜って? 俺が寝てた時か?」
「そうだぞ。アタシが走って手紙入れに行ったんだよ」
「そうか。大変だったな」
どういうわけか知らないが、牛車で半日かかる道を一往復して帰ってきていた。人間やめてるだろと思ったが、そもそもラヴィルが何なのかよくわかってない。
「あと、もう少しで着くぞ。牛ども頑張れよ!」
〈〈〈もぉ〜〜!!〉〉〉
「お前まで鳴くな、うるさい。次変なことしたらぶん殴るぞ」
「ごめん」
やっぱ優しくないかもしれない。
でも、ラヴィルといる時間は楽しかった。
しばらくして、街が見えてきた。
全体的に白い石造りの建物が多い。
「あの街にあるのか?」
「あそこはアーサケネス。昔いた、騎士王の名前に由来してるんだ。あそこに騎士庁舎がある」
アーサケネス、そういえば異世界だったな。
なんか、色々ありすぎて異世界にいることを忘れかけていた。
「すげぇ、いろんな種族がいるんだな」
街にいたのはほとんど人間だ。ただよく見ると、エルフやドワーフのような人が多い。中には獣人のような明らかに違う種族もいた。
「そういえば、ラヴィルってなんなんだ? 種族的には鬼とかそこら辺なのか?」
「おに? なんだそれ。アタシは捨て子だから、自分の種族は知らん」
「ごめん、悪いこと聞いたな」
「別にいいんだよ、アタシはこんな見た目だしな。怖いよな」
黒い肌、そして角。見るからに鬼や悪魔のような見た目、ただ、胸がでかい、顔が整っている。そうじて、
「怖いけど、ラヴィルは可愛いよ」
「おまえ、、」
ラヴィルは下を向き少し考えてから
「ありがとな。アサヒ」
初めて彼女に名前を呼ばれた。
やっと仲間として認めてくれたのだろう。
小さいことだが、それがとても嬉しかった。




