一章〔30〕今はまだ知らない。
「てめぇ。アケボシって、いったか?」
ラヴィルは名前を叫んでから動揺をしている。
「お前はアサヒ・アケボシではなくアケボシ・アサヒなのか?」
「どういうこと、、、?」
「あ? 普通家名名乗って名前だろうが! お前の家名はアケボシなのか? アサヒなのか?」
そういえばみんな、アケボシって呼んでいた。トヨの助はアサヒって呼んでいたが、人間はみんなアケボシって呼んでいた。
初対面だから名字で呼ばれていたと思っていた。
「えと、アケボシが家名です。なんか、すいません」
その時ラヴィルは少し笑った。
「なら、戦う意味はないな。アタシはお前を殺さない」
意味がわからない。俺が明星であることがどうして戦わないことに繋がるのだろう。
「なで、なんで! それなら、俺が転生する必要はなかった。ミノタが死ぬこともなかったのに。なんで、家名が明星だから殺さないってなるんだよ!」
自分の感情が今わからない。怒りなのか悲しみなのか。
ミノタを最後に殺したのは俺だ。その怒りを向けるべきではないのは分かってる。
でも、俺はこの感情をどこに向けたらいいかが分からなかった。無力だから叫ぶことしかできない。無力だから誰かを死なせる。
「お前がアケボシで、よく分からねえ力を使うからだよ。それに途中から中身変わっただろ? 呼吸の音、筋肉の収縮の動きが全く違うんだよ」
「俺が明星だからっていう理由はよくわからない。だけど、ラヴィルの言う通り中身は変わったよ」
「やっぱりな、アタシはミノタウロスは嫌いだけどよ、ミノタは頭が良かったからな、割と自由にさせてたんだよ」
意外と話が通じる相手なのかもしれない。ずっと、ただ殺してくるだけの野蛮人だと思っていた。
「だからよ、そもそもそんな殺すつもりはなかったんだよ」
そして、ラヴィルは一呼吸おいて、こう言った。
「ミノタはお前の中にいるんだろ? だったら助ける手段はあるかもしれないだろ。アタシは家畜としてしか見てないがよ、お前はあいつの友達だろ?」
先ほどまで違って優しい。殺気のようなものももう消えた。
「アタシはお前の星の力が欲しい。だからそれを渡せ。そしたらお前の望みを叶えてやる」
「星の力を、渡す?」
「無理ならそれでいい、ならアタシが無理やりお前を連れてくだけだ」
「分からない、それってどうやるの?」
「なら、アタシがお前を連れてく」
「どこに?」
「決まってんだろ、魔王討伐だよ。アタシだけじゃ確実に勝てない。だから手伝え。お前は星の力あるんだし多少戦力になる」
手伝う? 俺にそんな事が出来るのだろうか。
「おらよ」とラヴィルは俺に牛乳のような物を渡してきた。
「これを飲めばいいのか?」
「さっさと飲め!死ぬぞてめぇが」
元勇者パーティーの戦士 ラヴィル・ホルスタイン
そして、星喰者
二人の出会いが世界を動かす。
彼らはそのことを今はまだ知らない。




