一章〔2〕爆発音
異世界転生。漫画やアニメだけの話だと思っていた。実際に自分に起こるとは思っていなかった。
「あのさ! アケボシくんはどうしてあんな怪我してたの? なんか魔物とかに襲われたの?」
「ごめん。分からない。気づいたらあの場所にいたんだ」
「そうなんだ! てか、そんなに硬くならなくていいよ。同い年なんだからもっと軽く話してよ!」
慣れない。というより、めちゃくちゃ緊張してしまう。俺は元いた世界ではあまり女の子と関わる機会がなかった。俗に言う陰キャだったからだ。
いつも教室の隅で仲のいい、男と話していた。
あれ、
その男の名前が思い出せない。
でも、仲のいい友人がいた。めちゃくちゃ仲が良かった。
毎日話してよく遊んでいた。なのに、名前が思い出せない。
異世界に来た衝撃かなんかで記憶の一部がなくなったのだろうか。
「あのさ! その服、騎士隊とはちょっと違うけど勇者系の服だよね? なんか覚えてることないの?」
「ごめん、なんも記憶がなくて。名前と年齢くらいしか覚えてないんだ」
「なら、仕方ないね。あんな怪我だったもんね。また、なんか思い出したらまたおしえてね!」
もし、今この子に異世界転生の事を話したらどのような反応をするのだろう。そもそも、この事を話しても大丈夫なのだろうか?
なんとなく、下手にこういう事を教えるのは良くない気がする。
まぁ、とりあえず今は転生していることは隠そう。
「うあっ!?」
急にほっぺに柔らかい感触を感じた。それはチアキの指だった。
「なんかすぐボーっとしてる。大丈夫?」
「びっくりするだろ! 急に触るな!」
「あ、笑った! もっと仲良くしようよ! 私達同い年なんだから!」
「分かった、」
「声が小さい。聞こえませーん!」
「あー、分かったよ!! もっと明るく話すよ!!」
そうやって二人で楽しく話していた時だった。
〈ドカンッ〉
「なんだ!?」
突然大きな爆発音のようなものが聞こえ奥から熱風が吹いてきた。洞窟が振動で揺れ隣ををみると尻餅をチアキが尻餅をついていた。
「チアキ!」
「私はだいじょぶ! アケボシくんもだいじょうぶ?」
「俺も大丈夫、今のは何だったんだ?」
「奥で戦ってるお兄ちゃん達になんかあったんだとだと思う。」
「今、この洞窟で何が起こってるんだ?」
「うんとね、騎士隊が星を討伐しに来てるの」
星という言葉に疑問符を浮かべていると、奥から小走りで男がやってきた。
「チアキ無事け? て、こぬ男誰や!」
こちらに声をかけてきたのは変な訛りの男。髪色は赤みがかった黒で、右目が黄色、左目は青色をしている。動物で言うところのオッドアイなのだろうか。
そして、チアキと同じ白い服を着ている。
「私は無事です! この人は、えっと、アケボシくん!」
「傭兵団ぬ人か? まぁいい、さっすと逃げるぞ! この洞窟が崩れるかもしらぬ!」
「ごめんなさい! 私、ちょっと奥行ってきます! お兄ちゃんが心配だから!」
「ぬぇ? 」と訛りの強い男が動揺しつつもチアキは続けて言葉を発する。
「カインさんはアケボシくんを連れて洞窟の外に逃げて。私は転移魔法あるし、なんかあったらすぐ逃げるから大丈夫!」
「せやけどぬ、騎士長にチアキを死んでも守れって言われとるけぬ、どっしゃしようけぬな」
「止めても無駄です! 私行ってきます! アケボシ君お大事にね! じゃあ、ばいばい!」
【加速】
「ちょ、待つけぬ! チアキ!」
何か言葉を発した瞬間、チアキは人間とは思えない速度で奥へと走り出した。
「え、今の何? あれ魔法ですか? えっと、あのチアキの知り合いの、あの、はじめまして。明星 朝日っていいます。えっと名前は何ですか?」
「わっしゃか? わっしゃはカイン・ブレードって言うねや! アケボシって言うんやな、とりゃーずいれいれ聞きたいことはあるけぬが、チアキを追いかけぬとな!」
「そうですね! なら早く行きましょう!」
「あ、せぬや! その堅苦しい話し方はやめるっしゃよ。 もし、敵が出てくた時にそぬな喋れ方、死ぬっしゃ! もっと軽く行くぬよ」
「わかった! よろしくカイン!」
「それでいい! うぬ! よろしくなアケボシ!」
案外、良い奴だ。最初は胡散臭いやつだと思っていたが今は優しい先輩といった感じだ。おそらくこの人はチアキの仲間なのだろう。
それに、チアキがさん付けで呼んでいたから上司的な立ち位置だろう。よく見ると胸に金色のバッジのようなものがついている。
「兄さん! どう致しますか?」
音も何もなく気付いた時には後ろに人がいた。そして、今首元に剣が突き立てられている。
「ケインか! こいつはアケボシっていうんや! とりあえずその剣は降ろせ! こいつは怪しい人間ではないぞ!」
「了解いたしました。お兄様。それでは剣を降ろさせていただきます。それで、チアキ殿はどこにいらっしゃいますか?」
「チアキさぬは奥に走っていったっしゃ! 今追いかけようとしてるさぬよ!」
「えっと、俺置いてけぼりなんですけど、こちらの方は?」
「ケインのことっしゃか? こいつは俺の双子の弟っしゃ!」
「私はケイン・ブレード、騎士隊第4部隊副隊長だ。」
そういえば、ブレードってチアキもブレードだった気がする。でも、顔とかは全く似ていない。なんか家名的なものなのだろうか?
「アケボシといったな貴様はどうする? 私は兄さんを連れ洞窟を出る。チアキは奥にいるのだろう? 貴様はどうする?」
めちゃくちゃ上から目線だ。性格は双子の兄弟とは思えない。
見た目は髪色は青みがかった黒で、右目が青色、左目は黄色をしている。まぁ、カインを反転したような見た目だ。正直パット見だと分からない。
「私は兄様が無事であることを優先する。だからあの娘は見捨てる。貴様はどうする?」
質問が質問になっていない。どうすると言われても、もう答えは一つしかない。
「なら、俺がチアキのとこに行きます! 俺が彼女を守ります!」
「それでいい」
自分に何ができるかは分からない。でも、彼女を守りたい。
俺はチアキを守るための騎士になることを決めた。




