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星喰者  作者: K瀬
二章 反撃の炎

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二章〔1〕再会と約束



「まって! そこの牛のくるまのやつ!」


 見るからに幼稚園児くらいの男の子が牛車の前に立ちふさがる。


「アルカードあんまり突っ込むなよ。落ち着けよ。一旦落ち着けよ。ほんとに、落ち着いてくれよ。変なことするなよ。ほんとに落ち着いてくれよ。危ないよ。ほんとに落ち着いてくれよ」


 ムキムキの男が先ほどの子供の肩を抑え、もじもじしながらこちらに来ないよう止めている。

 周りを見ると他にも大きな盾を持った鎧の騎士や、金髪のちゃらそうな男等がいる。


 今、自分たちの牛車は10名ほどの見たことのある白い服を着た人達に囲まれている。


 どうしてこんなことに___


 話は4時間ほど前にさかのぼる。


「えっとなこれがミノタじゃなくてアサヒなんだ! アタシはよく分からないんだけどよ、星の力で中身が変わったらしいんだよ、で! アタシはコイツと星を殺しに行く。だから、夫はこの牧場を守っててほしい。すまねぇけどよ」


「んぉ、これが、アサヒ? アサヒって誰じゃ? 星を討伐しに行くのか? 二人だけか? 違うか…? 一人と一匹か?」


 ラヴィルが早口で状況を説明し、ジョーカーが困惑しながら聞いている。正直急にこんなことを言われても理解できないだろう。


「えっと、ジョーカーさん。アサヒ・アケボシって言います。よろしくお願いします」


「んぉ、よろしく。まぁ、わかった。わしが牧場(ここ)を守る。ただ、絶対に生きるんじゃぞ」


「分かってるよ。夫の方こそなんかあったらすぐ呼べよ。あたしがすぐ行くからよ」


「それで、いつ出発するんじゃ?」


「一週間後だ。とりあえず今日、騎士庁舎にアサヒを預けに行くよ。今のこいつは弱すぎるからな」


 騎士庁舎?


「それってもしかして騎士隊がいるとこ? チアキとかカインとかがいるとこ?」


「会いたいんだろ、チアキに。まぁ、今のチアキはお前が洞窟と会ったときとはだいぶ違うけどな」


 一緒に星を討伐すると決めたとき、一通りのことは話した。


 転生したこと、何度も死んで今ミノタになっていること。


 その全てをラヴィルは信じてくれた。


 ラヴィルは優しい。だからきっとこのお願いも聞いてくれると思う。


「そうなんだ、あのさ、一つお願いがあるんだけどさ、連れていきたい牛がいるんだ」


「あん、、?」


 やっぱり、あいつが隣にいないと落ち着かない。

 それに、約束を守れなかった。

 また彼から大事な友を奪ってしまった。

 謝りたい、許してくれなくても。


「2363番、トヨの助だ。一緒に連れてってほしい」


「オメェ、頭おかしいんか? 乳牛だぞ? 牛車用の1番は連れてく予定だったが、こいつに何ができるんだよ」


「何もできないと思う、でも、友達だから。外の世界を見せてあげたいんだ」


 「はぁ」とラヴィルはため息つきつきつつ。牛舎の方へ歩き出した。


「あん? さっさと来いよ。 連れてくんだろ」


 人は見かけによらない。彼女はほんとによくわからない。


 でも今は素直に、


「ありがとう、ラヴィル」


 感謝を伝えることしかできなかった。


「夫、また後でな。ちょっとこいつ連れて牛舎いってくるよ」


「んぉ、わかった! 夜ご飯の支度しとくのぉ」


 不思議な感覚だ。

 昨日までは敵対していた、何度も殺されてきた人間と今同じ目的のために協力している。


 彼女に連れられて古い建屋に入った。

 久しぶりに入った牛舎の中は糞や牛の匂いでかなりきつい匂いがしている。


 でも何故か落ち着く。


 しばらく進むと両隣が空いた柵が見えた。


とよ(もぉ?)


 目が合った。


ミノタとよ?(ももぉ?)


 黒く光る大きな目は困惑していた。


なんで(もも)ここにいるとよ、?(ももぉ、?)


 その質問になんて答えればいいか分からない。

 自分は、約束を守れずミノタの命まで奪った。


 俺の力は奪うことしかできない。


「2363番ってこいつだよな。今出してやるよ」


 ラヴィルは扉を開いた。

 

「ごめん、トヨの助。俺、約束守れなくて、それに、ミノタまで」


 悲しみ、自分への情けなさ、再び会えたことの嬉しさ、いろんな感情が込み上げてくる。


「アタシしばらく離れとくからよ、二人で話しとけ。終わったらまたさっきのとこ来いよ」


 ラヴィルはそう言いながら出口へ向かった。

 開いた柵の前で泣きそうになりながら、泣くミノタウロス。

 他の牛達からどう見られているのだろう。


 情けない。


とよ、?(もぉ、?)


「俺、ラヴィルに見つかって、何もできなくて、そのまま殺されて、それで、ミノタまで、殺して」


 泣いて、泣いて、それでもまだ伝えたいことがあって。

 

何言ってるか(ももももぉ)分からないとよ!!(もももももぉ!!)


 一瞬目の前の状況を理解できなかった。

 普段大人しいトヨの助が急に叫んだ。

 そして、彼の声に鼓動し、周りの牛たちもざわつき始めた。 


牛語で話してとよ!(もももぉ!) 人の言葉わからない(もももも)とよ!(もも!)


 息を荒く吐き、ぶち切れてるトヨの助は初めて見た。


ごめん(もぉ)


それでいいとよ。(もぉもぉ。)それで、どういう(もぉも、もももも)話とよ?(ももも?)


俺、アサヒなんだ。(もも、ももぉ。)約束守れなくて、(もももも、)ミノタの魂まで奪っ(ももももも)って、ごめん(ぉ、もも)


 トヨの助は静かに話を聞いて、


とりあえず、(ももぉも、)また会えて(もも)よかったとよ(もももぉ)


俺、何もできなくて(もぉ、もももも)勝てなくて、(もももぉ、)怖くて、怖くて、(もももぉ、もももぉ、)ごめん、約束守れな(もも、もももぉ)くてごめん(もぉも)


分かったとよ。(もぉももぉ。)もう泣くなとよ。(ももぉももぉ。)アサヒは頑張ったとよ(もももぉももももぉ。)それより、なんで(もも、もぉも)ここにいるとよ?(もぉもももぉ?)


ラヴィルに、星の(もも、もも)力がバレて、(もぉもぉ、)魔王討伐の力に(ももももぉ、もも)なってほしいって、(もももぉもぉ、)それで、トヨの助にも(もももぉ、もももぉ)来てほしいから(もぉもぉもも)ここに来た(もぉもぉ)


 いつも俺は自分勝手だ。だから周りを傷つける。

 一人では何もできないのに、自分だけで何かできる気がして、自分勝手に行動する。

 俺はゴミだ。今思えばずっと周りに支えられてきた。


 俺はトラックに轢かれて、そのまま死ぬべきだった。


分かったとよ。(もぉもぉも)いくとよよ。(もももぉ。)だから泣かないでとよ(もももぉもももぉ)


 この牛はこんな俺にもとことん優しい。


ありがどぅ、(もももぉも、)ほんとに、ありがとう(ももも、もぉも)


いくとよよ、(もぉもぉ、)もぅ、死んだらだめ(もぉ、もぉもも)とよよ(ももも)


約束するよ(もぉもも)


 この約束を守り切れるかは分からない。

 でも、やるしかない。

 

行こう(もぉも)


とよ!(もぉ!)


 そして、2匹の牛は牛舎を出た。



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